2025/10/12

ウメの種子をせっせと運んで貯食する野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

前回の記事:▶ ウメの落果から種子を採る 

2024年7月下旬

シーン0:7/23・午前11:57・晴れ(@0:12〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
集めておいたウメ(白梅)の種子を餌箱に39個入れて、朽ちたスギ倒木の端に設置しました。 
果肉をきれいに取り除き、種子をしっかり乾燥させてあります。 

無人センサーカメラで餌箱を監視すると、昼行性のリスが来るかと期待したのに、来るのは夜行性の野ネズミ(ノネズミ)ばかりでした。

シーン1:7/24・午後21:45(@0:16〜) 
晩に野ネズミ(ノネズミ)が餌箱に来てくれました。 
給餌箱の中に入ってウメの種子を口に咥えると、右へ運んで行きます。 
これまで給餌したオニグルミの堅果よりも軽そうです。 
(実際の重さを測るべきでしたね。) 
倒木の右下で立ち止まり、種子をクルクルと回して持ち直しました。 

この日はもう餌箱に戻ってこなかったということは、ウメの種子を割って中身を味見したものの、気に入らなかったのかな? 
ここで気になるのは、毒の問題です。 
バラ科サクラ属植物の種子 (種皮の内部にある胚と胚乳からなる仁)には、種を守るために青酸配糖体であるアミグダリンが多く含まれています。 
梅干しを食べた後に種子を割って中に含まれる仁を食べるのが好きな人もいますが、食べ過ぎないように注意されたはずです。
野ネズミはウメの種子に含まれる青酸の毒性に気づいて忌避するのでしょうか? 


シーン2:7/25・午後22:01(@0:50〜) 
翌日の晩遅くになってようやく野ネズミが餌箱に戻ってきました。
(ただし、前夜と同一個体とは限りません。) 
前回よりも手際よくウメの種子を運び去りました。 
途中で立ち止まって種子をクルクルと回して持ち直す行動は前夜と同じです。 


シーン3:7/25・午後22:26(@1:19〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン4:7/25・午後22:28(@1:30〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
監視カメラの起動が遅れ、ウメの種子を咥えた野ネズミが倒木を右へ渡り終えるところでした。 
しばらくすると、左下の林床を野ネズミがうろついています。(@1:29〜) 
おそらく別個体ではなく、さっきの野ネズミがウメの種子を埋める場所を探索しているのでしょう。 


シーン5:7/25・午後22:29(@2:21〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
またもや監視カメラの起動が遅れ、野ネズミは倒木を右へ渡り終えるところでした。 
小雨がぱらついています。 


シーン6:7/25・午後22:32(@2:28〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン7:7/25・午後22:35(@2:39〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
野ネズミが倒木上でちょっと立ち止まって、種子を持ち直しました。 


シーン8:7/25・午後22:36(@2:46〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
林床に降りた野ネズミは、倒木の右奥のシダ群落の根元をウロチョロしているようです。 


シーン9:7/25・午後22:38(@2:59〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン10:7/25・午後22:40(@3:04〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン11:7/25・午後22:41(@3:12〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
林床を歩いて倒木の下まで来て、貯食する場所を探索しています。
地面を試掘したものの、残念ながら手前の茂みに隠れてしまい、実際の貯食シーンを見届けられませんでした。 


シーン12:7/25・午後22:46(@3:50〜) 
餌箱からウメの種子を搬出し、どこか林床に埋めたようです。 


シーン13:7/25・午後22:48(@4:05〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン14:7/25・午後22:49(@4:12〜) ◎
餌箱からウメの種子を搬出。 
埋める場所を変えたようで、右奥のシダ群落の奥をうろつく野ネズミの目が白く光っています。 


シーン15:7/25・午後22:50(@4:21〜) ◎
ようやく野ネズミが餌箱の中に入っている様子が撮れていました。
ウメの種子を咥えて右へ運んで行きます。 


シーン16:7/25・午後22:52(@4:28〜) ◎
餌箱からウメの種子を搬出。 
種子を咥えたまま倒木の下の林床を左へ向かい、草むらに姿を消しました。 


シーン17:7/25・午後22:54(@4:47〜)◎ 
今回初めて、野ネズミが倒木上の餌箱に入る瞬間が撮れていました。 
すぐにウメの種子を1個咥えて右へ運びます。 
しばらくすると、倒木を伝って右から走って戻り、巣箱に入りました。 
次の種子を選んで右へ搬出。 
倒木上で立ち止まり、種子を持ち直してから右へ向かいます。 
倒木の奥のシダ群落の根元をうろちょろしている野ネズミの白い目が光っています。 


シーン18:7/25・午後22:55(@5:28〜) ◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
近くの地面に埋めて隠す作業の効率が上がったらしく、すぐにまた右から倒木を駆け戻りました。 
餌箱に飛び込んだところで1分間の録画が終了。 
雨が降っても野ネズミは平気で貯食作業を続けています。 


