2021年9月上旬・午前11:50頃・くもり
里山の尾根道で見つけたミズナラの樹液酒場で3種類のスズメバチが興味深い占有行動を繰り広げていました。
登場するのはチャイロスズメバチ(Vespa dybowskii)、ヒメスズメバチ(Vespa ducalis pulchra)、およびオオスズメバチ(Vespa mandarinia japonica)のいずれもワーカー♀です。
結局、樹液酒場を独り占めするのは、最強のオオスズメバチ♀です。
オオスズメバチ♀が樹液を吸汁したり樹皮を齧って樹液酒場を拡張したりしている間、他の種類のスズメバチは怖くて近づけません。
遠慮がちに少し離れて順番待ちしています。
ヒメスズメバチの体長はオオスズメバチと遜色ありませんが、体の太さで負けます。
ヒメスズメバチがオオスズメバチに戦いを挑むことはありませんでした。
もう1匹のヒメスズメバチ♀が飛来して2:1になっても、オオスズメバチ♀は樹液酒場を譲りませんでした。(@0:38)
それどころか、2匹のヒメスズメバチ♀間で小競り合いがあったのが興味深く思いました。(@0:52)
もしかすると、別のコロニー出身のヒメスズメバチ♀なのかもしれません。
そこへ2匹目のオオスズメバチ♀が飛来しました。
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。(@1:00)
直後に等倍速でリプレイ。
オオスズメバチ♀は樹液酒場の横で待機していたヒメスズメバチ♀にいきなり飛びかかり、追い払いました。
一瞬の攻撃の間に毒針で刺す素振りまでしたので驚きました。
不意をつかれたヒメスズメバチ♀は幹から転げ落ちるように逃げて行きました。
ライバルを1匹減らしたオオスズメバチ♀は次に、先客のオオスズメバチ♀に狙いを定めると果敢に飛びかかりました。
やられた個体は翅を震わせて威嚇しながら、腹部をねじって相手に腹端の毒針を誇示しました。
その間、チャイロスズメバチ♀は慌てて幹を登って物騒な戦場から離脱します。
飛来したオオスズメバチ♀は幹に着陸すると先客と触角で挨拶し、同じコロニー出身と互いに認識したようです。
先客の個体と口づけを交わしました。(栄養交換)
2匹のオオスズメバチ♀に樹液酒場を専有されると、ヒメスズメバチ♀やチャイロスズメバチ♀はますます近づけなくなります。
オオスズメバチ♀は頑丈な大顎で樹皮を齧り取ると、その欠片を口から捨てました。
チャイロスズメバチ♀が飛来したものの、オオスズメバチ♀に睨まれただけで勝負あり。
幹に着陸することなく慌てて飛び去りました。(@2:27)
オオスズメバチ♀は身繕いしながら振り返ってヒメスズメバチに睨みを効かせています(牽制)。
スズメバチ異種間で生まれつきの順位が既に決まっているようで、無駄に争うことはほとんどありませんでした。
岩田久二雄『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』p318 によると、
樹液の出る場所での、席次争いで強いものから弱いものへの順列は、オオ>チャイロ>コガタ>モン>ヒメ(スズメバチ)
今回、チャイロスズメバチとヒメスズメバチの間での力関係を観察できなかったのは残念です。
実はこの樹液酒場を見つけたときには初め、アカタテハ(Vanessa indica)が吸汁していました。(@3:07〜)
その翅の羽ばたきで樹液酒場の存在に気づいたのです。
完全に逆光のアングルだったので、動画編集時に逆光補正しました。
それでも他人に披露するにはいまいちの映像なので、前後を入れ替えて最後に持ってきました。
(YouTubeでは視聴者が途中で離脱しないような工夫が必要です。)
スズメバチ類は未だチャイロスズメバチ♀とヒメスズメバチ♀しか来ておらず(1匹ずつ)、比較的平和でした。
チャイロスズメバチ♀とヒメスズメバチ♀は同じ樹液スポットの反対側から吸汁しています。
アカタテハは翅を開閉しながら吸汁していたものの、チャイロスズメバチ♀との占有行動に負けてミズナラ樹液酒場から飛び去りました。
最後に私がカメラをズームアウトしかけたら、オオスズメバチ♀とヒメスズメバチ♀が飛来しました。
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@4:06〜)
他にはハエも樹液に来ていたものの、私には種類が見分けられません。
ハエはいつでも素早く飛んで逃げられる自信があるのか、強い昆虫に混じって大胆に吸汁しています。
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