2018/04/16

交尾しないニホンカワトンボ♀♂の謎



2016年6月上旬

用水路沿いの草むらでニホンカワトンボ♀♂(Mnais costalis)が同じ笹の葉で隣り合うように止まっていました。
同じ方向を向いて止まっています。
橙色翅型の成熟♂が翅を開閉したのは♀へのアピールでしょうか。
しかし冒頭で一度やっただけで止めてしまいました。
無色翅型の♀は翅を閉じたまま静止しています。

目の前に居る♀に対して♂が求愛交尾を始めないのは不思議でなりません。
「据え膳食わぬは男の恥」じゃないの?
図鑑『日本のトンボ』でニホンカワトンボの配偶行動について調べると、

橙色翅型の♂は水辺の植物や石に止まって縄張り占有し、近づく♂を激しく追い払う。♀が現れると目の前でホバリングして求愛した後、連結して移精、交尾を行う。(p37より引用)

右側に居る♀は性的に未熟なのか、それとも未成熟な透明翅型♂(♀に擬態したスニーカー♂[間男]※)なのでしょうか?
右側の個体の腹端の形状は、閉じた翅に隠れて分かりづらいものの、素人目には♀だと思います。

※ サテライト
[英satellite]
【同】衛星雄
なわばり防衛や求愛などを行わず,他の雄の繁殖努力に便乗して,あるいはその隙をついて繁殖を行う雄個体.ただしこの語の用法は研究者によってかなり異なる.例えば,ブルーギル・サンフィッシュの繁殖戦略を研究したM.Grossは,水草の陰に潜んでいて,産卵放精中のペアを見つけると突進して放精する小形雄をスニーカー(sneaker),そのような行動をスニーキング(sneaking)とよび,その後成長して雌擬態によって繁殖中のペアに近づくようになったものをサテライトとよんで区別した.しかし,両者を特に区別せず用いたり,またギンザケにおける同様な雄をジャック(jack)とよび,またブルーヘッドベラやササノハベラの一次雄が雌とペア産卵している二次雄のところに突進する行動をストリーキング(streaking)とよぶなど,対象動物によって固有の用語をあてることも多い. (岩波『生物学辞典 第4版』より引用)
カワトンボ科カワトンボ属に関して、ここ東北地方はニホンカワトンボの単独生息域であり、橙色翅型♂、無色翅型♂および無色翅型♀の組み合わせが同所的に見られるそうです。(図鑑『日本のトンボ』p41より)

もしかすると、交尾、産卵も済ませた♀♂ペアが別れて休んでいるのかな? (しかし、♂は用済みの♀をすぐに縄張りから追い払いそうな気がします。)

直後に私は別の被写体に気を取られてしまい、気になる♀♂ペアのその後の顛末を見届けられませんでした。



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この動画を見直すと、今回見た行動は交尾直後の束の間の休息だったのかもしれません。


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