2022年8月上旬・午後15:40頃・くもり
里山の細い山道を下山中に、ジガバチの一種♀を発見。
こんな湿った薄暗いスギ林でジガバチと出会うのは珍しく思いました。
獲物として狩ったばかりの緑色の芋虫を地面に放置したまま、ジガバチは低空で辺りを飛び回っています。
巣穴の場所を探して偵察しているのでしょう。
スギの落ち葉や落枝が敷き詰められた林床を歩き回り、獲物の運搬ルートを探索しているようです。
サトジガバチ(Ammophila sabulosa nipponica)またはヤマジガバチ(Ammophila infesta)ですが、採集して標本を精査しないと見分けられません。
山地で見つけたからヤマジガバチ、とは必ずしも決めつけられないのだそうです。
近くを流れる沢の水音♪が聞こえます。
獲物を山道に放置したまま、ジガバチ♀はなかなか戻って来ません。
イモムシを置いた場所を忘れてしまったのか、あるいは横で突っ立っている私を警戒して近づけないのかな?
獲物の青虫は横倒しになったまま全く動きません。
ジガバチ♀が狩りの直後に毒針を刺して全身麻酔しているのです。(麻酔というよりも麻痺状態と呼ぶべきでしょう)
歩脚を数えると、胸脚3対、腹脚4対、尾脚1対というイモムシには基本的な作りでした。
体側に白線が走り、その上側が黄緑、下側が青緑に色分けされています。
おそらくオオエグリシャチホコ(Pterostoma gigantinum)の幼虫だと思うのですが、どうでしょうか?
私がイモムシを採寸しようか迷っていたら、ジガバチ♀が戻ってきました。
このときピンセットで獲物を保定して運搬を邪魔すれば、ジガバチ♀は毒針による麻酔手術を再演してくれるはずです。
しかしザックの奥からピンセットを取り出す暇がありませんでした。
私がじっと動かずに撮影を続けると、ようやくジガバチ♀が右から歩いて獲物に辿り着きました。
麻痺した獲物の仰向けにした胸部第3節(T3)付近を大顎で挟むとその場で静止しました。
獲物を噛みほぐして体液を啜る噛みほぐし(maceration)ではありません。
大顎を開いて獲物を離し、再び地面に置くと、行く先の偵察を再開。
振り向いたジガバチ♀が触角で獲物の頭部に触れて無事を確認しました。
触角を拭って身繕い。
獲物の背側から大顎で胸部第2節(T2)辺りを軽く噛んでも、全身麻痺した獲物は全く無反応でした。
ジガバチ♀が触角を前脚で拭って身繕い。
蜂が大顎で獲物の腹端付近を軽く噛みました。
仰向けにした獲物のT3付近を大顎で挟むと、遂に運び始めました。
それまでは長い休息時間だったのか、私を警戒していたのかな?
細長い獲物に跨がると、大顎で咥えた獲物の腹背を引きずりながら前に歩きます。
途中で獲物を咥える場所を少し下に持ち替えました。
自分の腹端よりもオオエグリシャチホコ幼虫の腹端が少し前に来るようにすると、重心のバランスが運びやすくなるようです。
ほぼ一直線に進んで山道を横断すると、路肩の崖を下ったところで行方を見失ってしまいました。
杉林の林床は薄暗いせいで、素早く走り去る蜂にオートフォーカスのピントが間に合いません。
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、最後ジガバチ♀は獲物を抱えたまま急斜面を飛び降りていました。
腹部を高々と持ち上げて前傾姿勢になり、羽ばたいて崖を飛び降りたのです。
営巣地を突き止められず、残念でした。
じっくり観察に徹すれば追跡できそうですが、私はどうしても撮影したくなってしまいます。
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