2020年7月中旬・午後15:50頃・晴れ
芝生が広がる河川敷にネジバナがまばらに咲いていました。
訪花昆虫(送粉者)を調べようとネジバナを見て歩いていたら、クロマルハナバチ(Bombus ignitus)のワーカー♀がほんの一瞬だけ訪花していました。
1/5倍速のスローモーションでリプレイすると、後脚の花粉籠は空荷のようです。
ネジバナの花の螺旋は右巻きと左巻きの両方があるらしいのですが、今回の株は(下から上へ)左巻きの螺旋花序(正式用語?)でした。
以前、「所さんの目がテン!」というTV番組を見ていたら、植物学の本を何冊も書いておられる著名な植物生態学者の多田多恵子氏が登場し、ネジバナの送粉生態学を分かりやすく紹介していました。
興味深く拝見していると、ニホンミツバチやコハナバチなど体長約1cmの小さなハチがやってくるのだそうです。
ということは、今回私が一瞬観察したクロマルハナバチ♀は、ネジバナの花に興味を示して訪れたものの、体格が大き過ぎてミスマッチとなり、上手く吸蜜・集粉できなかったのでしょう。
(『日本産マルハナバチ図鑑』p99によると、クロマルハナバチのワーカーの体長は12.4〜18.8mm)
ネジバナの螺旋状の花序でハナバチ♀が回転集粉するのかどうか、自分でも観察・撮影してみたいものです。
その後もネジバナが咲いている夏の間に何度もしつこく通ってみたのですが、残念ながら送粉者(訪花昆虫)とは出会えませんでした。
来季の宿題です。
この河川敷でネジバナは生息密度が低い(まばらにしか咲いていない)ので、観察効率が悪いです。
ネジバナが一面に咲き乱れる大群落を探すのが先決かもしれません。
もしかすると、誰かに盗掘されてしまうのかな?
もう一つの問題として、ネオニコチノイド系農薬のせいかどうかはともかく、最近フィールドで見かけるハナバチ類が激減している気がして心配です。
以下はこの時期に撮影したネジバナの花の写真です。
石井博『花と昆虫のしたたかで素敵な関係 受粉にまつわる生態学 』という本を読んでいたら、ネジバナの送粉生態学について非常に興味深い研究結果を知りました。
(花序の捻じれ具合が異なるネジバナ群落の中で:しぐま註)捻じれ具合の弱い花序ほど多くの送粉者(ハナバチ)が訪れる一方で、そのような花序ほど、ハナバチ各個体による花序内での連続訪花数が増加していることがわかりました。ハナバチの仲間には、花序を下から上に向かって訪花していく傾向があります。捻じれが強い花序を訪れたハナバチは、いくつかの花をスキップして上の花に到達し、そのまま他の花序へ飛び立ってしまうようです。そして、捻じれが強い花序は、花がばらばらの方向を向いているために、送粉者から、やや目立ちにくくなっているようです。つまり、捻れが弱いほうが多くの送粉者を集めることができますが、捻れが強いほうが隣花受粉は減らせるようなのです。 (p212〜213より引用)
今回の動画でクロマルハナバチ♀が訪花しかけたネジバナの花序は、捻れ具合が強かったのですかね?
今後の観察が楽しみになってきました。
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