2022年10月中旬・午後14:35頃・晴れ
民家の外壁を覆うように雑草の蔓植物が繁茂して、天然の壁面緑化のようなマント群落を形成しています。
軒下にはジョロウグモ(Nephila clavata)が網を張り巡らせています。
その壁際になぜか執着して1頭のキタキチョウ(Eurema mandarina)が思わせぶりな飛び方をしていました。
近くにはセイタカアワダチソウの花が咲いていて、蜜源植物には事欠かないはずなのに、わざわざ壁際に固執する理由が分かりません。
遠目からはクモの網に何度もアタックしているように見えたので、不思議に思ってズームインしてみました。
クモの網に捕まった♀に対して♂が求愛しているのかと初めは思ったのですが、その予想も外れました。
どうやらキタキチョウはキカラスウリの黄葉に興味を示しているのに、手前に張られたクモの網が邪魔で近づけないことが分かりました。
同じキカラスウリでも緑の葉には興味がありません。
♂による誤認求愛だとすると、非常に興味深い行動です。
障害があるほど恋心が燃え上がるのでしょうか。
もしクモの巣が無ければキカラスウリの黄葉に着地して足で触れてみて、同種の♀ではないと確かめて飛び去るはずです。
キタキチョウ幼虫の食草はマメ科植物(クズは除外)なので、成虫♀が産卵目的で飛来したという訳でもなさそうです。
マント群落にはキカラスウリの他にクズ(マメ科)の葉も生い茂っていますが、それに対してキタキチョウは全く興味を示しませんでした。
もう一つ別の可能性として、茂みの奥に羽化間近の♀の蛹があるのかもしれません。
羽化したら真っ先に交尾しようとキタキチョウ♂が引き寄せられたのでしょうか?
しかし映像を何度見直しても、蛹は見当たりません。
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最後にキタキチョウはようやく諦めて飛び去りました。
その間、馬蹄形円網の主のジョロウグモ♀は全く無反応でした。
誘蛾灯の近くに造網するクモがよく育つように、周囲の植生が黄葉し始めたおかげでジョロウグモの捕虫網にキタキチョウ♂がよく掛かるようになったら面白いですね。
キタキチョウが落ち着きなく飛び回るので、肝心の性別が見分けられませんでした。
ハイスピード動画に切り替えれば良かったかもしれません。
キタキチョウの性別は、大雑把に言うと翅の黄色が濃い方が♂で、薄い(白っぽい)方が♀です。
今回の飛翔個体は黄色い♂のような気がするのですが、日差しが強くて白飛び気味の映像になり、確信がもてませんでした。
紫外線カメラで撮ればキタキチョウの性別を簡単に見分けられるのだそうです。
浅間茂『カラー版 虫や鳥が見ている世界―紫外線写真が明かす生存戦略 』(中公新書)によると、
・シロチョウ科のキタキチョウは♂の黄色い部分が紫外線を反射し、♀は吸収した。(中略)このキタキチョウの♂の翅は撮影する角度によってその紫外線反射量が変化した。これは構造色の発色のしかたと似ている。 (p24より引用)・♂のキタキチョウはモルフォチョウと同じ構造で紫外線だけを反射している。それも少し角度が変わるだけで大きく変化する。(中略)キタキチョウは紫外線反射により、互いに雌雄を容易に見極めている。 (p25-26より引用)
紫外線カメラでキカラスウリの黄葉を写真に撮ったら、キタキチョウ♀と似て見えるかどうか、誰か調べてみませんか?
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