2019/11/05

ドバトの死骸に通い肉団子を作るシダクロスズメバチ♀【HD動画&ハイスピード動画】(野鳥)



2019年7月中旬・午前5:00および5:40頃
▼前回の記事
ドバトの死骸を貪り食うハシブトガラスの家族群(野鳥)

カワラバト(=ドバト;Columba livia)の死骸を調べるために私が近づくと、ハシブトガラスの群れは死骸をその場に残したまま逃げていきました。

毟り取られた羽根が風に飛ばされ、池畔に散乱しています。
生前は全体的に白っぽい鳩だったのでしょう。
カラスに腹側をつつかれた結果、胸から腹にかけて血まみれの生肉や臓器が露出しています。
断頭された頭部が辺りに見当たりません。(池の中に落ちてしまった可能性は?)
辺りの地面に血痕が無いので、ここで殺害された(狩られた)のではないと思われます。

大騒ぎしながら屍肉を喋んでいたカラス一家が居なくなった途端に、次に控えていた昆虫の屍肉掃除屋が続々と到着しました。
一番乗りしたクロバエ科のキンバエの仲間(種名不詳)は常連です。
左右の複眼が離れている♀ばかりが集まり、血が滴る傷口を舐めて吸汁したり、産卵したりしています。

クロスズメバチの仲間(シダクロスズメバチまたはクロスズメバチ?)も早々と死骸に集まっていたのが興味深く思いました。
ワーカー♀が血に染まった新鮮な鳥肉を噛み切り、肉団子作りに励んでいます。

鳩胸のいわゆる胸肉と呼ばれる部位なのかな?

朝日が昇って辺りがだいぶ明るくなるまで待って40分後に現場を再訪し、飛び回るクロスズメバチ♀を240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@3:59〜)

(ハイスピード動画は充分な光量がないときれいに撮れないのです。)
クロスズメバチやキンバエが低空で飛ぶと、羽ばたいた風に煽られて死んだ鳩の羽毛がなびきます。
丸めた肉団子を持ってクロスズメバチ♀が飛び立つ瞬間をスローモーションで見ると、餌場の位置を正確に記憶するための定位飛行をしている個体がいました。
定位飛行せずにまっすぐ帰巣した個体は、もう何度も通ってきている個体なのでしょう。

死骸に群がるキンバエを追い散らすものの、積極的に襲って狩ることはありませんでした。
キンバエの方がクロスズメバチよりも俊敏ですぐに逃げてしまうので、狩ろうとしても無理なのでしょう。
キンバエ♀もすぐに舞い戻って来て、少し離れた部位で吸汁を続けています。
肉団子を作っている最中のクロスズメバチの背後でキンバエ♀がホバリング(停空飛翔)すると、羽音を聞いたクロスズメバチ♀が腹部と翅を軽く持ち上げて警戒・威嚇しました。(@6:20)
このとき腹端の毒針を見せつけたかどうか(威嚇誇示)、定かではありません。

クロスズメバチ♀の遅れて着陸した個体が慌てていたのか、先客の個体と衝突することがありました。(ごっつんこ!)(@7:06)
激しい喧嘩に発展しなかったのは、おそらく同じコロニー出身なのでしょう。
餌場の占有行動で体当たりしたのではなさそうです。


鳩肉を食べる、君の名は?
この蜂は、シダクロスズメバチVespula shidai)またはクロスズメバチVespula flaviceps)のワーカー♀だと思うのですが、どちらでしょう?
映像や写真から見分けられる達人がいらっしゃいましたらご教示下さい。
私はスロー再生をいくら見直しても自信が持てませんでした。
クロスズメバチの仲間をしっかり同定するためには顔写真を正面と横から接写しないといけないことは重々承知していたのですが、ドバトの死骸が横たわっているエリアは桜の木の下で立入禁止のロープが張られており、これ以上近づけませんでした。(撮影は公道から)
また、蜂を採集したくてもこの日は捕虫網を持参していませんでした。
クロスズメバチ属ではなく、やや珍しいホオナガスズメバチ属の可能性もありますかね?
現場は自然度の高い平地ですけど、山地性のホオナガスズメバチ属を標高から単純に除外できるのかな?
「スガレ追い」のテクニックを使えば、蜂が通って来る巣の位置を突き止められたかもしれません。


