2015年7月上旬
湿地帯に生えた柳(種名不詳)の灌木林でクロマルハナバチ(Bombus ignitus)のワーカー♀が何匹も飛び回り、柳の葉に止まっていました。
採餌する花も咲いていないのに何の用だろう?と不思議に思って見ていると、どうやら葉に付いたアブラムシの甘露を舐めているようです。
実は他のハチ類も同様の行動をしていました(モンスズメバチ)。
狩蜂なら分かるのですが、花との結びつきが強いハナバチがアブラムシの甘露を採食するとは驚愕の発見でした!
あまりにも意外だったので、実は初めはクロマルハナバチに擬態したアブやハエ類(双翅目)なのかと思ったぐらいです。
葉に付いた朝露や雨水を飲む行動にしてはしつこいし、複数個体があちこちで同時にやっています。
この時期は蜜源植物に乏しい(花が咲いていない)のですかね?
ホバリング(停空飛翔)で甘露の付いた葉を探すと、止まった葉で口吻を伸ばして濡れた葉表を舐めています。
後脚の花粉籠は空荷でした。
甘露の付いた葉を蜂はどうやって探し当てるのでしょうか?
花のように独特の芳香があるとは考えにくいです。
アブラムシの甘露は濡れているのではなく乾いてテカテカに光って見えるので、それが手がかりになっていそうです。
「マルハナバチ&甘露」をキーワードにインターネットで検索すると、北海道自然史研究会による報告「マルハナバチの行動観察雑記」がヒットしました。(PDFファイル)
「アブラムシの甘露を吸汁する」
もちろん、これはマルハナバチと花で見られるような相利共生関係ではありません。
本来マルハナバチと風媒花のハンノキは係わり合いがないはずですが、アブラムシがいることで間接的な関係が生まれたという見方もできます。
このような観察例はマルハナバチの採餌行動の柔軟性を示すものといえます。
蜂が飛び去った後で、舐めていた葉を調べて写真に撮るべきでした。
アブラムシのコロニーも探していません。
手元にある図鑑『校庭のクモ・ダニ・アブラムシ』で柳をホストとするアブラムシを調べると、ヤナギコブオオアブラムシ(p179)、ヤナギクロケアブラムシ、ヤナギアブラムシ(p190)が掲載されていました。
少し前の時期には柳の枝にアワフキムシ類の幼虫の泡巣を多数見つけました。
この日は泡巣を見かけなかったのですが、成虫に羽化したのでしょう。
アブラムシの甘露だけではなくアワフキムシの泡巣で濡れた葉を舐めていた可能性もありますかね?
記事を公開する土壇場になって思い出したのですが、柳には花外蜜腺があるらしいです。
蜂が舐めていたのはアブラムシの甘露ではなく花外蜜腺だったのかもしれません。
肝心の柳の樹種も私には分かりません。
どなたか映像で分かる人は教えて下さい。
この辺りの柳は複数種が混合していそうですが、私のような素人が見分けるのは難しそうです。
参考サイト:ヤナギ属Salixの種検索
夏の湿地帯(アシ原、柳林)は単調な緑の砂漠かと思いきや、意外な発見があって面白いです。
【追記】
『マルハナバチの謎〈上巻〉 (ハリフマンの昆虫ウオッチング・社会性昆虫記)』p104によると、
ミツバチと同じようにマルハナバチもまた、アブラムシがだす甘い汁を集めます。マルハナバチはアブラムシが葉を巻いてつくった筒の中に口吻を差し込み熱心に甘い汁を吸います。そして緑の葉からそれをなめつくします。下線部についてはアブラムシ類に疎い私にはイメージが湧きませんし、今回撮れた映像とも異なります。
この本は旧ソ連の昆虫学者が1972年に書いた本を翻訳したものなので、日本の昆虫相とは若干異なる可能性もあります。
【追記2】
松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』によれば、
ミツバチやマルハナバチでは、炭水化物源として、花蜜だけでなく、アブラムシやキジラミなどの排泄物である甘露も利用している。 (p147より引用)
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