2021/04/16

コガラがヤマガラの貯食物を横取り?(野鳥)

 

2020年11月下旬・午後12:20頃・くもり

平地の池を囲む雑木林でカラ類の混群を観察していると、コガラPoecile montanus)も苔むした柳の幹に止まり、樹皮や苔をつついていました。 
樹皮の下などで越冬している虫を探して食べるつもりなのでしょうか? 

遂にコガラが樹皮の隙間から何か丸い粒状の物を見つけ出して持ち去りました(@1:57)。
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧ください。 
その後に等倍速でリプレイ。 
餌を咥えたまま下に飛び降りました。 
これは先程、ヤマガラが貯食していた(あるいは食べていた)木の実とそっくりです。
前回の記事:▶ 木の実を樹皮の下に貯食するヤマガラ(野鳥)
ひょっとすると、ヤマガラが苦労して隠した木の実をコガラが探してこっそり横取りしているのかもしれない、と思いつきました。 
だとすればコガラの行動は労働寄生(盗み寄生)ということになります。 

案の定、コガラがヤマガラに猛スピードで追いかけられているシーン(混群内での小競り合い) がたまたま撮れました。(@0:33)
私の勝手な想像ですけど、貯食したばかりの木の実をコガラが盗み取ろうとしていることに気づいたヤマガラが怒って襲いかかったのかもしれません。 
慌てたコガラは華麗な三角跳びで逃げて行きました。 
激しい大喧嘩にはならず、ヤマガラの追跡をまいたコガラは何食わぬ顔で探餌行動を続けています。 

混群としてヤマガラと行動を共にしている他のカラ類は、ヤマガラがせっかく苦労して幹の割れ目などに隠した木の実を探し出して隙あらば横取り(盗み食い)しようとしているのでしょうか?
ヤマガラが木の実を頻繁に隠し直す理由もそれで説明できます。 
互いにメリットがあるからこそ異種のカラ類が混群を形成しているはずですけど、ヤマガラは泥棒につきまとわれて迷惑しているのかもしれません。 
仲良く共生しているイメージがある混群も、その実態は殺伐とした寄合所帯なのかもしれません。
しかし資料によると、コガラも貯食することが報告されているそうです。(『エソロジカル・エッセイ 無名のものたちの世界IV』p10より) 
だとすれば、私の妄想はコガラにとって濡れ衣(冤罪)になります。 
コガラが自分で貯食した木の実を自分で食べたり、隠し場所を変更したりしていただけかもしれません。 
決定的な証拠映像が撮れるまでは、個人的な仮説として頭の片隅で温めておきます。 

※ カラ混群の鳴き声を聞き取れるように動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。



【追記】
ピッキオ『鳥のおもしろ私生活』でコガラの習性を調べる
と、
彼らが雪山に残れる秘訣は、秋のうちからの食糧の貯蔵である。(中略)10月に採った食物の9割近くはたくわえに回すという。樹皮のすき間などに種子を押し込んで冬への備えとするのだ。しかも、場所が気に入らないのか、他人にみつかりたくないのか、せっかく隠した食物の移しかえを頻繁に行う。
アザミ類やヨモギ類など、草の種子をたくさん食べたりたくわえたりするのも、カラ類の中ではコガラだけである。(p92〜93より引用)



【追記2】 

上田恵介『鳥はなぜ集まる?―群れの行動生態学』という本で混群の意味を考察した第12〜13章を読み返すと、昆虫食の側面からカラ混群を論じていました。

・混群が形成される森林環境では、昆虫の種類が豊富で、一種当たりの数が少なく、広い範囲に分散しています。(p150より引用)

・混群をつくるカラ類のくちばしはよく見るとさまざまな形をしている。(p151より)

・混群をつくるカラたちで採食方法はかなり異なっています。ということは捕らえる虫の種類も種によって異なるということです。

・カラ類では採餌の空間も異なります。(p152より)

・混群をつくる鳥たちはエサをめぐって、生存にかかわるような激しい競争を繰り広げる必要がありません。(といっても、これは結果であり、過去において厳しい競争があったからこそ、多様な昆虫食の鳥が進化したと考えることもできます。)それなら争いに無駄なエネルギーを浪費するより、共同行動を発達させた方が有利です。昆虫食の鳥で混群形成という生活手段が進化してきたのは、森林の昆虫資源を有効に開発・利用するひとつの必然だったのだと思われます。(p153−154より引用)

ニッチを分けて共存しているという教科書通りの解説で一応納得するのですが、木の実を貯食する行動との関わりについては全く触れられていませんでした。

嘴の構造上、ヤマガラしか割れない木の実を貯食するならともかく、別種のカラ類でも食べやすい小さな木の実を貯食すると盗まれやすいはずです。

冬の森で樹皮をつついたり苔をめくったりして餌(越冬昆虫)を探す方法も素人目にはカラ類ではほぼ共通して見えます。

誰かが貯食した木の実を偶然見つけたら喜んで食べてしまうでしょう。

特に自ら貯食する習性のある種類の鳥は、木の実をどこに隠しやすいか熟知しているはずです。

つまり貯食・種子食という面ではカラ類の種間でニッチが充分に別れておらず競争が生じてしまう(混群のデメリット)気がします。


・多くの種がいりまじって行動している混群の中でも、カラたちはそれぞれの種ごとにまとまって、種群として行動しています。(同書p137より引用)

・混群のメンバーはいつも仲よくしているわけではありません。時には争いもあります。(p138より)

・カラ類の混群でも構成メンバーは折あらばと他のメンバーの隙を狙っているといえます。(p139より)

種によって独自の隠し場所あるいは隠蔽法を開拓するように、これから行動が進化するかもしれません。


 

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