2022年12月下旬〜2023年1月上旬
雪深い里山のスギ林道を巡回するニホンカモシカ(Capricornis crispus)を自動撮影カメラが捉えた記録をまとめました。
シーン1:12/28・午後14:54・くもり・気温2℃・(@0:00〜)
明るい日中に林道を左からやって来ました。
林道に積もった雪質は腐れ雪のようです。
道端から突き出すように斜面に引っかかっているスギ落枝の匂いを嗅ぐと、尖った先端部にゴシゴシと顔を擦り付けて眼下腺の分泌液を塗りつけました。
マーキングが済むと、カメラ目線で舌なめずり。
右肩に黒班のある個体でした。
雪面の匂いも嗅いでから、右へ立ち去りました。
西日本のカモシカの映像をYouTubeで見ると、その黒さに驚きます。
それに対して、ここ雪国(北日本)のカモシカの毛皮が白っぽいのは、グロージャーの法則が当てはまります。
単純に積雪期に目立たないように捕食者から隠れる保護色なのかな?
ニホンオオカミが絶滅して以降、カモシカが恐れるべき天敵はヒト(猟師)ぐらいでしょう。
晴れれば雪山の紫外線は強烈なので、それを遮ったり反射したりする必要があるかもしれません。
岩波生物学辞典第4版で「グロージャーの規則」を引くと、
[英Gloger's rule]鳥類・哺乳類において,一般に同じないし近縁の種において,乾燥・冷涼な気候下で生活するものは,湿潤・温暖な気候下で生活するものよりも,メラニン色素が少なく明るい色彩を呈すること.様相に若干の差はあるが,昆虫類にもよく似たような傾向が見られる.しかし広く動物界を見ると,低温が黒化をもたらす傾向などもあって,この規則に添わない場合も多い.
シーン2:12/29・午前3:22・小雪・気温0℃・(@0:45〜)
翌日は小雪がかすかにちらつく深夜に左から登場。
毛皮が濡れています。
立ち止まってスギ落枝の先端の匂いを嗅いだだけで、マーキングせずに右へ立ち去りました。
シーン3:12/31・午前2:30・小雪・気温-2℃・(@1:05〜)
2日後の大晦日には小雪の降る深夜に、またもや左から登場。
新雪の少し積もった林道を軽くラッセルしながら(雪をかき分けながら)歩きます。
スギ落枝の端の匂いを嗅いで舌舐めずりしたものの、眼下腺マーキングしないで右へ立ち去りました。
シーン4:1/1・午前1:30・くもり・気温-2℃・(@1:25〜)
翌日、年が明けた元旦も深夜にカモシカが現れました。
この日は珍しく雪道を右から登場しました。
雪面がボコボコと荒れているのは、スギ樹上からドサドサとまとめて落雪したせいです。
立ち止まってスギ落枝の先に眼下腺マーキングしてから左に立ち去りました。
1歩ずつ歩くたびに、蹄が雪に少し潜っています。
スギ植林地の林床は微気象が安定していて、この時期の最低気温は-2℃止まりでした。
気温の低い厳冬期は眼下腺からの分泌物が揮発しにくくなり、匂いがあまりしない(マーキングに使えない)のではないか?と思ったのですが、素人予想は外れました。
実際にニホンカモシカの眼下腺分泌物の融点や沸点を化学的に調べた研究はあるのでしょうか?
そもそもどういう組成の物質なのかな?
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