2009年6月下旬
飼育中のイオウイロハシリグモ♀(Dolomedes sulfueus)が卵嚢を作ってから5日後。
無精卵なのに卵嚢を肌身離さず抱えて歩き、絶食状態で保護しています。
母性本能の実体を調べるために、『ファーブル昆虫記』で読んだ実験を真似て卵嚢を取り上げてみることにしました。
しかし卵嚢に触ろうとするだけで当然逃げ回ります。
無理やり奪うと怒った母クモに噛まれるかもしれません。
安全のためクモを一時捕獲し炭酸ガスで全身麻酔しました。
仰向けにされても卵嚢は手離しません。
ピンセットで卵嚢を取り上げると簡単に外れました。
偽物の卵嚢を用意しました(脱脂綿玉4個、トイレットペーパーの紙玉2個)。
♀を容器に戻し、麻酔から醒めるのを待ちます。
周囲に偽卵嚢を等間隔に並べ、本物の卵嚢も紛れ込ませておきます。
覚醒した♀は卵嚢が無いことにすぐ気づいた様子。
容器内を一回りすると、自分の卵嚢を迷うことなく選び、抱え込みました。
偽卵嚢の全てには触れておらず、視覚のみで選択できたようです。
臭いがあるのかもしれない。
実物の卵嚢は表面が汚れ、意外に固く締まっていました。
偽卵嚢として固い素材(コルク片やスポンジなど)も試すべきだったかもしれません。
ファーブルの記述したナルボンヌコモリグモの実験結果(とにかく手近にある丸い物体を取り返せば満足する)とは全く異なり、興味深いです。
(飼育記録の続きはこちら。)
《参考》
集英社文庫 『ファーブル昆虫記 第4巻:攻撃するカマキリ』 p51~
『ハチの家族と社会―カースト社会の母と娘』 中公新書 p7より
日本では、ファーブルを愛する人は彼以後の発展に留意せず、昆虫の研究者はめったにファーブルに言及しない。残念なことである。
【追記】
『観察の本4:クモの親と子』p62〜65によれば
ウズキコモリグモの母グモから卵嚢を取り上げてから代用物を差し出すと(大豆、木片、消しゴム、チョーク、紙玉など)、クモは形や重さなどほとんどお構いなしに、お尻につけるらしい。(代用実験)
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