2016/01/05

境界標に作った泥巣を閉鎖するヒメクモバチ♀b



2015年9月下旬・午後13:00〜13:10

境界標に営巣したヒメクモバチの定点観察#1


里山の参道沿いに県の境界標が地面に何本も打ち込まれています。
コンクリートで出来た境界標の東側面に刻印された「山形県」という文字の窪みに泥巣を作っている黒いハチを見つけました。
同定のため蜂を採集すべきか迷いましたが、造巣行動をよく観察すると腹部を屈曲して腹端をコテのように使って巣材の泥玉を塗り伸ばしています。
この特徴的な行動からヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)だろうと判りました。
この辺りでは普通種ですけど、これまでに蜂を個体識別して定点観察したり飼育したりと手を替え品を替え何年もしつこく調べ続け、私と付き合いの長いクモバチです。

今回見つけた営巣地は標高360m地点で、周囲の環境はスギと雑木林の混合林。
コンクリート製の境界標を採寸すると、12.5×12.5×40cm。
側面に刻印された「山」の字の第1、3画の縦線(溝)の長さと幅は各々5cm、1.5cm。

おそらく営巣末期で、クモを貯食した育房群の全体に泥を厚塗りして埋めようとしているようです。(泥巣閉鎖)
泥玉を咥えた蜂が境界標の下から登って来ました。
口に咥えた泥玉に水を吐き戻しつつ噛み解しながら泥巣上を歩き回り、触角で泥巣表面を探りながら巣材を付け足す場所を慎重に選定しています。
腹端を叩きつけて巣材を塗りつけると、触角を一拭いして軽く身繕い。

付け足したばかりの新鮮な泥は黒っぽく点のように見えますが、乾くと灰土色になります。
ヒメクモバチ♀は休むまもなく境界標を歩いて下に降り、最後は地面に飛び降りたところで見失いました。

巣材は一体どこで集めてくるのでしょう?


つづく→#2:泥巣を閉鎖するヒメクモバチ♀b【10倍速映像】


泥巣@境界標b・全景
隣の同形の境界標cの裏面

実は同じ参道沿いに数メートル離れたところにもう一本の境界標があり、そこにも別個体のヒメクモバチ♀aが同様に営巣していました。(映像なし)
先に見つけた♀aは泥巣を守るように静止してばかりで殆ど離れないので面白くありません。
活発に造巣している個体♀bに注目して撮影することにしました。
2匹のヒメクモバチ♀はおそらく同じ泥巣から羽化した姉妹ではないかと想像しました。
巣材の盗掘や労働寄生など互いに交流があれば面白そうです。


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