2013年9月上旬
地中に営巣するヒメスズメバチ(Vespa ducalis pulchra)を定点観察するため、6日ぶりに里山を登りました。
苔むした林道の真ん中に開いた巣口を写真に撮って前回と比べてみても変化なく、入り口の拡張工事は行われていないようです。
外被や巣盤の本体は巣坑の奥深くにあるようで、外からは見えません。
また、巣口を守る門衛という役割の蜂は居ないようです。
今回は巣穴の真横にカメラを置いて、出入りする蜂の飛翔シーンを側面からハイスピード動画(240-fps)に撮ってみました。
前回、上から見下ろすように撮ったときは当然ヒメスズメバチの背側しか見えず、帰巣する蜂の口元に巣材や獲物の肉団子が確認できませんでした。
その反省から今回は側面から狙うことにしたのです。
結果は残念ながら帰巣する蜂はいつも空荷でした。
巣を拡張する時期は過ぎていると考えれば、巣材を搬入しないことは理解できます。
肉団子を搬入しない点はどうでしょう?
この時期は餌が不足するため、狩りに出かけても不調に終わり手ぶらで帰って来るのでしょうか。
本種はアシナガバチの幼虫や蛹の体液を吸って帰るらしい※ので、他のスズメバチ類とは異なり肉団子の形で幼虫に給餌しないようです。
※ 関連記事→「ヒメスズメバチvsキアシナガバチ」
長時間観察していると、本コロニーのワーカー♀は少なくとも6匹居ることが分かりました。
続けざまに帰巣する、あるいは続けざまに出巣する蜂を数えることで判明。
本などで得た知識では巣口は一つの筈ですけど、もし私の気づかない離れた場所に別の出入り口があったら、この推定はご破算になります。
正確に数えるために蜂を片端から捕獲して個体標識しようか迷ったのですが、なるべく介入しないことに決めました。
このときは後日、コロニーが解散したら地中の巣を発掘するつもりでした。
蜂を麻酔するための花火をこの巣口に突っ込んでみれば、もし秘密の出入り口があるとすればそこからも煙が立ち昇る筈です。
これも思っただけで、計画倒れに終わりました。
姉妹のワーカー♀が大体いつも連続して帰巣することも不思議です。
外役では仲間と行動を共にしているのでしょうか?
しかし私の知る限り、ヒメスズメバチはたとえ豊富な狩場(アシナガバチの巣)を見つけても仲間を呼び寄せたりしない筈です。
関連記事:「キアシナガバチの巣を襲うヒメスズメバチの個体標識」巣内の幼虫から栄養交換で得たエネルギーが切れて空腹になったら帰巣すると考えれば、外で飛び回る外役の時間はカラータイマーのように決まっているのかもしれません。
それで結果的に帰巣のタイミングも揃ってしまうのでしょうか。
飛翔シーンをスローモーションで見ると、アシナガバチとは異なり脚を体に引き寄せて飛んでいます。
なるべく体型を流線形にして空気抵抗を減らしているようです。
余談ですが、地面を徘徊するアリが決して巣坑に侵入しない点が興味深く思いました。
ヒメスズメバチの匂いを怖がって忌避しているのでしょうか?
雨が降っても巣坑は浸水しないのかな?
排水の工夫が施されているのかどうか、興味があります。
もしかすると、大雨が降り始めたら巣口を中から塞ぐのだろうか。
蜂を撮影しながら、こうした多くの疑問が気になりずっと考えていました。
つづく
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