送電塔#KN7に営巣したハシブトガラスの観察記録#1
(私の記憶違いで、定点観察を始めた初日の記録はこちらでした。連載の順番を入れ換えます。)
2019年5月下旬・午後17:02〜18:49(日の入り時刻は午後18:49)
郊外を通る高圧線の送電塔の中段ステージで繁殖中のハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)の巣を見つけました。
ハシボソガラスよりもヒトに対して警戒心の強いハシブトガラスが、周囲が開けた街中の送電塔に営巣するのは意外でした。
樹上の巣と違って周囲に葉が生い茂ることが無く、遥かに撮影し易いので、定点観察に通ってみることにしました。
カラスの巣材が高圧線に触れてショートすると大規模な停電になってしまいます。
最近の東北電力は、高圧線の送電塔に毎年作られるカラスの巣を片端から撤去する方針を改めたようです。
巣を撤去しても親鳥はすぐに作り直すので、不毛なイタチごっこになってしまうだけでなく、カラスの近隣住民に対する攻撃性も高まってしまいます。
鉄塔の中段に、「ここなら巣を作っても良いよ」と特設ステージを用意してカラスと共存するようになったのです。
金網を組み合わせて浅い箱にしたカゴをカラス専用の巣箱として送電塔の中段に設置しています。
カラスの巣箱に屋根は必要ありません。
一方、鉄塔で巣を作って欲しくない場所の周囲にはカラスが止まれないように棘状の障害物を多数設置しています。
飴と鞭を使いカラスの生態に寄り添う素晴らしい試みだと思うのですけど、私がフィールドで見てきた限り、カラスは特設ステージをすぐには使ってくれませんでした。
実際に営巣した例を見るのは今回が初めてです。
ようやくカラスが送電塔の巣箱に馴れてくれたのか、それとも電力会社が巣箱に何か改良を加えたのかな?
(私が知らなかっただけで、この送電塔では毎年カラスが営巣しているのかもしれません。)
詳しく知りたい人は、後藤三千代『カラスと人の巣づくり協定』という本をお薦めします。
カラスの営巣問題を根本的に解決する方法として、人工巣による営巣対策が挙げられる。
カラスはなわばりに一つの巣を作るという貴重な営巣習性をもっている。その習性を生かして、カラスの初回の巣を人間が用意した人工巣に作らせ、2回目以降の営巣をなくす、というアイデアである。
「人工巣」とは、電柱の支障がない部位に巣を載せる台(ベース)をつける程度の意味であって、繁殖ができる本格的な巣ではない。下手に完全な巣を与えることは、他のつがいの巣と警戒され、せっかくの対策を台無しにする恐れがある。 (同書p89より引用)
ハシブトガラス(野鳥)巣:送電塔#KN7・全景 |
ハシブトガラス(野鳥)巣:送電塔#KN7・全景 |
この日の私は未だ、どこから巣を狙うか撮影ポイントを試行錯誤している段階です。
夕方なので、夕日に対して逆光にならない方角から狙うようにしています。
巣箱の中に雛鳥は全く見えませんでした。
未だ卵の段階なのか、それとも孵化直後で小さくて見えないだけなのか、不明です。
送電塔に近づき過ぎると、あからさまに警戒した親鳥が鳴きながら飛んできます。
この日は三脚を持参しなかったので、全て手持ちカメラで撮影しました。
ハシブトガラス(野鳥)巣箱:送電塔#KN7 |
ハシブトガラス(野鳥)巣箱:送電塔#KN7 |
ハシブトガラス(野鳥)巣箱:送電塔#KN7 |
ハシブトガラス(野鳥)巣箱:送電塔#KN7 |
私が送電塔の中段に設置された巣箱に望遠レンズを向けた途端に、一段下の鉄骨に止まっていた1羽の親鳥が飛び立ち、私の方へ向かって来ました。
近くの針葉樹の梢に止まり、カーカー♪と澄んだ声で鳴き騒いでいます。
これ以上巣に近づかないようにと私に警告しているのです。
しばらくすると、親鳥は鉄塔の下部に一旦止まって辺りの安全を確認してから舞い上がり、帰巣しました。
巣箱と同じ段の鉄骨でしばらく辺りを警戒しています。
結局、巣箱には入らずに滑翔すると、ガーガー♪と嗄れ声で鳴きながら私の方へ真っ直ぐに飛んで来て、私の横を通り過ぎました。
ハシブトガラスなのに、まるでハシボソガラスのようにガーガー♪と嗄れ声で鳴いたのにはビックリしました!
観察を積み重ねると次第に分かってくるのですが、これはハシブトガラスの警戒声のようです。
やがて、親鳥♀♂の
カメラを構えて長時間居座っている私が気になるようで、偵察に来たのでしょう。
小声でまたもやガーガー♪と鳴き交わしています。
親鳥2羽が相次いで電柱から飛び立つと、今度はハシブトガラスらしくカーカー♪と澄んだ声で鳴きながら私の頭上を飛び越えて行きました。
なかなか立ち去らない私に対して、かなり苛立っている(怒っている)ようです。
しかし私に直接攻撃してくることはなく、身の危険を感じるほどではありませんでした。
ハシブトガラス親鳥♀♂(野鳥)@電柱+警戒 |
片方の親鳥(おそらく♀)が巣に戻って抱卵/抱雛している間に、もう1羽のカラスが左から飛来して鉄塔のすぐ背後を高速で通り過ぎました。(@1:25)
領空侵犯されたのに在巣の親鳥♀が迎撃に飛び出さず無反応だったということは、もう1羽の親鳥♂だったのでしょう。
夕暮れ時になると、外出から鳴きながら戻って来た親鳥♀♂は高圧線の最上段に離れて止まりました。
辺りを見回して縄張りを警戒しています。
嘴を足元の高圧線に擦り付けたりもしています。
親鳥のハシブトガラスは高圧線からフワリと飛び上がると、カァカァ♪と澄んだ声で鳴きながら私の頭上を飛び越えて行きました。
私がしつこく見ているのが気に入らないようです。
ラストシーンは、巣箱で抱雛していた親鳥が日没時に突然カーカー♪鳴きながら飛び去る様子です。
領空侵犯に対するスクランブル発進のようです。
その直後に巣箱の中でかすかに動いている雛を初めて確認することができました。(@2:24〜)
巣箱の側面の高さよりも未だ小さい状態ですが、側面のメッシュを通してなんとか雛を見ることができました。
卵から孵化していました。
巣内に座っていた親鳥♀の行動も抱卵ではなく抱雛だったと分かりました。
つづく→#2:幼い雛への給餌と抱雛のため送電塔の巣箱に出入りするハシブトガラス親鳥♀♂(野鳥)
0 件のコメント:
コメントを投稿