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2024/08/02

カラマツ幹に体を擦り付けて松脂を塗るニホンイノシシ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年10月下旬・午後19:45頃および22:10頃

オニグルミの落果を野ネズミが持ち去って貯食する様子を撮影するために、山林の給餌場にトレイルカメラをローアングルで設置しています。 

するとある晩に、獣道を左から来たニホンイノシシ♀(Sus scrofa leucomystax)がトレイルカメラを覗き込んでいました。 
シナノキの幹の株に固定した見慣れない異物に興味を示し、至近距離で匂いを嗅いでいます。 
牙が目立たないので、♀のようです。 
ヒト(私)の残り香を嗅ぎ取って警戒したのか、慌てて左に走り去りました。 

しばらくすると、逃げたイノシシが左から戻って来ました。 
泥汚れの付いたカラマツ幹の匂いを頻りに嗅いでから、側頭部や左肩を幹の根元にゴシゴシと擦り付けました。 
カラマツ幹の泥汚れは前の年から見つけていて(フィールドサイン)、イノシシの仕業だろうと予想していました。 
雨や雪が降っても、この乾いた泥汚れは落ちずに残ったままです。


てっきりイノシシがヌタ打ち(泥浴び)で毛皮についた泥汚れを落とす行動の結果なのかと推測していたのですが、今回のイノシシ個体は毛皮がきれいです。 
泥や土で汚れているのは鼻面だけです。
「牙研ぎ」行動とも違います。 
そもそも牙が小さい♀は、牙を研ぐ必要が無いのではないかと思います。 
どうやら、カラマツ幹から滴り落ちている樹液(松ヤニ)を自分の毛皮に塗り付ける行動のようです。 

熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』によると、
牙を研いだ痕とされているが、サインポストの意味もあるのだろう。木がマツ類の場合、毛を硬くするため、松脂を体に塗るためだともいわれている。(p83より引用)


今泉忠明『アニマルトラック&バードトラックハンドブック』によれば、

泥浴びした後イノシシは近くのマツの木の根元に行って、幹を牙で削り(牙かけ)、体をこすって松やにをつけ、体毛を磨く。(p13より引用) 


松ヤニを塗って「毛を硬くする」メリットがよく分かりませんが、想像するに体外寄生虫や吸血性昆虫を寄せ付けない効果があるのでしょうか?

その後イノシシ♀は、カラマツの根元に私が並べておいたオニグルミ落果(果皮付き)の匂いを嗅いだものの、食べようとはしませんでした。 
左側の給餌場Lの窪みに鼻面を突っ込んで、匂いを嗅ぎました。 
そこには野ネズミが齧り取って捨てたオニグルミの果皮が散乱しています。 

一旦左に立ち去ったニホンイノシシ♀が右から戻ってきました。
法面を下りて林道に達したと思われます。 


2時間25分後、再びニホンイノシシが現れました。
右から来たイノシシがトレイルカメラの直下で林床の匂いを嗅いでいました。
同一個体♀が戻ってきたのかな?
ふと顔を上げて監視カメラの存在に気づくと、慌てて右に走り去しました。
牙の有無を確認できず、性別は不明です。
30分前に来たツキノワグマの残り香を嗅ぎ取って逃げ出した可能性もあります。
最後に獣が鼻息を荒らげて威嚇する音が録音されていました。
逃げたイノシシが近くで採食していたのか、それともカモシカとニアミスしたのかな?




※ イノシシの鼻息♪が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。


【考察】
前年からの宿題だったイノシシの松脂塗り行動が撮れて、感無量です。
カラマツの幹を4日後に撮影した写真を掲載します。
泥汚れが白く乾いている上に、赤い樹脂が滴り落ちています。




注意深く現場検証したら、カラマツの幹からニホンイノシシの体毛を採取できたかもしれません。

幸か不幸か、当地ではイノシシの生息密度がまだ低く、トレイルカメラでも撮影するのは難しそうと半ば諦めかけていました。
昨年はイノシシの出現頻度があまりにも低くて撮影効率が悪いため、暇つぶしにカラマツの木の下でドングリなど堅果を給餌することにしたのです。
イノシシが泥浴びをするヌタ場を突き止めるのが、次の課題です。

警戒心の強いイノシシをトレイルカメラで撮影するには、獣道を高所から見下ろすように狙えば(ハイアングル)、気づかれずに自然な行動を記録できるはずです。
しかし、給餌場に通う野ネズミを撮影するために、ローアングルで監視カメラを設置していました。



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