2016/12/24

ミズナラの葉を蚕食し脱糞するウスムラサキイラガ(蛾)亜終齢幼虫【100倍速映像】



2016年9月上旬
▼前回の記事
ウスムラサキイラガ(蛾)亜終齢幼虫の排便


ウスムラサキイラガ(蛾)の飼育記録#5


ウスムラサキイラガAustrapoda hepatica)の亜終齢幼虫は凄まじい食欲でミズナラの葉を貪り続けています。
食害シーンをじっくり微速度撮影したので、100倍速の早回し映像でご覧下さい。

初めは葉先からきれいに律儀に食べ進みます。
葉縁の鋸歯も太い主脈も平気で食べています。
柔らかそうな若葉には拘らず、ミズナラの立派な(大きな)葉でも平気で食べています。
幼虫は葉を食べながら横に移動できるようです。
食痕がほぼ横一直線になるのが面白く思いました。
食べ残しがでっぱった部分に遭遇すると往復して重点的に食べ、他の部分に合わせて一直線にしています。
やがて摂食パターンが変わりました。
横一直線に食べ進むのを止めて、何とも形容しがたい複雑な虫食いパターンになりました。
幼虫が葉上で方向転換する様子がルンバを連想させ、コミカルで可愛いですね。
独特の横歩きが面白い。

ルンバなど掃除ロボットの動きはプログラムで実現されています。
ウスムラサキイラガ幼虫の摂食行動はどのようなアルゴリズムで遺伝的にプログラムされているのでしょう。

背面からの撮影に切り替えると、定期的な脱糞シーンも録画されるようになりました。
(@4:04, 4:14, 4:26, 4:38, 4:49, 5:00, 5:14, 5:26, 5:38, 5:50, 6:01)

マクロレンズで接写していると葉がよく揺れて困るのですけど、必ずしも風のせいではありません。
室内の扇風機を止めても相変わらず揺れるのです。
幼虫が摂食中に葉先で動くせいで葉が揺れてしまうのだと原因が分かりました。
後半はクリップやビニールテープを使って葉をしっかり固定すると、ようやく悩ましい葉の振動が止まりました。


つづく→#6:ウスムラサキイラガ(蛾)亜終齢幼虫の口元を隠す食事マナー



【おまけの動画】
同じ素材ですが早回し速度を少し変えて、60倍速映像をブログ限定で公開します。


【追記】
安田守『イモムシハンドブック2』でウスイロイラガ幼虫の食性を調べると、
コナラ(ブナ科)、ウメ(バラ科)、ヤナギ類(ヤナギ科)など多食性(p35より引用)
とのことでした。




夕暮れにハチミツソウの花蜜を吸うシロオビノメイガ(蛾)



2016年9月上旬・午後17:58〜18:14

川沿いの堤防に生えたハチミツソウ(=ハネミギク、羽実菊)の群落で日没直後からシロオビノメイガSpoladea recurvalis)が訪花していました。
私が草むらにそっと近づくと蛾は警戒して飛び立つものの、すぐ同じ株の花に舞い戻ってくれるので助かりました。
刻々と暗くなっても熱心に吸蜜を続け、花から花へ飛び回っていました。
吸蜜中も触角を激しく上下しています。
ちなみに、この日の公式な日の入り時刻は午後17:55。
後で思えば、赤外線の暗視カメラでも夜行性の吸蜜シーンを記録すればよかったですね。



この黄色い花の名前を知りませんでした。
おそらくキク科だと思うのですが、オオダイコンソウにしては葉の形が全く違います。
外来種や園芸植物だろうと予想をつけて、植物関連の掲示板にて問い合わせたところ、北米原産のハチミツソウと教えてもらいました。
養蜂用の蜜源植物として1960年代に北海道に導入されて以来、野生化して日本各地に分布を広げている侵入植物らしい。



【追記】
後日、明るい日中も同様に訪花することを観察しました。
▼関連記事 
昼間にオオハンゴンソウの花蜜を吸うシロオビノメイガ(蛾)

ナガボノシロワレモコウの花蜜を吸うフタモンアシナガバチ♀



2016年9月上旬

水田の畦道に咲いたナガボノシロワレモコウの群落でフタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)のワーカー♀が訪花していました。
花から花へ飛び回り、吸蜜しています。
そっと近づいて接写するために追い回しても同じ群落に舞い戻って来てくれるので助かりました。

