2023/01/09

ニホンイノシシによる泥汚れ?(2)獣道の下草

 

2022年8月下旬・午後14:00〜15:00頃・くもり 


里山で下草の生い茂るの林道を歩くと、あちこちに泥汚れが付着していて、それが白く乾いていました。 
草だけでなく、幼木の枝葉、落枝などにも白い泥汚れが点々と残っているのです。 
手の爪でこそげ落としてみると(@1:54〜) 、鳥の糞が葉に落ちたのではなく、泥が白く乾いたものと分かります。

土砂降りの大雨による泥の跳ね返りではあり得ない高さ(私の膝下ぐらい)まで白く汚れていました。
雨の跳ね返りなら、葉の裏面が汚れているはずです。 

林業や登山客の車が通り、わだちから泥水を跳ね上げたという可能性も考えました。 
しかし林道入り口を塞いでいる巨大な倒木が放置されているせいで、車は通れないはずです。 
また、林道上には雨水が溜まった轍はありません。 

ニホンイノシシSus scrofa leucomystax)は泥浴びが大好きです。 
ヌタ場で転げ回った直後に林道を通過すると、泥まみれになった体から泥水が滴り落ちたり、下草と体が擦れて泥汚れが移ったりするのでしょう。 
まるで誰かがバケツ一杯の白ペンキを盛大にぶちまけたような地点もありました。 
獣道で立ち止まったイノシシが身震いして、泥を振り落とした(撒き散らした)のだろうと想像しました。 
もしかして、イノシシは縄張り内を意図的に泥でマーキングしながら歩いているのでしょうか? 
何頭のイノシシが往来した結果なのか、気になります。 
トレイルカメラを設置したら証拠映像が撮れるかな? 
熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』によれば、
イノシシのケモノ道は、腰をかがんで探すようなケモノ道とは違い、(中略)踏み分けられた道になる。近くに泥場があり、ケモノ道周辺に生えた植物の下のほうに泥がついていたら、イノシシ道と考えて間違いないだろう。(p82より引用)

泥汚れが付いた植物の名前を映像から分かる限り列挙してみました。 
現場は東北地方日本海側の多雪地帯で、ブナ帯よりも標高が低いミズナラ帯です。
この辺りの植生(植物相・フローラ)が大体分かるはずです。
葉の食痕は草食獣によるものではなく、虫食い穴だと思います。 

幼木:クロモジ、エゾユズリハ?、キイチゴ類?、コナラ、ミズナラ、クロモジ、ハウチワカエデ、ガマズミ?(葉が対生)、イヌツゲ(常緑、葉が互生)、タニウツギ、ウリハダカエデ、リョウブ、イロハカエデ、スギなど 
下草:笹類、オカトラノオ(実がなっている)、イネ科の草、キンミズヒキ、トリアシショウマ、アザミ類、ススキ、オオバコ、ミゾソバなど 
蔓植物:ミツバアケビ、フジなど 
羊歯:シシガシラなど 

笹やシダ植物について勉強不足なのはさておき、羽状複葉で対生の葉(鋸歯なしの全縁)がついた幼木の名前が分かりません。(@0:55、4:55、5:33、6:15、7:02〜) 
フィールドでよく見かける植物なので、この機会にどなたか教えてもらえると助かります。 
イヌザンショウ?(互生なので除外)、ハゼノキ?(東北地方の雪国には分布しないはず)。
もしかすると幼木ではなくて草本なのかな? 
蔓植物のフジの葉ですかね?

林道上に点々と残る泥汚れを辿ると、ヌタ場らしい水溜りに辿り着きます。(@5:00〜) 
真夏で水溜りの水が干上がりかけていて、ただの泥濘に見えます。 
ここの泥に有蹄類(カモシカまたはイノシシ)の足跡が残っているのをよく見かけます。 
その横の法面(斜面)を少し登るとカラマツの大木がそびえ立ち(@5:50〜)、その幹の根元付近にもイノシシが泥汚れを擦り付けた跡が残っていました。(前回の記事参照) 

白い泥汚れのついたミゾソバの群落でスジアカハシリグモ♀(Dolomedes silvicola)を見つけました。(@6:30〜)
茶色の赤味が強い個体です。 
カメラのレンズを正面から近づけると、歩脚を振り上げて威嚇してきました。 
よく見ると、右の歩脚が2本、左が3本しかありません。(8本足のうち3本の欠損) 
天敵に襲われた際に自切して逃げ延びたのでしょう。 
周囲の植物に白い糸を粗く張り巡らしてあります。 
ミゾソバ下部の葉裏に丸くて白っぽい卵嚢らしき物体がちらっと見えました。
しかし残念ながら、撮影中の私は卵嚢の存在に気づきませんでした。 
目の前で指を振り立てると、スジアカハシリグモ♀は葉裏に避難しました。 
卵嚢をガードしていたのかもしれません。




ミゾソバ
タニウツギ+ウリハダカエデ幼木
リョウブ幼木
クロモジ幼木
スギ幼木+落枝
トリアシショウマ?
イヌツゲ幼木
ミツバアケビ

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