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2019/11/14

アカメガシワで訪花中のクマバチに誤認求愛するオオハキリバチ♂



2019年7月下旬

民家の裏庭に植栽されたアカメガシワの雌株で花が咲くと、花蜜目当てに今年も多数のハナバチが集まって来ていました。
雌花には雄蕊がありませんから、ハナバチは花粉を集めることはできません。

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アカメガシワ雌株の花蜜を吸いに集まるクマバチ♀

おそらく♀と思われるキムネクマバチXylocopa appendiculata circumvolans)がアカメガシワの雌花で吸蜜して回るシーンを動画に撮っていると、その周囲ではクマバチより遥かに多数のオオハキリバチ♂(Megachile sculpturalis)がブンブン飛び回っていました。
顔が白く腹端が丸いのがオオハキリバチ雄蜂♂の特徴です。

訪花中のクマバチに背後からオオハキリバチ♂が続けざまにぶつかってきました。
オオハキリバチ♂同士でも空中で出会い頭にごっつんこしています。
まずは1/5倍速のスローモーションでご覧下さい。

この時期は花が咲いた様々な樹木の周囲でオオハキリバチ♂の群飛をよく見かけます。
頻繁に♂同士がぶつかり合ったり別種のハナバチにぶつかったりする行動を観察する度に、私は一貫して「焦りから来る誤認求愛」だろうと勝手に解釈してきました。

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キササゲの花で探雌飛翔し♂同士で誤認求愛するオオハキリバチ♂【HD動画&ハイスピード動画】

古い本ですが『無名のものたちの世界III:エソロジカル・エッセイ』(1980)p40〜p70に収録された佐々木陽一『オオハキリバチの交尾戦略―♂はどのようにして♀を獲得するか』という総説を久しぶりに読み直すと、その解釈への自信が揺らいできました。
筆者はオオハキリバチに巣箱を用意してやり、その周囲で繰り広げられる配偶行動およびそれに先立つ♂間の激しい闘争を個体識別して克明に調べ上げています。
ビデオやハイスピードカメラも無い時代になされた見事な研究成果です。
オオハキリバチ♀は羽化の直後に一度しか交尾しないらしく、♂は気が立っていて喧嘩っ早いようです。
オオハキリバチは♂が♀よりも先に羽化する雄性先熟なので、これから羽化する♀の巣穴を見つけるとその横で♂が何日間も待ち伏せするのだそうです。
♀が羽化して来るまでその待機場所を巡って♂同士が激しく争い、勝負は体格で決まるのだそうです。(大型の個体が圧倒的に有利)
それなのに戦っても勝ち目のない小型の♂個体の方が数が多いのは何故か?という謎を筆者は考察しています。
動物行動学をかじっていれば、小型♂はスニーカー戦略を採るのではないかと私でも予想できます。
しかし筆者は巣箱の周囲で小型♂による特別なスニーカー戦略(♀の横取り)を見ていないようです。

更に少し意地悪なことを言うと、自然界では有り得ないほど密集した巣箱周辺で観察したハキリバチの行動は不自然なところがあるかもしれません。
また、筆者は訪花中のオオハキリバチの行動についてはあまり調べていません。
一方、私はオオハキリバチの営巣行動を定点観察したものの、翌年の羽化および配偶行動は見逃してしまいました。


以上を踏まえて、今回私が撮った訪花中の映像についてもう一度考え直してみましょう。
もしかするとアカメガシワの大木のあちこちに小さな樹洞があり、そこにオオハキリバチの巣があるのかもしれません。

(オオハキリバチの営巣は借坑性。)
そこから処女♀が羽化してくる日まで、多数のオオハキリバチ♂が待機して群飛の状態になっている可能性が考えられます。
つまり誤認求愛ではなく♂同士の排斥行動(闘争)という解釈です。
アカメガシワ樹上で巣の有無を調べたいところですが、他所様の庭木ですから勝手に登る訳にはいきません。
しかし私は、誤認求愛という初めの解釈をどうしても捨てきれません。
巣の周囲では勝ち目のないオオハキリバチの小型♂が採餌のために訪花する処女♀を待ち伏せしているのではないでしょうか。
オオハキリバチの小型♂にとって♀との配偶行動は出会い頭のスピード勝負ですから、そそっかしく誤認求愛が頻発しても不思議ではありません。


クマバチ@アカメガシワ雌株+訪花吸蜜

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