2020/12/06

ベニバナインゲンの花にしがみついたまま動かないクマバチの謎

 

2020年8月中旬・午前10:30頃・晴れ
▼前回の記事(12日前の撮影) 
ベニバナインゲンの花で採餌するクマバチ♀
民家の家庭菜園に咲いたベニバナインゲン(別名:花豆、紫花豆)の送粉者を調べようと定点観察に通っているのですが、この日は花が散りかけで訪花昆虫を見かけませんでした。 
唯一の訪花昆虫は、キムネクマバチXylocopa appendiculata circumvolans)が残り少なくなった赤い花にぶら下がって静止しているだけでした。 
どうしても顔が正面から見えなかったので、クマバチの性別を見分けられません。 
後脚の花粉籠に花粉団子も付けていません。 

死んでいるのかと思いきや、クマバチは腹式呼吸しており、右後脚もかすかに動きました。 
ズームインすると、右後脚の跗節がピクピク動いています。 
側面から撮ると、黒い口吻を伸ばしたまま無為に動かしていました。 
ベニバナインゲンに正当訪花で吸蜜中ではなく、謎の行動です。 
約5分間も粘って見守ったのに、花から飛び立つ気配が全くありません。 
「飛ばない」のではなく「飛べない」瀕死の状態なのでしょうか? 

農家の家庭菜園なので、農薬の使用をどうしても疑ってしまいます。 
例えばネオニコチノイドなど昆虫特異的に効く神経毒で体が麻痺しているのかな? 

一方、YouTubeのコメント欄で、疲れて寝ている(休んでいる)だけではないか?という指摘を受けました。
▼関連記事(1年前の撮影) 
エンジュの花にしがみついたまま死んだ?クマバチ
確かにクマバチの♀は過酷な採餌活動に従事していますし、雄蜂♂はホバリングで縄張りを張り♀を待ち受けていていますから、いずれにせよ疲労が激しそうです。
睡眠・休息説は私の念頭になかったので、次は一見死にかけのクマバチを見つけたら長期戦を覚悟して長撮り(微速度撮影)してみるつもりです。 
しばらく休んだらクマバチは目覚めて元気に飛び去るでしょうか? 
ただし、人様の庭や畑で見つけることが多いので、その場に三脚を立てて長時間の撮影をするのは気が引けます。 
今回も敷地の外の公道から望遠で狙いました。
とりあえず瀕死の(?)クマバチを採集して、飼育下で経過を見るのが簡単かもしれません。 

 食用のベニバナインゲンを私は食べたことがないのですが、毒を含んでいると知りました。
インゲンマメ同様に毒性のあるレクチンの一種フィトヘマグルチニン(PHA)を含むため、調理の際はよく火を通す必要がある。(wikipediaより引用)
植物性赤血球凝集素(フィトヘマグルチニン)は昆虫にも有害なのでしょうか? 
『岩波生物学辞典第4版』で「フィトヘマグルチニン」を調べると、
[英phytohemagglutinin 仏phytohmagglutinine] 広義には植物体に見出される細胞凝集活性をもつ物質.元来は植物から発見された赤血球凝集作用をもつ一物質に対して命名された物質.後に同様な作用物質が多く発見されるにおよんで,細胞凝集素のうち植物由来のものの総称(phytoagglutinin,plant agglutinin)あるいはレクチンと同義に拡大して用いられるようになり,紛らわしい.PHAと略称するときはインゲンマメ属のゴガツササゲ(Phaseolus vulgaris)やRicinus communisから抽出されるものをさす場合が多い.粗精製して蛋白質の多いものをPHA-P,糖蛋白質の多いものをPHA-Mという.赤血球を凝集し,T細胞,B細胞の分裂を促進する作用がある(→リンパ球幼若化現象).
次に『最新医学大辞典第2版』でも「フィトヘマグルチニン」を調べると、
ふぃとへまぐるちにん phytohemagglutinin〈PHA〉 《植物性血球凝集素》  インゲンマメPhaseolus vulgarisから抽出された赤血球凝集物質.白血球にPHAを加えて培養するとT細胞が増殖するので,T細胞マイトゲンと称せられる.PHA単独では純化されたT細胞は分裂・増殖しないが,共存する単球によってIL-2の産生やそのレセプター発現が増強されてT細胞が増殖する040. 
どうやら草食性の脊椎動物(いわゆる草食動物)に食害されないために溜め込んだ毒物のようです。 
脊椎動物と昆虫(無脊椎動物)とは赤血球も白血球もかなり違いますから、素人考えではおそらく昆虫に対する毒性は弱い気がします。 

念の為にしつこく文献検索してみると、インゲンに含まれるPHAがアブラムシに及ぼす毒性について研究している論文がヒットしました。 
ということは、ハナバチ類に対する毒性もゼロではないのかもしれません。 
とりあえず、花蜜や花粉に含まれるPHAの量を知りたいところです。 
ベニバナインゲンは虫媒花として進化してきた訳ですから、共生する送粉者が花蜜や花粉を食べたぐらいで中毒するような仕打ちをするはずがありません。

最後に、寿命を迎えただけという可能性も忘れてはいけません。
それにしては、この個体の翅の摩耗は少ない気がします。


関連記事 (同所で2年後にも撮影)▶ クマバチ♀がベニバナインゲンの花で休む猛暑の昼下がり

伸びたままの口吻に注目


【追記】
POINT図鑑『フェンスの植物―はい回る蔓たち』でベニバナインゲンを調べると、
中米原産で、(中略)標高がブナ帯より上の土地か夏も冷涼な土地でないと、花が咲いても実を結びにくい。(p155より引用)
撮影地は山形県のブナ帯よりも低いミズナラ帯よりも低い平地でした。
しかも夏は猛暑なのに、ベニバナインゲンに実がついていました。
当地でベニバナインゲンが本格的に栽培されていないということは、これでも収量が少ないのでしょうか?
それとも近年になって品種改良されたのかな?


以下の写真は同じ畑で8月上旬に撮ったベニバナインゲンの実です。

 

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