2022年9月上旬・午後14:40頃・晴れ
里山で冬になると雪崩が多発する急斜面があります。
毎年の撹乱が激しくて樹木が育つにはあまりにも過酷な環境なので、夏には雑草に覆われます。
その山腹でミドリヒョウモン♀♂(Argynnis paphia)が木苺(種名不詳)の葉に乗って交尾していました。
ヒョウモンチョウ類の中で私がフィールドで一番良く見かけるのがミドリヒョウモンです。
性別を見分けるのが簡単なので、配偶行動の観察に適しています。
♀の翅表は緑っぽく、♂の翅表はオレンジ色っぽくて、黒くて濃い性斑(性標)があります。
互いに逆向きになって腹端の交尾器を連結したまま、翅を緩やかに開閉していました。
結合部がひくひくと動いているのが興味深いです。
♂が精包を♀の体内に送り込もうとしているのでしょう。
どうも交尾の舞台が居心地悪そうです。
交尾しながら落ち着きなく歩き回り、水平に止まれる葉に移動しました。
向きを変えてくれたおかげで翅裏の紋様がしっかり見えるようになり、ミドリヒョウモンと同定できました。
連結部の微妙な動きも側面からしっかり観察できるようになりました。
しばらくすると、なぜか再び♀♂ペアが落ち着きなく動き回り始めました。
♀は交尾を早く切り上げたいのか、♂を足蹴にしました。
交尾中のチョウが飛ぶ際に♀♂どちらが主導権を握って羽ばたくか、種によって傾向が異なることが知られています。
互いに逆向きに連結しているため、♀♂が同時に羽ばたくと相殺されて上手く飛べないのです。(交尾器がちぎれてしまう?)
240-fpsのハイスピード動画に切り替え(@3:05〜)、帽子を投げつけて交尾中のミドリヒョウモン♀♂を飛び立たせてみました。
緊急発進をスーパースローで見ると、今回は♂が主導権を握り、♀を引きずって飛び去りました。
♀は翅を閉じて空気抵抗を減らし、♂に身を委ねて安全な場所まで運ばれます。
このタイプの連結飛翔を「←♂+♀」と表記します。
ミドリヒョウモンでは逆に「←♀+♂」のタイプの連結飛翔も過去に観察しています。
関連記事(1、2、8年前の撮影)▶
・交尾中に連結飛翔で逃げるミドリヒョウモン♀♂(←♀+♂)
・交尾中のミドリヒョウモン♀♂(←♂+♀)
・交尾中に連結飛翔するミドリヒョウモン♀♂ミドリヒョウモンの場合、連結飛翔で主導権を握るのは♀♂ランダムなのか、それとも先に危機を感じた個体が反射的に飛び立ち、パートナーは受動的に運ばれる仕組みになっているのでしょうか?
逃げたミドリヒョウモン♀♂は少し飛んで斜面を下り、日当たりの良いクズの若葉に止まり直しました。
ほぼ水平の広い葉なので、ようやく♀♂共に落ち着いて交尾を続けます。
下山を急いでいた私は、交尾が終わってカップルを解消するまで見届けられませんでした。
それにしても、安全を優先するのならどうして葉裏に隠れて交尾しないのか、不思議でなりません。
どうして鳥などの捕食者に見つかりやすい葉表で堂々と交尾するのかな?
♀が♂との交尾を早く切り上げたがる理由の一つが、天敵に捕食されるリスクです。
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