2023/03/06

獲物を巣穴に運び込むモンスズメバチ♀

 



2022年6月中旬・午後17:45頃・晴れ(日の入り時刻は午後19:05) 

モンスズメバチVespa crabro)の巣穴を見つけてから2日後の夕方に、定点観察に来ました。 
採寸代わりに巣口の横に1円玉(直径20mm)を並べて置きました。

カメラの起動が間に合いそうになかったので、焦った私は営巣地に飛来した蜂を足で軽く追い払ってから、再び戻ってくるのを待ちました。 
巣穴を見下ろすように撮ると、帰巣した蜂が何を持ち帰ったのか見えにくいのが問題です。 
横から狙うべきでしたね。 
帰巣シーンを1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると(@0:42〜)、初回のワーカー♀は黄緑色の肉団子を巣穴に搬入していました。 
モンスズメバチと言えばセミを(専門に?)狩るというのが図鑑でも定説になっています。 
しかし私はモンスズメバチが獲物を狩る様子を未だ見たことがありません。
撮影時は初夏で、セミの鳴き声を周囲で未だ聞いていません。 
したがって、今回餌食になったのはセミ以外のおそらくイモムシ類(鱗翅目の幼虫)と思われます。 
狩蜂の中でもスズメバチとアシナガバチは狩った獲物をその場で解体して肉団子を巣に持ち帰ります。 
帰巣した蜂から肉団子をたとえ取り上げたとしても、獲物の原形を留めていませんから、素人が正確に同定するのは難しいでしょう。 

6分後、2匹目のワーカー♀が帰巣しました。 
飛来した蜂はかなり迷子になってからようやく巣穴に入りました。 
営巣地に私がカメラを持って突っ立っているせいか、または巣口の横にピカピカ光る見慣れない1円玉が置かれているせいでしょう。
ブタナの群落で少し離れた別の茎の周りを飛び回ったり、巣口の左から右から何度もアプローチをやり直してから、ようやく無事に入巣しました。 
(もっとズームアウトしないと、飛来した蜂が迷っている様子は撮れません。)

関連記事(2日前の撮影)▶ 巣穴に帰る途中で少し迷うモンスズメバチ♀

今回は帰巣した蜂が抱えていた空輸便の荷物をしっかり見極められませんでした。 
獲物の肉団子ではなく、巣材のパルプかもしれません。 
DNAバーコーディングの手法が普及すれば、肉団子から獲物の正体を突き止めることができるはずです。 
巣材の樹種も同定できそうです。 


【後日談】 
この河川敷は定期的に草刈りしているので、作業員にモンスズメバチの巣穴が見つかって駆除されてしまうのは時間の問題だと思っていました。 
案の定、このコロニーの活動を観察できたのは、この日が最後になりました。 
撮影したいテーマが未だ色々とあったのに、残念無念。 
(夜行性のシーンおよび雨天時の様子を観察できなかったのが心残りです。) 
少し無理をしてでも、撮影できるときに集中的に観察・撮影しておくべきでした。 
難しいのは、私が長時間立ち止まって地面の一点をじっと見つめていると、通りすがりの人に怪しまれて(興味を持たれて)蜂の巣の存在がばれてしまうことです。 
最近は蜂恐怖症のヒトが増えてますから、ヒステリックに反応して駆除業者に通報されてしまったら最期です。 
この日私は長居せずに、あえて短時間の撮影をしただけで立ち去りました。 
人通りの無い時間帯を選んで定点観察に来ないといけません。
目立たない無人カメラを巣口の横に設置したいところですが、トレイルカメラは変温動物の活動には反応してくれません。 

営巣地の周辺の草がきれいに刈られ、巣穴に出入りするモンスズメバチが完全に居なくなったものの、地面を掘り返して地中の蜂の巣を完全に破壊した形跡はありませんでした。 
したがって、駆除業者は巣口から中に殺虫剤を噴霧しただけのようです。 
しかし、駆除されたと思ったのは私の被害妄想かもしれません。 
モンスズメバチはコロニーが繁栄して営巣地が狭くなると新天地に巣を引っ越すことが知られています。 
もっと安全な(人目につかない)場所へ自発的に引っ越しただけなら良いのですが、モンスズメバチの世界も住宅難が深刻です。 
治水事業のために河畔林が次々に伐採されてしまい、樹洞のある大木(老木)はほとんど残っていないからです。 

危険なスズメバチを保護すべきだという主張はなかなか理解してもらえません。
決して可哀想だからという情緒論ではありません。
スズメバチは日本の生態系で上位に位置する捕食性昆虫と理解することがまず必要です。 
営巣後期にスズメバチの巣を丸一日観察すると、莫大な量の獲物を巣に搬入することに驚かされます。 
したがって、「怖いから」という理由でスズメバチの巣を見つけ次第駆除して根絶やしにしてしまうと、生態系のバランスが乱れて下位の昆虫が不自然に増えてしまうことになります。 
害虫駆除業者や殺虫剤のメーカーにとっては生態系が乱れて害虫が増えれば増えるほど、経済的に利益が増えます(儲かる)から万々歳なのでしょう。 
「害虫が大発生するのは全て地球温暖化のせいだ」ということにしておけば生態系破壊の責任を逃れられます。
近視眼的な市場原理に任せておくと、誰も歯止めをかけようとしません。 
都市化の進行で自然とのつながりが希薄になった結果、世界中で虫嫌いの潔癖症は年々エスカレートするばかりです。
蜂の巣駆除は必要悪というのが私の認識で、なるべく最小限に留めて欲しいのです。 
スズメバチの巣を無闇矢鱈に駆除して絶滅させるのを止めて欲しい、というのが私のささやかな主張です。 
蜂の巣の存在を告知する注意書きをして、立入禁止のロープを張り巡らせたら、後は1シーズン放っておけば良い場合もあるのに、駆除業者の尻馬に乗ってスズメバチの危険性を(良かれと思って)過剰に煽るマスコミも問題です。 
正しい知識があれば、スズメバチを無闇に恐れる必要はありません。
営巣地を迂回して通れば、スズメバチに攻撃されることはありません。 
基本的にスズメバチは忙しくて、ヒトの存在など眼中に無いのです。 
 「朝顔に釣瓶取られてもらい水」のような心の余裕(慈悲の心)をもつ日本人が少しでも増えてくれることを祈ります。 
うっかりスズメバチと出会ってしまったときの正しい対処法を子供に教えるのも大切です。

都会も含めて日本の自然界にスズメバチが何種類も住んでいるのは当然で、これからも居てもらわないと困ります。 
我々ヒトはなんとか折り合いを付けて(正しい知識を身につけて)スズメバチと共存するしかありません。 
言い出しっぺの私がまず蜂の巣の存在を告知する注意書きを設置すべきかもしれません。
しかし、どうせ駆除業者に通報されるだけ(藪蛇)だろうという諦念があり、撮影観察を優先してしまいます…。
もしも不幸な刺傷事故が起きた場合、蜂の巣の危険性を予見していたのに周知しなかったのは無責任だと怒られるのでしょう。
一体どうすれば良いのか、スズメバチ愛好者(絶滅危惧種)の悩みは尽きません。

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