2022/05/25

口が届かない枝先を食べるため灌木を前足で折り曲げる雪国のニホンカモシカ♂

前回の記事:▶ 雪山で灌木の枝先を食べ歩くニホンカモシカ♂

2022年1月上旬・午後13:35頃・晴れ 

ニホンカモシカ♂(Capricornis crispus)が雪山で食樹を食べ歩きしています。 
深雪の斜面を登るときなどは、少しでも楽をするために(体力温存)古いラッセル跡を辿ることがあるようです。 
斜面の途中に生えた落葉灌木(樹種不明)の群落に辿り着くと、カモシカ♂は細い幹に左前足を掛け体重を載せて折り曲げました。 
そのまま両前足で踏みつけると、柔らかい枝先を口元に引き寄せて食べ始めました。 
雪山の斜面に対してカモシカの頭が下向きになりました。 
後半になると、首を伸ばして口が届く範囲の枝先を次々に食べています。 
この灌木は細くてしなやかで、カモシカが折り曲げても押し倒してもバキッと破壊的(非可逆的)に折れることはありません。
倒伏した灌木はカモシカが立ち去ると弾性で元に戻りました。

ヤギは身軽で少し木登りができるそうですが、カモシカは木に登れません。 (※ 追記参照)
その代わりに、細い灌木を折り曲げる採食法を編み出しました。 
彼らは時に前肢を枝にかけて手前に引き寄せたり、幹に両前肢をかけて立ち上がって高い所のものも食べる。(中略)ことにえさの乏しくなった冬の間に行うことが多いようである。(中公新書の千葉彬司『カモシカ物語』p73より引用)
私がこの採食法を実際に観察したのはこれで2回目です。 





※【追記】
当時は知らなかったのですが、同属のタイワンカモシカCapricornis swinhoei)は偶蹄類にしては珍しく、木登りして葉を採食することがあるそうです。
ただしヤギほど木登りが得意ではないらしい。
一方、ニホンカモシカが木登りをしない(できない)ことは専門家の定説でもあります。


【追記2】
大町山岳博物館『カモシカ:氷河期を生きた動物』によると、
冬の食料が欠乏する時期や、かなり嗜好の高い種類などの場合は、前肢を木の幹にかけ、後肢で立ち上がるようにして採食したり、あるいは前肢で枝を引き寄せたり、折り曲げるような採食方法もとるが、常時このような採食行動が見られるわけではない。(p23〜24より引用)


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