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2020/10/02

狩ったクロオオアリ♀を運ぶアオオビハエトリ♀(蜘蛛):前編



2020年7月中旬・午後14:45〜14:55・くもり

堤防に自生するミズキの根際にクロオオアリCamponotus japonicus)の巣があり、その近くでアリを襲っているハエトリグモを見つけました。
生きたアリを専門に狩って捕食する憧れのクモ、アオオビハエトリ♀(Siler cupreus)を初めて見つけた私は大興奮です。
早速、マクロレンズで接写してみました。
もし晴れていれば、メタリックな紫の体色がもっと美しく輝くはずです。
(ストロボを焚いて写真に撮ればきれいに写ります。)












クロオオアリ♀の右触角を咥えたアオオビハエトリ♀が宙吊りにした獲物をミズキの幹に引っ張り上げていました。
獲物はクモの毒牙に噛まれた後らしく、抵抗するどころか体が麻痺して動けないようです。
しばらくして立ち止まったアオオビハエトリ♀は獲物を抱え込んで裏返し、喉元に噛みつきました。(@0:36〜)
虫の息のアリは脚をピクピクと痙攣させています。
その状態で獲物の運搬を続け、ゴツゴツした樹皮を横にトラバースしました。
クロオオアリの巣口からなるべく離れて落ち着いた場所に獲物を運んでから捕食・吸汁するのでしょう。

突然、右上から別個体のクロオオアリ♀が駆けつけました。(@1:04)
仲間を救出しに来たのかと思いきや、特にアオオビハエトリと争うことはありませんでした。
偶然に近くを通りかかっただけかもしれません。
クロオオアリ同士の喧嘩では腹端から蟻酸を噴射するのに、アオオビハエトリに対してはなぜか使用しませんでした。


▼関連記事(6年前の撮影)
クロオオアリ♀の喧嘩は蟻酸を噴射する

ひょっとすると、アオオビハエトリは体表をアリの匂い成分に化学擬態して警戒心を薄れさせているのかな?
アリ同士は触角を触れ合って敵味方を識別しますが、アオオビハエトリの方がアリよりも動きがはるかに俊敏で視力が良く、アリには一切体を触れさせていません。

新手のアリに対して慌てて向き直った拍子にアオオビハエトリ♀はうっかり獲物を手放してしまいました。
落とした獲物を探してクモはミズキの幹を慎重に下りて行きます。
アオオビハエトリ♀は白い触肢で目の前の樹皮をトントンと叩いて探りながら、常に左右の第一脚を万歳のように同時に振り上げてアリを牽制・威嚇しています。

ミズキ根際の石の上でじっとしていたクロオオアリ♀に歩脚で触れ、アリが向き直ると慌てて飛び退きました。
このアリは先程落とした獲物ではなく、巣口を守る門衛のようです。

ミズキの幹で立ち止まったクモは左第一脚の先を舐めて身繕い。
しかしクロオオアリ♀に追われて幹の上へ退散しました。
再び幹を慎重に下りて行きます。
門衛を警戒しながらミズキ根際の巣口に近づいて行きます。
落とし物を拾いに行くのか、それとも新たな獲物を狩るのか、どちらでしょう?
クロオオアリに跳びついて狩る瞬間を動画に記録したくて粘ったものの、アオオビハエトリ♀は意外に臆病(慎重)で、近づくアリから逃げ回るだけで期待はずれでした。

丸い石の上に素早く跳び下りたアオオビハエトリ♀は、石の上を慎重に徘徊・探索します。(@4:17〜)
しかしクロオオアリ♀が近づくと慌てて逃げ出します。

ミズキの樹皮の根際でクモはワラジムシとすれ違うこともありました。(@4:45)
その度にアオオビハエトリは警戒し、常に逃げ腰です。

再び石の上に飛び降りると、見つけたアリにそっと近づきます。
第一脚でアリに軽く触れて反応を確かめています。
このアリは向き直ったものの動きがひどく鈍いので、落とし物の獲物(瀕死のクロオオアリ♀)なのかな?

こうしてアオオビハエトリ♀は同じことを何度も繰り返しています。
巣口に出入りする多数の元気なアリに邪魔されて、落とした獲物になかなか近づけません。
あるいは獲物の体内で毒がしっかり回って完全に麻痺するのを待っているのかも知れません。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」という作戦の狩りも考えられますが、アオオビハエトリは視覚に頼って獲物を狩るので、暗闇の敵陣(樹洞内のクロオオアリの巣)に侵入するのは無謀でしょう。




つづく→後編




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