2011/02/11

蜂蜜でキアシナガバチを釣る



2009年8月中旬

コロニーのキアシナガバチPolistes rothneyi)成虫を全て個体識別するのが理想ですが、マーキングしたくても蜂が増えるにつれて巣の上から直接捕獲するのは危険になってきました(エピソード14参照)。
巣の近くで網を振り回して蜂を捕まえるのは効率が悪そうです。
そもそも羽化直後の成虫はしばらく巣を離れません。
在巣の蜂を一匹ずつ安全に(巣に振動を与えず)生け捕りにするために、蜂蜜で釣る方法を思いつきました。
蜂蜜よりも安かったハニーメープルを購入。
原材料の記載は「メープルシロップ、蜂蜜、水飴、香料など」。


棒の先に蜜を塗り、在巣の蜂の口元にそっと差し出してみました。
蜂はなかなか気づいてくれませんが、舐め始めると夢中になり枝によじ登って来ました。
そっと釣り上げた蜂を筒状の容器に捕獲成功。
あとは従来通り、スプレー缶の炭酸ガスで麻酔して油性ペンで胸部と腹部の背中に二箇所マーキングを施します。
標識済みの個体が味をしめたのか懲りずに蜜棒に寄って来ます。
作業の邪魔になるものの、捕獲・麻酔処理による負の学習効果が無い(トラウマになっていない)と分かり一安心。
この日はワーカー5匹(W緑、W金、W青、W紫、W茶)を捕獲・標識できました。
巣に戻してやる前に麻酔が醒めて飛び去ってしまった蜂も自力で帰巣しました。


こうしてある程度は目論見通りだったものの、なぜか糖蜜に全く反応してくれない個体が残ります。
その後も繰り返し試してみたところ、♂は決してこの糖蜜に誘引されないことが判明。
♀で誘引されるのは外役経験のあるワーカーだけと思われます。
釣れない♀は羽化直後で食欲が無いのか未だ花蜜の味を知らないのか、それともワーカーと比べて攻撃性の低い臆病な新女王なのか(差し出した枝から逃げ回る)不明です。
羽化してくる全成虫を片端から標識しないことにはワーカー/新女王の区別も出来ないので、「卵が先か鶏が先か」の問題と同じで悩ましいところ。
餌となる糖蜜の種類を変えてみるなど今後の課題です。
今回のメープルシロップは独特の香りが気に入らなかったのかもしれません。
スズメバチ幼虫が成虫のために吐き戻す栄養液と成分の似たスポーツドリンクVAAM(= Vespa Amino Acid Mixture)も試してみる? 
肉片を使ってみる?

つづく→シリーズ#20


【追記】
『雄太昆虫記 ぼくのアシナガバチ研究所日記』p25でコアシナガバチの好き嫌いを調べていました。
意外な結果になり、好みの順に「醤油>ストロベリーシロップ>メロンシロップ>>オリーブオイル、蜂蜜」とのこと。
セグロアシナガバチではまた違う結果になったらしい。p54
私も醤油で試してみたくなりました。


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