首無し死骸の謎
公園などで野鳥や野生動物の首無し死骸が見つかる度にニュースになり、世知辛い近年は動物虐待する猟奇的な変質者(快楽殺人鬼予備軍)の仕業かと騒ぎになります。

このような記事を何本も書いている私などは圧倒的不審者として真っ先に疑われてスケープゴートにされそうです。
▼関連記事(7年前に撮影した首無しウサギ死体のミステリー)
死んだウサギの骨髄に群がるムネアカオオアリ
しかし狩りをした猛禽類の落とし物かもしれない(自然の営み)という視点が扇情的なマスコミには欠けている気がします。
通報を受けた警察はあらゆる可能性をしっかり捜査するでしょうが、一般人はまさか街なかの公園にワシ・タカやフクロウなどの猛禽類が出没するなど思いもよらないのでしょう。


熊谷勝『カラー自然シリーズ66:ハヤブサ』によると、

・♂親はさいしょに、するどいくちばしでえものの首をきりおとします。
・ほかのワシタカ類が、するどい爪で締め殺すのに対して、ハヤブサのなかまは首を切断して、えものを殺します。(中略)ハヤブサは、えものを殺すと、さいしょにもぎとった首筋から、栄養のある内臓をひきだして食べます。 (p12より引用)


サバンナでライオンが狩った獲物をハイエナの群れが強奪するように、早朝の狩りに成功したチゴハヤブサをカラスの群れが取り囲んで追い払ったのではないか(モビング)と私は想像しています。

ドバトを仕留めたのがもしネコなどの肉食獣なら、傷口に唾液が付着しているはずですから、獲物の死体表面に残ったDNA痕跡を調べれば分かるはずです。
今回は近くに出没するチゴハヤブサなどの猛禽類が仕留めたと私は睨んでいるのですけど、その場合もDNA解析で犯人(捕食者)を突き止められるかな?
もしもハシブトガラスのDNAしか検出されなければ、寿命や病死のドバトをカラスが食べていたということになりそうです。
死骸に集まっていたクロスズメバチやキンバエの種類も傷口のDNA解析で正確に同定できる時代が来れば(ナチュラリストにとって)最高です。



数日後に現場を再訪すると、ドバトの死骸はきれいさっぱり無くなっていました。
生物分解を受けて現場でゆっくりと白骨化する前に、気味悪がった通行人が早々に保健所へ通報してゴミ処分されたのでしょう。
ウジ虫が大量に発生したり真夏に死骸が腐ると悪臭が酷いですから、人通りの多い場所では衛生上仕方がありません。
潔癖症の現代日本で屍肉食性の生き物の生態を調べるのは大変です。
その点、『昆虫記』で有名なファーブルは流石です。

自宅の庭にヘビなど動物の死骸を放置し、次々にやって来る昆虫類をしっかり観察、記録しているのです。
フンコロガシや狩蜂だけでなく、『昆虫記』後半の章では屍肉食性昆虫の営みも紹介しているのが名著たる所以です。
ファーブルを尊敬する私も、鳩の死骸を持ち帰って観察を続ける根性はありませんでした。



クロスズメバチ♀群れ@ドバト(野鳥)首無死骸+肉団子作り+キンバエspp@吸汁・全景
クロスズメバチ♀群れ@ドバト(野鳥)首無死骸+肉団子作り+キンバエspp@吸汁
クロスズメバチ♀群れ@ドバト(野鳥)首無死骸+肉団子作り+キンバエspp@吸汁
クロスズメバチ♀群れ@ドバト(野鳥)首無死骸+肉団子作り+キンバエspp@吸汁
クロスズメバチ♀群れ@ドバト(野鳥)首無死骸+肉団子作り

映像から切り出した顔写真


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