2021年8月上旬
昨年の晩秋に採集したコガタスズメバチ(Vespa analis insularis)の巣にギンモンシマメイガ(Pyralis regalis)が寄生していた可能性が出てきたので、古巣の標本を半分に切って内部を調べてみましょう。
前回の記事:▶ 飛べ!ギンモンシマメイガ:室内に発生した寄生蛾の謎【HD動画&ハイスピード動画】
営巣木は平地のテマリカンボク。
採集した古巣の表面に透明ラッカーを塗布したまま室内で保管(放置)していたのです。
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巣全体は縦にやや細長い卵型で、短径は約15cm、長径(高さ)は約20cmでした。
ノコギリを使ってコガタスズメバチの古巣を慎重に半分に切断しました。
切断作業中に巣全体がグズグズに崩れるのではないかと心配だったのですが、意外ときれいに一刀両断することができました。
予め外皮にクリアラッカーをスプレーで何度も繰り返し噴霧していたので、脆い外皮が糊で固められたように強化されていたのです。
巣の表面に見える照かりはクリアラッカーのせいです。
巣内を調べると、逃げ遅れたコガタスズメバチ成虫(新女王)の死骸は1匹もありませんでした。
巣の縦断面を見ると巣盤は3層あり、頑丈な巣柄で縦に連結されています。
それぞれの巣盤は正六角形の育房のハニカム構造で形成されています。
育房は全て空っぽでした。
白い繭キャップはワーカー♀によって取り除かれています。
巣盤全体を覆う外皮は多層構造になっていて、高い断熱性能が伺えます。
巣の側面に開いた唯一の巣口に至る通路は滑らかに加工されていました。
これだけ精緻な建造物をコガタスズメバチ♀は樹皮のパルプから作り上げていて、何よりも巣全体が驚くほど軽いです。(重量も測定すべき)
予想に反して、巣内に寄生蛾(ギンモンシマメイガ)幼虫による食痕は特に見当たりませんでした。
手で巣を崩しながらこの点を徹底的に調べるべきなのですが、半分に切った巣をそのまま標本として残したいので、今回はざっと見るだけに留めました。
多数のギンモンシマメイガ幼虫に食い荒らされた巣はこうなります。↓
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巣の内部にも改めてクリアラッカーを数回塗布し、防虫剤(ナフタレン)と一緒に容器に入れて保管します。
シリーズ完。
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