2019年7月中旬・午前4:55頃(日の出時刻は午前4:29)
池畔に並ぶ桜の木の下に早朝からハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)が集まって鳴き騒いでいます。
何事かと思って近づいてみると、カワラバト(=ドバト;Columba livia)の首無し死骸をハシブトガラスの群れが啄んでいました。
鳩の羽毛が辺りに散乱しています。
ハシブトガラス4羽の群れは成鳥と幼鳥が2羽ずつで、どうやら家族のようです。
1羽の成鳥αが丈夫な嘴で鳩の羽根を毟り、屍肉を力強く引きちぎって食べています。
口内の赤い幼鳥2羽がその横で必死に餌乞いしても、成鳥αは餌を独り占めして分け与えないのが意外でした。
独り占めしている成鳥αが、隣でしつこく餌乞いする幼鳥に対して嗄れ声で鳴き返しました。
喉袋の中にも鳩の肉を溜め込んでいるのに、欲張りな成鳥αはドバトの死骸を嘴で自分の近くに引き寄せました。
もしかしてこの群れは親子ではなく、血縁関係が無いのかな?
もう1羽の成鳥βはαの背後で大人しく順番待ちをしています。
お預けをくらっている個体がもし序列を無視して強引に割り込んで食べようとすると、一番強い成鳥αに鉄拳制裁を受けるのでしょう。(つつきの順位)
幼鳥が餌乞いで羽ばたくと、周囲に散乱していた鳩の羽根が舞い散ります。
うるさくせがむ幼鳥にようやく少しだけ肉を分け与えました(@1:50)。
ひと口もらった幼鳥は引き下がり、少しおとなしくなりました。
しかしもう1羽の幼鳥は餌乞いを続けています。
最後に成鳥αがよそ見をしている隙に幼鳥が肉片を盗み食いしました。
渋々ながらも幼鳥に給餌したということは、やはり親子だったようです。
巣立った幼鳥に親鳥がせっせと巣外給餌する時期が終わり、少しずつカラスの社会の掟を教えているのかもしれません。
私のフィールドでカラスの優占種と言えば圧倒的にハシボソガラスなのですけど、野鳥の死骸を食べているのはいつもハシブトガラスです。
未だ観察例が少ないので、これは偶々でしょうか?
ハシボソガラスはハシブトガラスよりも力では弱くて死骸に近づけないのですかね?(餌の占有行動)
▼関連記事(5年前の撮影)
七面鳥の死骸に群がり貪り食うハシブトガラス(野鳥)
動画には写っていませんが、惨劇が繰り広げられている手前の車道にはドバトが3羽、何事もなかったように路上採食していました。
この辺りには多数のドバトが暮らしてるのです。
撮影後に私が近寄ると、カラスはその場に死骸を残して逃げて行きました。
さて、ドバトを殺した犯人は誰でしょう?
切り落とされたドバトの生首は近くに見つかりませんでした。
寿命を迎えた個体なのかもしれませんが、断頭されている手口からすると、ドバトを襲って殺したのはハシブトガラスではなく、おそらく近くに生息するチゴハヤブサなど猛禽類の仕業だと思います。
サバンナでライオンが狩った獲物をハイエナの群れが奪い取るように、狩りの直後にカラスが群れでチゴハヤブサを取り囲んで追い払ったのではないかと想像しています。
私がもう少し早く現場に来ていれば狩りの瞬間を目撃できたのではないかと思うと残念でなりません。
(ハシブトガラスがドバトの生首を真っ先に食べてしまった可能性は?)
つづく→ドバトの死骸を分解する者たち
【追記】
カラスは屍肉食性だという先入観に私は囚われていましたが、柴田佳秀『うち、カラスいるんだけど来る? カラスの生態完全読本』によると、カラスは頻繁に生きた鳥を襲って食べているそうです。
鳥類の中でターゲットとなるのは主にドバト。いきなり背中に飛び乗って押さえ付けるのですが、ドバトが暴れると振り落とされてしまうため、狩りの成功率自体は高くありません。 (p22より引用)
【追記2】
カラス研究者の松原始『鳥類学者の目のツケドコロ』によると、
ハヤブサ科の鳥は鳥やネズミなどの獲物の首を噛んで、頚椎を破壊することができます。その後、きれいに首を切り落としてしまうにも、クチバシは使われます。稀に首のないハトの死骸が落ちていたりすることがありますが、刃物を使ったようにきれいに切れていたら、ハヤブサの仕業という可能性があります(カラスも首を落としますが、ハヤブサほど手際がよくありません)。 (電子書籍版より引用)
【追記3】
小松貴『昆虫学者はやめられない: 裏山の奇人、徘徊の記』によると、筆者はまさに捕食しようとする瞬間を目撃したことがあるそうです。
ドバトの多い都市部とその近郊では、ハシブトガラスがしばしば猛禽のように生きたハトを捕り押さえ、殺して食う例が観察される。(中略)野良猫がほとんどいないにもかかわらず、年に数回は上半身がごっそり齧り取られたハトの死骸を道端で見かける。ちょうど、そんな風にハトを捌こうとする瞬間に、至近で立ち会ったしまったのだ。(p21より引用)
0 件のコメント:
コメントを投稿