何の変哲もない組み合わせの訪花映像に見えるかもしれませんが、私は「積年の謎がこれで解けた!」と非常に興奮しました。
Q: ヘラオオバコは虫媒花ではないか?
個人的にここ数年とても気になっている疑問で、しつこく追求しています。
詳しくはこちらのまとめ記事(リンク集)をご覧下さい。
定説によると、オオバコや帰化植物のヘラオオバコは地味な花を咲かせて花粉が多く、風媒花の特徴を備えています。

花糸(葯を支えている細長い柄の部分)が細長いのは風媒花(風によって花粉が運ばれる)の特徴です。(『ふしぎな花時計:身近な花で時間を知ろう』p102より引用)


花が地味で単純なのは、昆虫などの送粉者を惹き寄せる必要がないからです。
ヘラオオバコの花を嗅いでも芳香は感じられません。
風媒花は受粉効率の悪さを花粉の量で補います。
空気中に花粉を大量に撒き散らす結果、我々を悩ませる花粉症の原因(アレルゲン)にもなります。
ちなみにヘラオオバコは江戸時代の末期に渡来したらしい。



オオバコが風媒花であることは日本語版wikipediaに明記してありました。
一方、検索してもヘラオオバコが風媒花であると明記した資料を日本語で見つけられなかったのですが、英語でようやく発見。
風媒による他家受粉の他に、無性生殖のクローンでも増殖するそうです。


The mode of reproduction can vary among populations of P. lanceolata.[9] Reproduction can either occur asexually via cloning or sexually, with the pollen being wind dispersed.[9] In the populations that reproduce asexually via cloning, genetic variation is much lower than the populations that reproduce sexually.[8] (英語版wikipedia:Plantago lanceolataより)

アシナガバチ類はカリバチの仲間ですから、ハナバチと違って花粉を集めることはしません。
したがって、フタモンアシナガバチがヘラオオバコの花を舐めていたのは蜜腺の存在を強く示唆しています。
今秋はヘラオオバコの花を重点的に見て回り、この問題について更にしつこく証拠映像を撮り貯めていますので、お楽しみに。
植物組織学的に蜜腺の存在を証明するにはどうしたら良いのか、詳しい方は教えて下さい。
果糖を検出するアッセイをすれば良いのかな?
花が咲く前からヘラオオバコを袋掛けしておいて結実しなくなることを実験で示したとしても、それは風も虫も両方無い条件ということになります。
栽培したヘラオオバコに対して風だけ、虫だけ、をそれぞれ遮断するような本格的な実験を組む必要がありそうです。

風媒花をつける植物の仲間であっても、二次的に虫媒などになったと考えられるものもある。たとえばカシやナラなどのブナ科植物は風媒花をつける植物の代表であり、雄花は細長い柄に、ごく小さいものが並ぶ地味なものであるが、シイやクリの花には多くの昆虫が訪れる。これらの場合、雄花の穂は枝先に多数集まり、穂全体が黄色みを帯びることでまとまればかなり目を引くようになっており、また、強い香りを放っている。逆に、キク科におけるヨモギやブタクサのように、虫媒花の群でありながら、二次的に風媒となったものもある。(wikipedia:風媒花より)
今後はヘラオオバコだけではなくオオバコの花にも昆虫が訪花するのか、注意して見て回るつもりです。


【追記1】

恥ずかしながら、私は初めこの花をヘラオオバコかと思い込んでいたのですが、訂正しておきます。





↑【おまけの動画】

冒頭で示した映像は蜂にピントが合わない前半部を編集で泣く泣くカットしています。
今回のフタモンアシナガバチ♀がたまたまナガボノシロワレモコウの花穂で休んでいたのではなく結構長い時間ナガボノシロワレモコウの群落に執着して訪花していたことを示すために、ノーカット版をブログ限定で公開します。



【追記2】
ナガボノシロワレモコウの花に微小のアブラムシが集っていて、蜂がその甘露を舐めに来た可能性もあり得るかもしれません。
そのようなアブラムシの存在には気づきませんでした。

後日に撮影したアブラムシspコロニー@ナガボノシロワレモコウ花柄(2017年10月中旬)

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