2022年9月中旬・午前11:00頃・くもり(にわか雨が降る前)
ノブドウの蔓がクルミの木に巻き付いて伸びた結果、覆い尽くすようなマント群落になっています。
ノブドウの果実を若いニホンザルが次々に食べていました。
ニホンザルの採食メニュー一覧が載ったPDF資料を見ると、ノブドウが含まれていました。
三戸幸久. "ニホンザル採食植物リスト." Asian paleoprimatology 2 (2002): 89-113.ノブドウは色とりどりの果実を付けますが、我々の常識に反して熟果は白色なのだそうです。(衝撃の事実!)
青や紫に色づいた果実は、虫こぶ(虫えい)で、ノブドウミタマバエ(Asphondylia baca)やブドウトリバ(Nippoptilia vitis)などの幼虫が寄生した結果とされています。
しかし図鑑や本に書いてあることよりも現実ははるかに複雑怪奇(完全には解明されていない)らしいので、いつか自分でも採集・飼育してこの辺りを確かめてみたいところです。
手を伸ばしてノブドウを次々と摘果して口に運ぶこともあります。
左手でも右手でも摘果したので、特に偏った利き手は認められませんでした。
いくら食べても口から色付きの果汁が滴り落ちることはなく、唇が紫色に染まることもありませんでした。
ノブドウの葉は決して食べずに果実だけを選んで食べています。
緑色の未熟な果実は食べませんでした。
何口か咀嚼した後に吐き出す残渣は、ノブドウ果実の中にある硬い種子と思われます。
薄甘い(?)果肉と果汁だけ摂取しているようです。
しかし、ノブドウの白い熟果(正常果)だけでなく色づいた寄生果(虫こぶ)も構わずに食べているのだとすれば、中に潜む寄生者の幼虫や蛹を捕食している可能性も考えられます。
特に不味かった虫こぶだけ、サルは吐き出しているのかもしれません。
「虫こぶは不味くて食べられない」という「定説」はどこまで本当なのでしょうか?
ちゃんと体を張って味見(毒味)をしたヒトはいるのかな?
他人任せにしないで、私も自分で味見してみるべきですね。
色とりどりの宝石のような実。実の一部はノブドウミタバエ(原文ママ:正しくはノブドウミタマバエ)などが寄生して虫こぶになる。(中略)果肉や種子の状態から、濃い青や紫の実は未熟で、白い実が熟果であるようだ。白い実の果肉は白く半透明で、少々舌に残るがブドウに似た食感でほのかに甘い。ただし青や紫の実の種子もまけば正常に発芽する。 (『身近な草木の実とタネハンドブック』p120より引用)
猿はときどき振り返って私の様子を窺いながら、採食を続けます。
しつこくカメラを向けている私に警戒したのか、オニグルミの枝葉の陰に隠れてしまいました。
茂みの陰に隠れながらもノブドウの果実を食べ続けています。
オニグルミ樹上のニホンザルはやがて、見通しの良い枝に移動してくれました。
枝に腰掛けて餌を咀嚼しながら、後脚で体を掻いています。 (@3:27〜)
このとき股間に見えたピンクのでべそのような突起物は♂の陰茎にしては小さいので、♀のような気がします。
(間違っていたらご指摘ください。)
胸に長い乳首が見えないので、経産婦♀でないことは確かです。
しばらくすると猿はオニグルミの下部の枝に移動し、ノブドウのマント群落から果実採食を再開しました。
今度は採食シーンがよく見えるようになりました。
私がじっと動かず静かに撮影していたら、警戒を解いてくれたようです。
後半に私が少し近づいてみると、猿はオニグルミの横枝にぶら下がり、ゆっくりと慎重に地上に降りました。
木から降りたニホンザル♀は急に走り出すと砂利道の林道を横断し、姿を消しました。
今回、採食行動を直接観察した限りでは、ニホンザルはノブドウの種子散布にさほど貢献していない印象を受けます。
ノブドウの果実を食べたニホンザルは、ほぼその場で種子を吐き出している(ように見える)からです。
一部の果実を丸ごと飲み込み、遠くへ移動してから糞と一緒に未消化の種子を排泄するのかな?(周食型散布)
この問題を自力で突き止めるには、ニホンザルやタヌキなど野生動物の糞分析もいつか自分でやらないといけません。
ノブドウの種子散布者の本命は鳥なのでしょうか?
『野鳥と木の実ハンドブック』でノブドウについて調べると、否定的でした。
10月頃には熟すが、鳥が採食することは少なく、12月頃になってカワラヒワなどがときどき採食する程度。本当の実の色は赤紫色で、紫色や紺色になるのはブドウタマバエやブドウトガリバチの幼虫が寄生しているためだと言われている。(p49より引用:熟果の色に関しては筆者の誤り?)
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