2021年8月中旬・午後18:00頃・くもり
誰かが農道にぶちまけた餌を食べに集まっているのか?と初めは思ったのですが、カラスはそれほど熱心には採食活動していませんでした。
(その後、現場検証をしても誰かが農道に餌を撒いた形跡はありませんでした。)
夕方なので、おそらく就塒前集合で時間を潰しているのでしょう。
各々がのんびり羽繕いしたり、採食したり、遊んだりしていました。
とにかく大群なので、どの個体の行動に注目すべきか目移りしてしまいます。
知能の高いカラスがあちこちで様々な行動を繰り広げ、見ていて飽きません。
例えば隣の個体に対他羽繕いしているペアもいました。
農道の右側にコンクリートの水門があり、その上に数羽のカラスが鈴なりに並んで止まっていました。
そのコンクリート水門に下の農道から飛び乗ろうと何度も挑戦している個体がいます。
初めは上手く飛び乗れずに、まるでコンクリート壁面に「飛び蹴り」をして遊んでいるように見えました。
他にもじゃれて追いかけ合ったり、遊びの行動が多いので、おそらく巣立った幼鳥や若鳥が多い群れではないか、という気がします。
動画を見直して初めて気づいたのですが、アオサギ(Ardea cinerea jouyi)の若鳥を数羽のカラスが執拗にからかって(いじめて)いました。
このアオサギにもっと注目してズームインすべきでした…。
アオサギも初めは田んぼや農道で平和に採食していたのでしょう。
しかしアオサギの背後からカラスが忍び寄ると、隙を見て尾羽をグイッと引っ張りました。
いたずら好きのカラスがアオサギをからかって遊んでいるようです。
不意をつかれたアオサギは身震いしたり、翼を大きく広げてカラスを威嚇したりしています。
しかし多勢に無勢で、とても敵いません。
アオサギはカラスの挑発に堪りかねて農道を右往左往しています。
特定の1羽がアオサギを繰り返しいじめているのではなく、ハシボソガラスもハシブトガラスもやっていました。
これはモビングの一種と呼べるのでしょうか。
アオサギは図体こそ大きいですけど、カラスを捕食したり何か脅威を与えるとは思えません。
それでもカラスはアオサギの存在が気に入らず、餌場から追い払おうとしているのかもしれません。
カラスの群れに執拗な嫌がらせを受けたアオサギは、おちおち採食する暇もありません。
警戒を強めたアオサギは、カラスが忍び寄ると振り返って向き直るようになりました。
まるで「だるまさんが転んだ」をして遊んでいるようです。
振り返ったアオサギに見つかったカラスは、慌てて飛び退いたり、白々しく農道で採食する振りをしたりしています。
しかし、悪童カラスは次のチャンスを虎視眈々と狙ってアオサギの横から背後に回り込もうとしています。
別のカラスがアオサギの注意を引いた瞬間に隙ができるのです。
ヒットアンドアウェイでアオサギの尾羽をつついたり引っ張ったりしています。
いかにもカラスの意地の悪さが現れていて、それもまたヒトと似た知性を感じさせます。
アオサギに嫌がらせしているのはカラス混群の中の少数の個体に限られ、大多数の個体はアオサギの周囲でまったり過ごしています。
何が原因でこのモビングが始まったのか、きっかけを見逃したのが残念です。
カラスの混群もアオサギも、車が手前の道を走り去っても、犬の散歩をするヒトが奥の道を通りかかっても、気にしませんでした。
動画では遠近感が分かりにくいのですが、画面の手前と奥で平行して左右に走る道は220m離れています。
その区間にカラスの混群が集まっているので、動画の見た目ほど密集している訳ではないのかもしれません。
農道の右側に見えるコンクリートの水門は、農道の中間地点にあります。
約50羽のカラスが前後約50mの範囲に集まっているようです。
ちなみに、手前の車道に沿って張られた電線にも少数のカラス(ハシボソガラスおよびハシブトガラス)が止まっていました。
私が目を離した隙に、アオサギ若鳥は居なくなっていました。
嫌になってどこかに飛び去ったのでしょう。
【追記】
中村純夫『謎のカラスを追う―頭骨とDNAが語るカラス10万年史』という本を読んでいたら面白い記述を見つけました。
この近年稀に見る名著の本筋から外れるのですが、引用させてもらいます。
水田の畦でヘビに対してカラスの親が大騒ぎをしていた。少し離れたところで幼鳥が見ている。親はヘビを挑発して、慎重に間合いを詰めてから尻尾を咬むことまでした。ヘビの危険さと間抜けさを教えているようである。更に半月後、今度は畑で大騒ぎ。ネコを挑発していた。少し離れたところで幼鳥たちが見学している。親はネコの尻尾を噛んだり、腰のあたりを突いたりした。(中略)カラスの親がやっていたことは「危険だから逃げろ」と教えるだけでなく、「このように間合いを取れば安全だ」とか、「このように攻撃したら撃退できる」と実地に教えているように見えた。危険なものにいかに対応するかを、わが身を危険にさらしながら現場で教えているらしい。(p208より引用)
アオサギはカラスにとって危険な相手ではありませんが、このような見方は新鮮でした。
私の動画では残念ながら少し遠くて、成鳥(親鳥)と幼鳥の区別ができません。
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