アカタテハの飼育記録#8
2020年10月下旬・午後14:45頃・晴れ
同時期に飼育しているフクラスズメの幼虫として食草のカラムシを採取しにやってきました。
水田を抜ける農道に沿って自生するカラムシの群落は、晩秋になるとイモムシ達にすっかり食い荒らされて、葉も茎も実もほとんど丸坊主になっていました。
定点観察に通っていなければ、そもそも植物名さえ分からなかったことでしょう。
アカタテハ(Vanessa indica)の垂蛹bが食べ残しの葉からぶら下がり、秋風で揺れていました。
本種幼虫はカラムシの葉を巻いた巣の中に隠れて蛹化するはずなのに、この個体は剥き出しの状態で蛹が見つかりました。
垂蛹の隣に、もう一つ焦げ茶色の物体がぶら下がっていますが、カラムシの葉先が食べかけのまま枯れて思わせぶりに丸まっているだけでした。
「見事な偽装・擬態!」と言いたくなりますが、おそらく単なる偶然でしょう。
造巣・蛹化した後に別個体の幼虫(アカタテハやフクラスズメなどの幼虫)に巣(カラムシの葉巻き)を食べられてしまったのか、それとも身を隠す巣材が足りなくなり仕方なく剥き出しの状態で蛹化したのか、どちらでしょう?
丸坊主で無防備になったカラムシ群落を脱出しても、新しい食草の群落まで無事に辿り着ける保証が無いので、巣材を求めて移動する方がリスクが高いのかもしれません。
蛹化直前の巣作りは食草の種類にこだわらず、臨機応変にその辺の植物の葉を巻いて作ることができるのかな? (飼育で検証可能)
【追記】
福田晴夫、高橋真弓『蝶の生態と観察』によると
イラクサ科植物を食草とするアカタテハは、幼虫時代に使用して食痕のついた葉(袋状の巣)を出て、新しい巣をつくり、そのなかで蛹化する。 食痕か糞を目当てに寄主や食物を探す天敵に対応した習性であろうか。(p76より引用)
無防備なアカタテハ垂蛹bを私が手に載せたり指で軽く摘もうとした途端に、激しく身を捩ってビチビチと暴れました。
私が手を離してもしばらく暴れ続けています。
蛹の状態では食草に固定されていて逃げることは出来ませんが、捕食者や寄生者を追い払う精一杯の威嚇行動です。
この個体はおそらく体内寄生を免れた健康な状態と思われます。
周囲のカラムシ群落をよく探すと、同様に巣のない裸のアカタテハ垂蛹が計3つ見つかりました。(b,c,d)
本や図鑑にはこのような非典型的な状態(巣無しのむき出しの蛹)について書かれていないので、もし典型例(巣内の垂蛹)よりも先にフィールドで見つけてしまったら、正体が分からず困ってしまうかもしれません。
見つけた3個の蛹をビニール袋に採集して持ち帰り、全て飼育してみましょう。
幼虫の飼育は新鮮な食草の調達が大変ですけど、蛹の飼育は放置して見守るだけなので簡単です。
つづく→#9:アカタテハ蛹の体内寄生チェック
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