2019年7月上旬
民家の軒下で外壁の角にアシナガバチの初期巣が作られていました。
壁面に対して巣柄が横向き(水平)に取り付けられています。
巣盤が外に丸見えで、きわめて無防備な状態です。
その初期巣に、アシナガバチにとって最大の天敵であるヒメスズメバチ(Vespa ducalis)のワーカー♀が取り付いていました。
その周囲をフタモンアシナガバチ(Polistes chinensis antennalis)創設女王が飛び回っていました。
反撃を試みるというよりも、狼狽しているだけのようです。
毒針を使った死闘にはならず、すぐに逃げてしまいました。
ヒメスズメバチ♀は大顎を開き前脚で軽く払い除けただけで巣の主を追い払いました。
ヒメスズメバチ♀はフタモンアシナガバチの巣盤を調べ、卵や幼虫が入っている育房を大顎でバリバリと齧り始めました。
次に獲物を噛みほぐして体液をすすっていますが、意外に手間取っています。
他のスズメバチ類とは異なり、ヒメスズメバチは獲物で肉団子を作らずその場で体液だけをすすって肉は捨ててしまいます。
捕食後は口元や触角を手足で拭って身繕い。
巣から飛び立った直後、空中で巣の方へ向き直り、場所を記憶するために定位飛行を行いました。
ヒメスズメバチが飛び去った後に壊された巣盤の写真を撮ると、下部の育房に白い卵がわずかに残されていました。
苦労してアシナガバチの初期巣を襲った割に満腹になったとは思えないのですが、どうしてでしょう?
全滅を免れたものの、ヒメスズメバチ♀が定位飛行したということは、じきにまた襲撃に戻ってくるはずです。
あるいはヒメスズメバチは持続可能な狩りを行うために、餌資源であるアシナガバチの巣が全滅しないようにあえて手加減しているのだとしたら、面白いですね。
そのシナリオが成り立つためには、逃げたアシナガバチの女王が戻って来て営巣を続けてくれることが必要です。(それはあり得ないだろうと私は思い込んでいました。)
ヒメスズメバチ♀@フタモンアシナガバチ初期巣襲撃+卵/幼虫捕食 |
フタモンアシナガバチ初期巣@ヒメスズメバチ♀襲撃直後 |
フタモンアシナガバチ初期巣@ヒメスズメバチ♀襲撃直後 |
フタモンアシナガバチ初期巣@ヒメスズメバチ♀襲撃直後 |
フタモンアシナガバチ初期巣@ヒメスズメバチ♀襲撃直後・全景 |
今回の観察で、長年の謎だったミッシング・リンクがようやく繋がりました。
10年前にコアシナガバチの初期巣を破壊した犯人は、やはりヒメスズメバチだったようです。
▼関連記事(いずれも10年前に撮影)
・天敵に襲われたコアシナガバチの初期巣
・ヒメスズメバチ vs キアシナガバチ
8日後に現場を通りかかった際に調べると、驚いたことにフタモンアシナガバチ創設女王が初期巣に戻って来ていました。
巣盤にしがみついて休んでいます。
逃げた女王蜂はてっきり新天地で巣を作り直すと思っていたので、とても意外でした。
襲撃直後の写真と見比べると、ヒメスズメバチ♀に壊された育房を健気にも再建したようです。
巣盤のサイズは変わっていません。(育房の増設はしてはいない)
娘蜂(ワーカー♀)が羽化して巣の防衛力が上がるまでは、女王蜂が単独で巣を作り守らなければならないのです。
ただし多数のワーカーが居てもヒメスズメバチに対しては全く無力で、巣を襲われれば為す術がありません。
関連記事(3年後に現場の近所で撮影)▶ フタモンアシナガバチの巣を襲い老熟幼虫を捕食するヒメスズメバチ♀
フタモンアシナガバチ創設女王@初期巣:ヒメスズメバチ♀襲撃後再建 |
フタモンアシナガバチ創設女王@初期巣:ヒメスズメバチ♀襲撃後再建・全景 |
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