2022年12月上旬・午後13:10頃・くもり
雑木林が広がる山林の斜面に設置したトレイルカメラの電池を交換しに来ました。
作業する前にザック内の荷物を広げて林床に置いておいたら、いつの間にか微小の黒い虫が大量によじ登っていました。
こんなことは初めてです。
ギョッとしましたが、よく見るとピンピン跳んでいるのでトビムシの仲間と判明。
昆虫よりも原始的な節足動物です。
ムラサキトビムシ(Hypogastrura communis)またはその仲間ですかね?
袋に固着している訳ではなく、バサバサと軽く振ったり払ったりすれば簡単に落ちてくれます。
着替えを入れた黄色い防水袋の表面を夥しい数のムラサキトビムシ?が這い回っています。
採寸のために何か大きさの比較対象物を並べて置くべきでしたね。
ときどき自発的にピンと跳ねて居なくなります。
腹部第4節には2又になった棒状の器官がある。この器官は叉状器(または跳躍器)と呼ばれ、普段は腹部下面に寄せられ、腹面にある保持器によって引っかけられている。捕食者などに遭遇した際にはこの叉状器が筋肉の収縮により後方へと勢いよく振り出され、大きく跳躍して逃げることができる。(wikipedia:トビムシの形態より引用)
マクロレンズを装着して接写してみましょう。
退色は紫がかっていました。
6本足で歩行するのは昆虫と同じです。
トビムシが互いに出会っても何も起こりません。(片方が立ち止まって回避?)
仲間と出会っても驚いてジャンプする訳ではないようです。
白いビニール袋の上にもムラサキトビムシ?の大群が群がっていました。
群れ全体として一方向に移動しているように見えたのですが、何を目指しているのか不明です。
群れとは逆行する天の邪鬼の個体も居るからです。
突然画面から消えるのは、腹面にある跳躍器を使ってジャンプしたからです。
まるでポップコーンのようです。
裏返しに着地しても、自力ですぐに起き上がります。
山登りしてきた汗が引くと一気に体が冷え、指先がかじかんでじっくり接写できませんでした。
横着しないで三脚を使うべきでした。
特に、トビムシが跳躍器を使って跳ぶ様子をハイスピード動画で接写したかったのですが、曇天の光量不足で諦めました。
今思えばトビムシを採集して持ち帰れば、室内の明るい照明の下で跳躍シーンをハイスピード動画に撮れましたね。
現場の山中ではとにかく寒くて、そこまで頭が回りませんでした。
しかし仮にトビムシの大群を採集したとして、下山中にどうしても激しく揺れますから採集容器の中でピンピン跳ねて消耗してしまうのではないか?と心配です。
この日は山中でハエ1匹も飛んでおらず、見かけた虫はムラサキトビムシ?だけでした。
この日に限って一体どうしてビニール袋にトビムシが群がったのでしょうか?
ザックから出した荷物が私の体温でほんのり暖かく、その熱源にトビムシが誘引されたのでしょうか?
それとも私の着替えから発する汗の匂いが気に入ったのかな?
あるいは、たまたま私が荷物を置いた落葉の下でキノコを食べていたのかもしれません。
雪が積もる前に集団で越冬する安全な場所を探していたのかな?(トビムシの越冬態は成虫?)
それとも、たまたまこの日は明るい原色の袋を置いたので目立ちましたが、これまでも迷彩系の地味な服や荷物を林床に無造作に置いて付着したトビムシに気づかなかっただけかもしれません。
後日、別件の調べ物で相良直彦『きのこと動物』という名著を読んでいたら、第2章「昆虫ときのこ」第6節に「トビムシの菌食」が取り上げられていました。
ふつう(トビムシ:しぐま註)は落葉落枝層の中で、朽ちた落葉落枝と菌糸とを主食としている。(p55より引用)図18に「きのこにつくムラサキトビムシのなかま」と題した細密画も掲載されています。
ムラサキトビムシはメジャーな普通種なのでしょう。
私もこれからはキノコに群がるトビムシについて注目してみることにします。
高名な昆虫学者である丸山宗利氏の著作のひとつに『アリの巣をめぐる冒険―未踏の調査地は足下に』があるのですが、なにより副題がとても秀逸で感銘を受けました(共感)。
近年は野山に出かけても出会える昆虫の数が激減していて(大絶滅が進行中?)退屈でつまらないなーと思っていたのですが、土壌生物の世界は食わず嫌いで全く手つかずなのでした。
トビムシに限っても予備知識がほとんど無いので、これから少しずつ勉強しないといけません。
遠方の原生林にわざわざ遠征しなくても身近な裏山におそろしく広大なフロンティアが広がっていて、生態系の全貌を謎解きする道のりを思うと気が遠くなります。
ネタ切れの心配が無いのは嬉しい悲鳴です。
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