平地の池を囲む雑木林でカラ類の混群を観察していると、コガラ(Poecile montanus)も苔むした柳の幹に止まり、樹皮や苔をつついていました。
前回の記事:▶ 木の実を樹皮の下に貯食するヤマガラ(野鳥)ひょっとすると、ヤマガラが苦労して隠した木の実をコガラが探してこっそり横取りしているのかもしれない、と思いつきました。
彼らが雪山に残れる秘訣は、秋のうちからの食糧の貯蔵である。(中略)10月に採った食物の9割近くはたくわえに回すという。樹皮のすき間などに種子を押し込んで冬への備えとするのだ。しかも、場所が気に入らないのか、他人にみつかりたくないのか、せっかく隠した食物の移しかえを頻繁に行う。アザミ類やヨモギ類など、草の種子をたくさん食べたりたくわえたりするのも、カラ類の中ではコガラだけである。(p92〜93より引用)
【追記2】
上田恵介『鳥はなぜ集まる?―群れの行動生態学』という本で混群の意味を考察した第12〜13章を読み返すと、昆虫食の側面からカラ混群を論じていました。
・混群が形成される森林環境では、昆虫の種類が豊富で、一種当たりの数が少なく、広い範囲に分散しています。(p150より引用)
・混群をつくるカラ類のくちばしはよく見るとさまざまな形をしている。(p151より)
・混群をつくるカラたちで採食方法はかなり異なっています。ということは捕らえる虫の種類も種によって異なるということです。
・カラ類では採餌の空間も異なります。(p152より)
・混群をつくる鳥たちはエサをめぐって、生存にかかわるような激しい競争を繰り広げる必要がありません。(といっても、これは結果であり、過去において厳しい競争があったからこそ、多様な昆虫食の鳥が進化したと考えることもできます。)それなら争いに無駄なエネルギーを浪費するより、共同行動を発達させた方が有利です。昆虫食の鳥で混群形成という生活手段が進化してきたのは、森林の昆虫資源を有効に開発・利用するひとつの必然だったのだと思われます。(p153−154より引用)
ニッチを分けて共存しているという教科書通りの解説で一応納得するのですが、木の実を貯食する行動との関わりについては全く触れられていませんでした。
嘴の構造上、ヤマガラしか割れない木の実を貯食するならともかく、別種のカラ類でも食べやすい小さな木の実を貯食すると盗まれやすいはずです。
冬の森で樹皮をつついたり苔をめくったりして餌(越冬昆虫)を探す方法も素人目にはカラ類ではほぼ共通して見えます。
誰かが貯食した木の実を偶然見つけたら喜んで食べてしまうでしょう。
特に自ら貯食する習性のある種類の鳥は、木の実をどこに隠しやすいか熟知しているはずです。
つまり貯食・種子食という面ではカラ類の種間でニッチが充分に別れておらず競争が生じてしまう(混群のデメリット)気がします。
・多くの種がいりまじって行動している混群の中でも、カラたちはそれぞれの種ごとにまとまって、種群として行動しています。(同書p137より引用)
・混群のメンバーはいつも仲よくしているわけではありません。時には争いもあります。(p138より)
・カラ類の混群でも構成メンバーは折あらばと他のメンバーの隙を狙っているといえます。(p139より)
種によって独自の隠し場所あるいは隠蔽法を開拓するように、これから行動が進化するかもしれません。
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