2023/08/23

厳冬期のスギ林道で新雪をかきわけて歩くニホンカモシカが立ち止まってカメラ目線【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年1月下旬・午前2:45・気温-8℃(最低気温を更新) 

極寒の深夜に里山のスギ林道をニホンカモシカCapricornis crispus)が降り積もった新雪をかき分けながら右からやって来ました。 
その体温に反応してトレイルカメラが起動すると、カモシカは驚いて立ち止まり、片足を持ち上げたままカメラを不思議そうに見つめています。 
林道上の積雪が増すとカメラの位置が相対的に下がり、往来する野生動物の目線に近くなる結果、どうしても気づかれやすくなってしまいます。 
雪山に設置する場合、積雪期はカメラの固定位置を少しずつ上にずらした方が良さそうです。 
前年(2022年の冬)にはトレイルカメラが雪に完全に埋もれてしまいました。 
赤外線を照明とする暗視カメラは野生動物に気づかれずに隠し撮りできるとの触れ込みですけど、どうやらカメラが発するかすかな物音(電子ノイズ?)や赤く光る赤外線LEDでバレてしまうようです。 

警戒を解くと、カモシカはそのまま左に歩き去りました。 
今回は眼下腺を立木に擦り付けるマーキングをしませんでした。
カモシカの蹄はサラサラの新雪にそれほど深く潜っておらず、ラッセルに苦労している様子はありませんでした。 

野生動物にとって餌が乏しいはずのスギ林に真冬でもどうして様々な野生動物が頻繁に往来するのか、考えてみると不思議です。 
餌場とねぐらを結ぶ通り道として、スギ林道は積雪期でも歩きやすいのでしょう。 
激しい風雪を凌げるシェルターとしてスギ林を使っているのかもしれません。 

豪雪地帯の雪山でも鬱蒼と育ったスギ林の林床は微気象が安定しています(強風が遮られて吹き込まない:防風林)。 
積雪のほとんどは常緑の枝葉で一旦受け止められるために、林床の積雪量はあまり多くないのです。 
これを専門用語で森の樹冠遮断作用と呼ぶそうです。
雨についてよく調べられているのですが、降ってきた雨が樹冠の葉に当たって跳ね返ると、一部はそのまま(霧となって)蒸発するために、林床に届く降雨量がオープンフィールドよりも少なくなるのです。
葉の茂った木の下で雨宿りする理由がこれです。
雪の場合は、樹冠の枝葉に積もった雪は林床に落ちる(落雪)前にその一部が昇華蒸発するのだそうです。

スギ樹上からときどき一気に落雪した後は雪面がガリガリに固く凍り、歩いても足があまり深く潜りません。(雪原を闇雲にラッセルするよりも体力の消耗が遥かに少ない) 
山スキーやスノーシューを履いて雪山を実際に歩いてみれば、このことが実感できます。
もしも厳冬期の低山で迷って遭難した場合、とりあえずスギ植林地を目指すのも有効なサバイバルかもしれません。

雪崩が発生しても、巻き込まれる心配は(ほとんど)ありません。 
雪崩の多発地帯に杉を植林することはないからです。
仮に強引に植林したとしても、杉の苗が大きく育つまでに雪崩でなぎ倒されてしまうでしょう。
雪山サバイバルの定石に従って、深雪が積もった地点で雪洞を掘るとしたら、逆にスギ林から離れないといけません。 



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