前回の記事:▶ 繁殖池の岸辺の枯草に潜り込むヤマアカガエルの抱接ペア♀♂
残雪に覆われた里山の緩斜面に2つ並んでいるヤマアカガエル(Rana ornativentris)の繁殖池のうち、低いところにある小さくて浅い池L(lower)についての記録です。
深い池Hと異なり、夏になると抽水植物が生えるのがこの池Lの特徴です。
池Hと比べて池Lに集まるヤマアカガエルの数は少ないようですけど、3日前に見たときは無かった卵塊が岸辺に少し産みつけられていました。
私が現場入りする直前まで♂が鳴いていたのに、残雪の上を歩き回る私の足音に警戒して鳴き止み、水中に潜って隠れてしまいました。
長時間待っても警戒を解いてくれません。
私が池畔に近づいただけで驚いたヤマアカガエルが岸辺から水底に慌てて潜ってしまいます。
この池Lは水深が浅いので、水中に潜んでいるカエルが比較的鮮明に写っています。
水中に潜んでいるカエルの体表を赤外線温度計で測ってみると、水温は3.1℃でした。
小型の個体は♂だと思うのですが、中型・大型の個体の性別が私には外見で見分けられません。
水中に♀が単独で居たら周りの独身♂が放っておくはずがありませんから、登場個体はおそらくすべて♂だろうと予想しています。(間違っていたらご指摘願います。)
池の底で泥の上にじっとしていると、見事な保護色になっていて見つけるのは困難です。
目をつぶっているので冬眠状態なのかと思いきや、前足で頭を掻きました。
池の底を移動し始め、泥(堆積物)の底に潜り込んで身を潜めました。
どうやら私に見られていることを気づいているようです。
水中で2匹目を見つけて撮り始めたら泳いで移動し、岸辺へ上がってきました。
ここで縄張りを張り、♀が来るのを待ち構えるようです。
水中で枯れた抽水植物の上で休んでいる個体もいました。
池Lの底に隠れているヤマアカガエル♂のうち1匹が少しでも動くと、連鎖反応のように互いに居場所が入れ替わります。
♀と抱接ペアを形成する♂は早い者勝ちですから、独身♂は近くで動く物に対して何でも反射的に跳びつかないといけないのです(誤認抱接)。
しかし今回は蛙合戦と呼ぶほど激しい展開にはならず、相手に軽く触れただけですぐに別れたので全て♂なのでしょう。
岸辺と異なり、池の底では♂同士の縄張り争いは起こりません。
早春の池でヤマアカガエルの繁殖行動を初めて観察してみたのですが、残念ながら産卵行動まで見届けることはできませんでした。
あえて予習せずに観察を始めたのですけど、とにかく警戒心が強くて難しかったです。
わずか2回(3日おきの2日間)の観察では分かったことよりも疑問や課題の方が多いので、来季の調査が今から楽しみです。
抱接ペア形成の瞬間も見れていません。
池の底で冬眠することも確認する必要があるます。
雪国のヤマアカガエルの繁殖行動は暖地の個体群と少し異なるのではないか?と個人的には疑っています。
当地のヤマアカガエルは定説に反して、独身♂が繁殖池の岸辺に並んで縄張り争いをしているように見えたのです。
↑ 【おまけの動画】
この池Lを見ていて不思議だったのは、池の水が一部白濁していることです。
今回メインで紹介した動画でもラストシーンに写っています。
てっきりヤマアカガエル♂が放精したのかと私は早とちりしたのですが、その辺りを探しても抱接ペアや卵塊は見当たりませんでした。
池の底でカエルが慌てて動き回る際に水底の泥を巻き上げた訳でもありません。
首をひねりつつ観察を続けると、池Lの岸からときどき白い泥が流れ込んで水中に拡散していると判明しました。
白濁した泥水が雲のようにモクモクと水中に流れ込んでいます。
斜面の上にある池Hから溢れた雪解け水が常にチョロチョロと下の池Lに流入するのに、白い泥水の流入はなぜか間欠的です。
2つの池H、Lの間の土壌がときどき崩れているようです。
ヤマアカガエルの繁殖活動とは直接の関係は無いものの、いずれ池Lの養分となるのでしょう。
池Lが池Hよりも水深が浅いのは、このように土壌が少しずつ流入してきた結果と分かりました。
抽水植物が毎年冬に枯れて腐った遺骸も池Lの底に溜まっていきます。
生態学の教科書に書いてある湿性遷移がまさに進行中の現場なのだと納得しました。
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