2023年7月上旬・午後14:00頃・晴れ
里山のスギ林道でホンドタヌキ(Nyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場sを定点観察しています。
前年(2022年)にはトレイルカメラを設置して監視したのですが、今季はカメラの台数が足りず、他所に回しています。
この日は比較的新鮮な糞が残されていました。
未消化の種子が糞にたくさん含まれています。
この時期のタヌキはヤマザクラやウワミズザクラの果実を食べたのではないかと予想しているのですけど、いつか真面目に糞分析をしないといけません。
甲虫ではクロボシヒラタシデムシ(Oiceoptoma nigropunctatum)の成虫、サビハネカクシ(Ontholestes gracilis)および謎の糞虫(種名不詳)が集まっていました。
複数いたサビハネカクシの中で一匹に注目してみましょう。
獣糞から吸汁しているキンバエ類を追い回すものの、ハエは素早く飛んで逃げてしまいます。
サビハネカクシが狙うのはハエ類だけで、硬い鞘翅で身を守る甲虫のクロボシヒラタシデムシを襲うことはありません。
失敗続きの狩りを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
最初の例ではハエに襲いかかるのではなく、なぜか尻尾を振ってハエを追い払っていました。
微小なアリ(種名不詳)にも襲いかかったものの、小さ過ぎて逃げられました。(邪魔なアリを狩場から追い払ったのかも知れません。)
しばらくすると、サビハネカクシは狩りを諦めて糞塊の縁の下に潜り込みました。
次は何を撮ろうかと私が目移りしている間に、別個体のサビハネカクシが溜め糞上で狩りに成功しました!
1/5倍速のスローモーションでリプレイしてみると、待ち伏せ猟ではなく、キンバエの斜め後ろから忍び寄り、襲いかかって仕留めていました。
油断していたキンバエは激しく羽ばたいて逃げようとするものの、サビハネカクシは獲物の左翅の根元付近にしっかり噛み付いていました。
溜め糞場で捕食者による殺戮が行われても、周囲の食糞性昆虫たちは全く無関心でした。
胸部を噛み砕かれた獲物がおとなしくなると(絶命)、サビハネカクシは急に方向転換して、獲物を咥えたまま走り出しました。
ライバル(捕食者)の多い溜め糞場では獲物を横取りされるリスクがありますから、急いで離脱したのでしょう。
ときどき立ち止まると、少し上に曲げた尻尾を嬉しそうにグルグル回しています。
スギ林床の落葉落枝をどんどん乗り越えて進んで行きます。
ようやくスギ落ち葉の上で落ち着くと、落ち着いて捕食を開始。
翅を広げたまま動かなくなったキンバエを仰向けにして胸部を食べています。
肉食性のハネカクシは、獲物の体液を吸汁するのではなく、固形物として肉を噛み砕いて飲み込むのだと思うのですけど、じっくり観察できませんでした。
タヌキの溜め糞に集まる他の虫に気を取られて私がちょっと目を離したら見失ってしまったたのです。
スギ落ち葉の上で静止すると、サビハネカクシは保護色で全く目立ちません。
完食するまで見届けるべきでしたね。
サビハネカクシが狩りに成功して獲物を捕食したシーンは、これが初見です。
念願だった狩りのシーンがようやく撮れて感無量。
狩りの直後に離れたところまで獲物を持ち去るとは知りませんでした。
貯食したり求愛給餌したら面白いのにな…と期待したのですけど、獲物を自分で食べました。
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