2021年7月下旬・午前10:50頃・晴れ
里山でヒトがあまり通らない山道(整備が行き届かず、ほぼ廃道状態)を薮漕ぎしながら進んでいると、前方にキボシアシナガバチ(Polistes nipponensis)の巣を見つけました。
スギ(杉)幼木の葉裏に吊り下げられた巣上でこちらを威嚇している蜂に気づいた私は焦って立ち止まり、蜂に刺されずに済みました。
幸い小規模なコロニーで、在巣の個体は3匹の♀だけでした。
残りのワーカー♀は外役に出かけているのでしょう。
巣の周囲の茂みを軽く揺らすと、こちらを向いていた2匹のキボシアシナガバチ♀が半開きにした翅を震わせて威嚇の姿勢(臨戦体勢)になりました。
神経質そうに大顎を開閉させたり、持ち上げた足先をピクピク震わせたりしています。(武者震い?)
巣盤の陰にいるもう1匹の個体は私の姿が見えてないのか、無反応でした。
左下の個体は複眼が黒いので、羽化直後のワーカー♀と分かります。
右下の個体は大型で複眼が茶色なので、これが女王蜂(創設女王)かもしれません。
巣盤の中央部の育房は黄色い繭で蓋がされています。
これはキボシアシナガバチの特徴の一つです。
外側の育房には幼虫が育っています。
巣柄付近の巣盤天井部だけ黒いのは、タール状のアリ避け物質を塗布してあるからです。
アシナガバチの天敵はアリです。
巣を刺激しなければ、アシナガバチが私に対して飛びかかって刺しに来ることはありません。
今回はキボシアシナガバチの営巣木を揺らさないで山道を直進するのは不可能だったので、少し迂回しました。
アシナガバチ♀が示すボディランゲージを正しく読み取って正しく対処すれば、無闇に恐れることはありませんし、無用な殺生(駆除)も不要です。
私の場合、アシナガバチに刺されるリスクが一番高いのは、山中でガサガサと強引に薮漕ぎしているときです。
アシナガバチの巣があると知らずにヒトが激しく揺らしてしまうと、怒った蜂に刺されてしまいます。(経験済み)
今回は直前で巣の存在に気づいてラッキーでした。
低い位置に営巣していたので、少し離れてからしゃがんで動画に撮りました。
山道も人通りが減り整備しなくなるとあっという間に雑草が生い茂り森林への遷移が進んでしまいます。
アシナガバチ巣盤の繭キャップは白いのが普通ですが、キボシアシナガバチおよびヤマトアシナガバチ※の巣では繭キャップが鮮やかな黄色でよく目立ちます。
これは巣にうっかり近づきそうになってしまった敵への警告色かもしれません。
ただし、これは各々が図鑑で勉強するか、一度痛い目に遭わないと学習できません。
※【追記】
私のフィールドでヤマトアシナガバチを一度も見かけた記憶がありません。
不思議に思っていたところ、小松貴『絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)』という本を読んでいたら疑問が氷解しました。
(ヤマトアシナガバチは)関東あたりから西の日本各地の平地に広く分布し、温暖な地域ほど普通に見られる。(p211より引用)
そもそも寒冷な東北地方には分布していないと知りました。
そして近年めっきり数が激減し、その原因が不明なことから、環境省のレッドリストでは情報不足にしていされているそうです。
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