シーン19:7/25・午後22:57(@5:46〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン20:7/25・午後23:00(@5:52〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン21:7/25・午後23:01(@5:57〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン22:7/25・午後23:04(@6:03〜)◎ 
餌箱の中に入って次に運ぶウメの種子を選ぶと、倒木を右へ駆け下りました。 
そのまま倒木の下の林床を左へ向かい、草むらに消えました。 


シーン23:7/25・午後23:06(@6:23〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
しばらくすると、倒木を右から走って戻り、餌箱の中に入りました。 
次の種子を選んで右へ。 


シーン24:7/25・午後23:08(@6:41〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
しばらくすると、奥の草むらから戻ってきた野ネズミが倒木を右から駆け上がり、餌箱の中に入りました。 
休むことなく次の種子を選んで右へ。 


シーン25:7/25・午後23:11(@7:08〜)◎ 
梅の種子を運んだまま倒木の下の林床を左へ向かい、草むらに消えました。 
左下から林床を右へ戻ってくる様子も撮れていました。 
右下隅から倒木に登り、左の餌箱に駆け戻ります。 
餌箱に飛び込んで次の種子を選び、右へ搬出。 


シーン26:7/25・午後23:14(@7:54〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
しばらくすると、倒木を右から戻ってきて餌箱に入りました。 


シーン27:7/25・午後23:17(@8:07〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
しばらくすると、右下隅から倒木を登ると、左へ走って餌箱に飛び込みました。 
すぐにまた次の種子を咥えて右へ運び出します。 


シーン28:7/25・午後23:24(@8:26〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 
奥の草むらで貯食場所を探しているようです。 


シーン29:7/25・午後23:26(@9:26〜) 
餌箱からウメの種子を搬出。 


シーン30:7/25・午後23:34(@9:34〜)◎ 
餌箱からウメの種子を搬出。 
そのまま倒木の下の林床を左へ向かい、草むらに消えました。 


【考察】 
野ネズミはウメの種子を見つけると、その場では食べずに、1個ずつせっせと運んであちこちに隠し、貯蔵するようです。(貯食行動)

ウメの種子に含まれるアミグダリンという青酸配糖体の毒に対して、野ネズミは耐性があるのでしょうか?
逆に植物側(ウメ)の立場になって考えると、種子散布を助けてくれる共生関係の野ネズミに対して毒を盛ることはしないはずです。
充分に熟した果実の種子であれば、毒性は失われているのかな?

 野ネズミが地中に埋めてくれた後に食べ忘れたウメの種子は、運が良ければ発芽するはずです。 
つまり、ウメの種子散布は貯食型の動物散布(※ 追記参照)であり、野ネズミと共生関係にあることが分かります。 
何年後かには、春になるとこの近くで梅の花が咲くでしょうか? 
たった39個の種子を給餌しただけでは、種子散布に成功する確率は限りなくゼロに近いでしょう。 
現場はスギ植林地の林床で、オニグルミの大木が隣にそびえ立ち、実生の光合成に必要な日照があまり多くありません。 
冬になると積雪量が多い豪雪地帯の山林ですから、ヒトが過保護な雪囲いもしないでウメの幼木が無事に育つのは至難の業です。 
そもそも実験に使ったウメの種子は、果肉を洗い落とした後にドライヤーで強制乾燥したので、熱で発芽能力が失われてしまったかもしれません。 


野ネズミはウメの種子をどのように食べるのでしょうか?
アカネズミの代表的なフィールドサインといえば、オニグルミの「2つ穴食痕」だ。両側の合わせ目上に2つの穴を空け、穴から中身をかき出して食べる。内部にはかき出した際についた門歯(切歯)のひっかき傷が残る。固い殻のある食べ物は共通してこの食べ方をするらしく、オニグルミだけではなく、サワグルミやウメの種子も同じような2つ穴食痕になる。(p132より引用)


謎の夜蛾は、ウメの種子には誘引されませんでした。 


※【追記】
ウメの種子散布は、被食型の動物散布がメインと考えられます。
熟した甘い果肉を目当てに動物がウメの果実(核果)を丸ごと飲み込み、消化されなかった種子が遠くに運ばれてから糞と一緒に排泄されるのです。
だとすれば、野ネズミはウメにとって種子捕食者でもあります。

現実の自然界はもっと複雑です。
たとえば、ウメの落果を食べたタヌキが溜め糞場で排泄した種子を野ネズミが持ち去って貯食するかもしれません。
この場合、野ネズミはウメの種子の二次散布者になります。
(重力散布が一次だとすると、タヌキが二次散布者、野ネズミは三次散布者になります。)


本当はウメの種子ではなく熟果をそのまま給餌するつもりでした。
ところが、その前にやった実験で、同じバラ科サクラ属のアンズではアミグダリンを嫌ってか落果を食べる野生動物がほとんどいなかったので、種子に切り替えたのです。




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