2020/06/04

冬に咲くビワに訪花するナミハナアブ♂の羽ばたき【HD動画&ハイスピード動画】



2019年12月下旬・午後12:05頃・晴れ・気温6℃

吉川徹朗『揺れうごく鳥と樹々のつながり (フィールドの生物学 25)』という本を読んでいたら、冬に咲くビワ(枇杷)鳥媒花であることを知りました。

冬場に開くビワの花も、花弁は白色でそれほどめだつものではないが、鳥によって送粉されていることがわかっている。(p136より引用)


ここ雪国ではどうなのだろう?と思っていたら、民家の庭で立派に育ったビワの木を見つけました。
花が咲いてからしつこく何回も通い詰めると、ようやく送粉者と出会うことが出来ました。
意外にも送粉者の正体は野鳥ではなく、ナミハナアブ♂(Eristalis tenax)という昆虫でした。
口吻を伸縮して花蜜と花粉を舐めています。
腹端近くに白および黄色い花粉が付着していますから、ビワの花から花へ移動すると受粉を媒介することが期待できます。
ときどき身繕いしています。
花から飛び立つ瞬間を狙って240-fpsのハイスピード動画でも撮ってみました。(@0:58〜)

今季は暖冬で、枝に積もっていた前日の雪がほとんど溶け落ちていました。
雪が降った後でもビワの花に独特の芳香が残っています。
この日が生きた昆虫(成虫)の2019年見納めでした。
ちなみに、ナミハナアブは成虫で越冬するそうです。

年が明けてからも花が咲いている限り何度もしつこく通ったのに、ビワの花蜜を吸いに来る野鳥を観察することはできませんでした。
ビワに訪花する昆虫も見かけなくなりました。
無人カメラを仕掛けたらメジロやヒヨドリなどが撮れそうな気がするのですけど、難しそうです。
そもそもビワは純粋な鳥媒花なのですかね?
花に送粉者を誘引する芳香があるということは、虫媒花であることを示唆しています。
(鳥類は嗅覚が発達していないので、鳥媒花は無臭です。)

鳥媒花は目立つ赤色の花弁を持つことが多いのですが、ビワはその特徴からも外れます。
ビワは鳥媒花でもあり、虫媒花でもある、という両刀使い(どっちつかずの過渡期?)なのかもしれません。


▼関連記事(春に撮影)
鳥媒花:ボケの花蜜を舐めるコムクドリ♀♂(野鳥)

冬に咲く虫媒花と言えば地味なヤツデの花ぐらいしか知らなかったので、ビワの花の観察も面白いですね。
今年は暖冬でしたが、例年の寒くて雪の多い冬でもハナアブ類が来てくれるのかどうか、興味があります。



ナミハナアブ♂@ビワ訪花吸蜜

枇杷の花
ビワの花
ビワの花と残雪


【追記】
冬の間にしっかり受粉できたようで、翌年の初夏になるとビワの果実がなっていました。(6月上旬では未熟果)

チャバネアオカメムシ?@ビワ未熟果+吸汁

現場では気づかなかったのですが、撮った写真を見直すと、チャバネアオカメムシPlautia stali)?らしきカメムシがビワの未熟果に止まっていました。
また機会があれば吸汁シーンを動画に撮り直したいものです。


6月下旬になると、実が熟して黄色くなりました。



ビワ熟果
ビワ熟果・全景
ビワ熟果:食痕


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