2015年8月中旬
山間部の峠道の脇に生えたクサギの群落で蕾に見慣れない小蛾がずっと止まっています。
ハマキモドキ科の一種だと思うのですが、どうでしょう?
蕾でウロウロと徘徊するものの、なかなか飛び立とうとしません。
風で枝が揺れても飛んで逃げません。
よく見ると口吻を伸ばして
生憎この日はマクロレンズを持参しておらず、しっかり接写できなかったことが心残りです。
クサギの花は殆ど散り終えていますが、少しは咲き残っています。
しかしこの小蛾はクサギの花で吸蜜するのではなく、蕾や萼に執着していることが不思議でなりません。
もし盗蜜なら蕾の根本に居座って口吻を差し込んでいるはずです。
♀による産卵行動でもなさそうです。
クサギの花外蜜線を舐めてるのでしょうか?
インターネットで検索してみると、クサギの葉には花外蜜腺の存在が知られているようですが、蕾にも有るかどうか不明です。
クサギ Clerodendron trichotomum (THUNB.)の葉には, 乳頭突起と腺毛状突起の2種の毛状突起, および花外蜜腺の存在が確認された.クサギ(臭木)には独特の芳香がありますから、性フェロモンの原料となる香料を摂取している可能性も考えられます。(※ 追記参照)
下川和洋, and 北野日出男. "カブラハバチ類成虫のクサギ腺毛状突起に対する摂食習性とその生物学的意義について." 昆蟲 57.4 (1989): 881-888.(@CiNii)
あるいは、クサギを寄主植物とするアブラムシ(クサギアブラムシなど)が分泌した甘露を舐めているのかもしれません。
ただし、撮影中にアブラムシのコロニーを見つけられませんでした。(葉裏をめくってみれば良かったですね。)
また、クロオオアリ♀も同様にクサギ蕾の萼を舐めに来ていました。→関連記事
したがって、フェロモン説よりも、実際に甘いのではないかという気がします。
今思うと、私も舐めて味見してみるべきでした。
ちなみに、このクサギ群落を訪花する蛾としては他に、ホウジャクの一種が吸蜜ホバリングを披露してくれたものの、動きが速過ぎて撮り損ねました。
いつもお世話になっている「新・蛾像掲示板」に投稿して問い合わせたところ、ibota_mothさんより次のようにご教示頂きました。
頭部と前胸背板が黄色いのでアトギンボシハマキモドキ(Prochoreutis delicata)でしょうか。いずれにせよ、Prochoreutis属であるのは間違いないと思います。その後、juntさんからもコメントを頂きました。
ibota-moth様のおっしゃるとおりに属名にされたほうが間違いないと思います。あげられた特徴には4種あてはまります。去年のとも種が違うかもしれません。
※【追記】
矢追義人 『ミクロの自然探検: 身近な植物に探る驚異のデザイン』という植物観察の書籍を読んでいたら、興味深い話が書いてありました。
(クサギの)葉の表を見ると、まばらな多細胞毛の間に、丸いマッシュルームのような突起がある。この突起も毛の変形と見るようで毛茸と呼ばれ、クレロデンドリンという苦味物質群を出していることが突き止められている。このクサギの葉には、カブラハバチの仲間がよく集まる。カブラハバチの(中略)成虫は雌雄ともにクレロデンドリンに強く誘引されてクサギの葉に集まる。(中略)このハバチ類はクレロデンドリンを大量に摂取し、体表が苦くなるという。それゆえ、(中略)このハバチは苦味や異臭のある物質をため込むことで外敵から身を守っているのだろうと想像されていた。ところが、(中略)クレロデンドリンの中には、♀の♂に対する誘引力を高めたり、♂の性行動を促進したりする、性フェロモンの働きをするものがあることがわかってきたという。(p26より引用)
次回からはクサギの木にカブラハバチの仲間が来ているかどうか、注意して観察してみようと思います。
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