2023年5月上旬
ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)の営巣地を新旧2台のトレイルカメラで見張っています。
謎の砂浴び行動についてまとめました。
シーン1:5/5・午後21:19・気温18℃(@0:00〜)
広場をうろついていたアナグマがゆっくりと入巣Rしかけたものの、気が変わって広場に寝そべりました。
前脚で地面を掻いて土を自分の体に掛けるという謎の行動を始めました。
素人目には♂の外性器が見えましたし、左右の瞳が同じ大きさなので、♀ではなくヘルパー♂だと思います。
仰向け状態で毛繕いし、股間を舐めました。
また寝転がって砂浴びを再開。
最後に録画が切れる寸前に、右前の巣穴Rから♀が顔を出しました。
シーン2:5/5・午後21:18(@1:39〜)
ほぼ同時に別アングルで撮れた映像を見てみましょう。
林縁の広場に腹這いになって、謎の砂浴び行動を始めました。
今回ヘルパー♂が前脚の爪で地面を掘っているのは、採餌のためでも巣穴拡張のためでもないことが、はっきり見て取れます。
寝返りを打って右手と左手を交互に使って掘った土を自身の体に掛けています。
仰向け毛繕いと砂浴びを交互に繰り返しています。
開脚した股間に睾丸が見えたので、性別は♂(若い息子のヘルパー♂)で間違いなさそうです。
やがて、右手前の巣穴Rから♀(右目<左目)が外に出てきました。 (@3:01〜)
広場で息子のヘルパー♂合流するとすぐに相互毛繕いを始めました。
シーン3:5/5・午後21:27(@3:09〜)
別アングルのカメラに切り替わりました。
広場で親子2頭が少しじゃれ合い、相互毛繕いを始めました。
ヘルパーに関する予備知識がない状態でこの様子を見ると、アナグマは一夫一妻制なのかと誤解してしまうはずです。
余所者の♂が求愛に来たとき、♀は自身の短い発情期以外では♂を激しく撃退するのに、若い息子のヘルパー♂に対しては寛容です。
母親と若い息子の仲が良いのは結構ですが、近親交配をどうやって防いでいるのか、気になります。
発情する前の若い♂をヘルパーとして同居させているのでしょう。
面白いのはここからです。(@3:20〜)
手前のヘルパー♂が横臥し、奥には♀が並んでいます。
♀が自分の体を掻いたり毛繕いしている間に、隣のヘルパー♂がまた砂浴びを始めました。
とばっちりで砂を掛けられた母親♀が怒って唸り声を上げ、少し右に離れました。
♀の右目が失明しかけているのは、もしかすると土や砂が目に入ったせいかもしれない、と思いつきました。 (感染症の眼病?)
しばらくすると♀がヘルパー♂に歩み寄って、仲直りの相互毛繕い。
シーン4:5/5・午後21:26(@4:09〜)
別アングルのトレイルカメラでも同じシーンが撮れていました。
相互毛繕いに飽きたヘルパー♂が林縁に寝そべって、地面を左前脚で掻き始めました。
土を自分の腹にかけているようです。
ただの暇つぶしなのか、それとも猫がやるように爪が伸び過ぎないよう研いでいるのかな?
若い息子に土を掛けられた背後の♀が怒って抗議し、少し移動しました。
ヘルパー♂は構わずに砂浴びを続けます。
やがて親子は相互毛繕いを始めました。
シーン5:5/5・午後21:28(@5:02〜)
同じことの繰り返しなので、5倍速の早回し映像でお届けします。
シーン6:5/5・午後21:33(@5:31〜)
親子水入らずのひとときを夜の広場で過ごした後、♀が先に右手前の巣穴Rに入りました。
巣内で赤ちゃんに授乳したり面倒を見たりする必要があるのです。
広場に残ったヘルパー♂は、独りで仰向け毛繕いを続けています。
巣口Rを覗き込んでも中には入らず、広場に戻って寝そべると、砂浴びを再開。
必ず横に寝そべって(横臥)片手で地面の土を掻きます。
採餌や造巣の際に見られる本気の穴掘り行動とは異なり、本格的に両手で地面を掻くことはありません。
シーン7:5/5・午後21:34(@6:30〜)
ヘルパー♂が独りで退屈しのぎ(?)の砂浴びを続けています。
浅く掘った地面に腹這いになりました。
掘ったばかりの土がひんやりして気持ち良いのかもしれません。
シーン8:5/5・午後21:37(@7:32〜)
ヘルパー♂が横臥のまま動きを止めたので、うたた寝しているのかもしれません。
寝返りを打って腹這いになりました。
砂浴びを再開しても、すぐに手を止めて横臥で目を閉じました。
ニホンアナグマの砂浴びも、毛皮に付いた体外寄生虫(ノミやダニなど)を駆除するための行動なのでしょうか?
私は未見ですが、イノシシは体外寄生虫対策として泥濘の中で転げ回り、泥浴びをすることが知られています。(ヌタ打ち行動)
それに対して、アナグマのヘルパー♂が浴びていた土砂はさらさらに乾いていて、決して泥ではありません。
そもそも私はアナグマの水浴行動を未だ一度も見たことがないのですが、水浴びしないのかな?
アナグマ営巣地(セット)の近くには、小川や池、水田があります。
いかにも野生動物が水を飲んだり浴びたりしそうなのですけど、足跡などを頼りにもっとポイントを絞り込まないと監視カメラを設置できません。
ネット検索しても、砂浴びをするアナグマの事例はヒットしませんでした。
まさか新発見?!
私が(良かれと思って)巣材の藁をアナグマに与えたせいで、藁に付着していた吸血性の寄生虫(ノミやダニなど)が巣内に蔓延したのかも?と自責の念に駆られます。
関連記事(同時期)▶ 与えた藁を掻き集めて巣穴に運び込み寝床とするニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】
しかし同じ穴の狢 のうち、砂浴びするのはなぜかヘルパー♂だけで、♀は一度もやりませんでした。
私が与えた巣材を搬入したのは♀なので、藁に吸血性の寄生虫が付着していたとしたら、真っ先に体外寄生するのは♀のはずです。
ひんやりした土に腹這いで寝そべると気持ち良いのかもしれません。
思わせぶりな砂浴び行動は、単なる「暇つぶしの遊び」という可能性もあり得ます。
しかし行動の進化を考えると、その区別はあまり意味がないかもしれません。
鳥や動物は体外寄生虫への対策を理知的に考えて砂浴びや泥浴びの行動をするわけではありません。
たまたま砂浴びや泥浴びを始めた個体が居て、結果的に体外寄生虫が駆除された場合には適応度が少しだけ高まり、世代を経るにつれてその行動が集団内に広がっていったのでしょう。
この後、長期間の定点観察を続けても、アナグマの砂浴び行動がほとんど記録されていないのは不思議です。(再現性に乏しい)
※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。
つづく→
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