2023年6月上旬 ・6/6・午後22:18〜22:41
ニホンアナグマ♀(Meles anakuma) の育児放棄という衝撃映像が撮れました。
トレイルカメラの電池が消耗しているために、細切れの映像になっています。
母親♀が幼獣の首根っこ(というか今回は頭皮?)を咥えて、手前の巣穴Lから外へ引きずり出しました。
いつものように巣口LRの中間地点に幼獣を下ろすと、その毛皮を念入りに舐め始めました(対他毛繕い)。
小声でウキャキャキャキャ…♪という鳴き声が聞こえるのは、幼獣が発しているようです。
ただし、画面に写っている幼獣の鳴き声とは限らず、巣内で待っている残りの幼獣3頭が鳴いている可能性もあります。
※ 幼獣の鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。
次にトレイルカメラが起動したときには、なぜか母親♀の姿はなく、巣口Lから奥に伸びるアクセストレンチ上に幼獣が放置されていました。
母親♀は一体どこに行ったのでしょうか?
野生動物の母親♀が育児放棄するとは驚きました。
巣外に放置された幼獣は未だ自力で歩けません。
辺りをキョロキョロ見ているだけで、おとなしくじっとしています。
このときの外気温は不明ですが、添い寝して温めてやらないと低体温症になるのではないか?と心配になります。
夜の森でもしも肉食性のホンドテンやホンドギツネ、フクロウ※などに見つかったら、アナグマの捨て子は獲物として捕食されてしまうはずです。
※ 近くのスギ防風林で昼間にフクロウの鳴き声を聞いています。@2024年3月上旬
育児放棄からの死亡も一種の子殺しと考えられますが、そんなことになったら、きわめて異例です。
アナグマ家族の食糧事情が急に悪化して母親の乳の出が悪くなり、口減らしのための子殺しが必要になったのか?などと良からぬことを考えてしまいます。
母親と一緒のときは甘えて鳴いていたのに、巣外に放置された幼獣は母親を呼ぶ声を全く発しなくなったのが意外です。
下手に鳴いたら天敵の捕食者を呼び寄せてしまいますから、母親とはぐれて独りになっても鳴かないように本能でプログラムされているのかもしれません。
(ところが、わずか4日後に反例が出てきてしまいました。)
その後も幼獣が腹這いのまま身動きする度にトレイルカメラのセンサーが反応して、短時間だけ録画してくれます。
しばらくすると、幼獣は自力で這って向きを変えました(カメラに対して正面から横向きに)。(@1:05〜)
覚束ない足取りで必死に匍匐前進しているようです。
巣穴Lの方から嗅ぎ慣れた匂いがするはずなのに、幼獣は巣口Lには向かって行きませんでした。
ヘルパー♂が予め掘ったアクセストレンチと呼ばれる溝に沿って緩斜面を下れば入巣Lできるはずなのに、迷子の幼獣はアクセストレンチから横に逸れてしまいました。
ようやく母親♀が巣穴Lの外に出て来たので安心しました。(@1:21〜)
巣口Lで幼獣を見つけると、体を舐めてやります。
幼獣は嬉しそうに鳴きました。
♀の乳首にすぐ吸い付かなかったので、空腹ではなかったようです。
未だ歩けない幼獣を20分間も巣外に独り放置していた理由は何でしょう?
幼獣4頭の子育てでてんてこ舞いの母親♀が何かのきっかけで巣穴に戻ったきり、巣外に出した幼獣1頭の存在をうっかり忘れてしまったのでしょうか? (過失)
育児経験の浅い若い♀なのかもしれませんが、根拠はありません。
それとも、巣内で何か酷い悪さをしたやんちゃな幼獣に対して躾 やお仕置きのために(罰として)巣外にしばらく放置したのでしょうか?
それなら、初めに幼獣に対して対他毛繕いしてやらない気がします。
幼獣の自立心を養うためなのかな?
我々ヒトが乳幼児に対してこんな子育てをすると、昔ならともかく今時はネグレクトの罪で通報され親が罰せられます。
しかし、アナグマの子育てにヒトの価値観で口出ししても仕方がありません。
こういうときにヘルパー♂がどこで何をしているのか、気になります。
迷子になっていた幼獣を巣穴にすぐ連れ戻すかと思いきや、母親♀はその場で自分の体を掻いています。
母子が身を寄せ合っています。
母親♀の腹面に乳首が見えました。
元気を取り戻した幼獣は、巣穴Lの方へ歩こうとしています。
♀が立ち上がって身震いしたものの、すぐにまた幼獣の傍らに座りました。
残念ながら記録された映像はここまでです。
母親が幼獣を巣穴Lに連れ戻すまで見届けられませんでした。
深夜(午後23:38)にカメラが起動したときには巣外にアナグマ母子の姿はなく、小雨が降っていました。(その映像は割愛)
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