2022年10月下旬・午後16:30頃・くもり
夕方の山麓で野生ニホンザル(Macaca fuscata fuscata)の群れと遭遇しました。
スギ植林地の林縁に真っ白なアルビノの子猿が居ました。
スギの樹皮を齧ったり剥いだりして、採食の真似事(独り遊び)をしていました。
やがて白猿は左に座っていた母親の元に駆け寄りました。
母親♀の胸に長くて赤い乳首が目立ちますが、子猿は吸いつこうとしません。
もう乳離れしているようです。
土手に生えたイヌタデの群落が邪魔で、ニホンザル母子の姿がよく見えません。
猿を怖がらせないように私がゆっくり横にずれて、なんとか撮影アングルを確保しました。
母親の毛皮の色は表現型として正常です。
アルビノという形質がメンデルの法則に従うと仮定すると潜性遺伝(昔の用語では劣性遺伝)で、母親は毛皮の色を支配する遺伝子座がヘテロなのでしょう。
アルビノの子ザルは口をモグモグさせながら、左手で左脚を掻き、目の前の下草を採食しました。
私の背後(山側)から木の枝がバキッと折れる音とガガガ♪とサルが威嚇する鳴き声が聞こえました。
別個体のニホンザルがおそらく私に対して威嚇しているようですけど、振り返らずにアルビノの撮影を優先します。
その騒ぎに反応して母子が顔を上げました。
母親に比べて、白猿の瞳の色が明らかに薄いです。
したがって、白変種ではなく真正のアルビノのようです。
しばらくすると、母猿がアルビノの子猿に対して毛繕いを始めました。(対他毛繕い@1:42〜)
子猿の後頭部や背中の白い毛を掻き分けて、甲斐甲斐しく蚤取りしてあげています。
純白の毛皮に紛れたノミを見つけるのは非常に難しいのではないでしょうか?
アルビノ個体の抱えるデメリットの一つかもしれません。
子猿も振り返って、拙い手つきで母親の毛繕いを始めました。(相互毛繕い)
母猿が自分の腕に付着したひっつき虫に気づき、自分で取り除いて食べました。(@2:15〜)
ひっつき虫を捨てるのではなく食べたというのが重要なポイントです。
ニホンザルは頻繁に毛繕いするので、せっかく毛皮に付着しても「ひっつき虫」が種子散布に成功する率はかなり低そうです。
ざらついた粗い画質の動画ですが、とにかく非常に暗くて、私のカメラでは撮影の限界でした。
薄暗くても白猿は非常によく目立ちます。
捕食者が居る環境だと目立つアルビノはかなり不利なはずです。
しかし結構な頻度で白猿を見かけるということは、現代日本の山林にニホンザルの捕食者は不在なのでしょう(捕食圧が低い)。
それとも、この辺りの個体群の血が濃くなっているせいで潜性遺伝のアルビノが生まれやすくなっているのでしょうか?(近親交配)
ヒトはなぜかアルビノを神秘的に思う(畏敬する)奇妙な習性があるので、狩猟でニホンザルを害獣駆除する際も白猿は見逃してもらえるようです。(アルビノに対して狩猟圧も低い)
逆に冬になれば、雪国のアルビノは完璧な保護色となります。
しかし晴れると雪に反射した強い紫外線によって、瞳の色素が薄いアルビノは特に目を痛めやすいはずです。(雪目、雪盲、雪眼炎)
この杉林はニホンザルの集団塒 であることが後に判明します。(動画公開予定)
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