2015年6月中旬・室温27℃・湿度50%
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セアカヒメオトシブミの揺籃作り【後編】
セアカヒメオトシブミ(Apoderus geminus)♀が柳の葉を巻いて作った揺籃に産卵してから33日後、飼育容器内で羽化した成虫が徘徊しているのを見つけました。
採集した揺籃をときどき霧吹きで軽く加湿しながら容器内に放置していたのですが、一ヶ月を過ぎても成虫が羽化してこないので乾燥で飼育に失敗したのかと心配していました。
きれいな円形の脱出口が揺籃の側面に開いていて、少しだけカビが生えかけていました。
巻いた揺籃を留める折り返し部分が解けかかっているのは乾燥のせいかな?
脱出する際は中から齧る音がしたはずですけど、気づけませんでした。
この日は久しぶりに霧吹きしたので、湿り気で雨だと思い羽脱したのでしょうか。
ときどき翅を広げて飛んでくれたのに、肝心の飛び立ちシーンが尻切れトンボになってしまいました。
飛行後の後翅をきれいに畳めないでいます。
飛ぶ力も弱く、すぐに墜落してしまいます。
クチクラが未だ充分に固まっていないのかな?
触れると長時間死んだふり(擬死)します。
その後はホスト植物の柳とイタドリを水差しにして与え、飼育を続けてみました。
ところが飼育容器から逃げ出そうと飛んだり徘徊したりするばかりでした。
揺籃を作るどころか葉を食べる行動も全く見られず(見落としただけ?)、5日後には死んでいました。
その行動から素人目にはなんとなく♂ではないかという気がするのですけど、どうですかね?
オトシブミの♂は飲まず食わずで配偶行動に没頭するのでしょうか?
♀は交尾してからでないと揺籃を作り始めないのかな?
私には形態的にセアカヒメオトシブミの性別を見分けられないので、どなたかお分かりの方はぜひ教えて下さい。(※追記参照)
以下は標本写真。
死後は鞘翅の赤色がやや褪色するようです。
シリーズ完。
次の課題としては、
- 揺籃を分解して卵の位置を確認する。
- 柳の葉から切り落とされずに残っている揺籃を採集してきて飼育する。
- 揺籃をカットして中身の発生状況を観察しつつ飼育する。
- 飼育下で揺籃を作らせる。
- 成虫の摂食行動を観察する。
※【追記】
クリの葉を巻いて揺籃を作るナミオトシブミの生態を緻密に調べた古い名著『オトシブミ―昆虫の本能のひみつをさぐる (観察の本 1) 』p75〜76によると、ナミオトシブミの場合は前脚の跗節の基部にある鉤爪の数が♂では1本、♀では2本でした。
♀のかぎ形の二本のつめが、足の先のつめといっしょになって、ようらんを巻くとき、葉を引っぱったり、筒を抱きころがしたりするときの、だいじな道具になるのです。♂は二本もつめがいらないんだ。葉を巻くのは、♀だけだもの。この性差はどのオトシブミでも共通なのですかね?
だとすれば今回、私が得たセアカヒメオトシブミの個体は爪の数が一本なので♂ということになります。
手元の標本で爪の性差をもう一度確認してみる必要があります。
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