2023年8月中旬・午後15:10頃・くもり
休耕田が稲作からソバ畑に転作されたようで、真夏に撒かれた秋ソバが発芽しました。
そのソバ畑に多数のキジバト(Streptopelia orientalis)が散開して、採食に励んでいました。
初めはカメラを向ける私を警戒して周囲の防風林に逃げ込んだのですが、私が動き回らず農道の木陰から静かに撮影を続けると、警戒を解いたキジバトが再びソバ畑に続々と戻ってきました。
キジバトのこれほどの大群を見たのは初めてです。
引きの絵で右から左にパンしながら数えると、少なくとも計18羽以上は集まっていました。
キジバトたちはソバ畑を歩き回って何かを啄んでいます。
畦道をテクテク歩いて乗り越え、隣の区画のソバ畑に移動する個体もいます。
地味な羽根色のキジバトは、ソバ畑では見事な保護色になっています。
キジバトは種子食性ですから、ソバの芽生えを採食に来たのでしょう。
しかし映像を見ても、ソバの芽生えを嘴で1本ずつ引っこ抜いて種子を食べている様子はありません。
芽生えに失敗した不稔の種子を食べているだけのような気がします。
発芽した後は種子内の栄養分が急速に枯渇するので、キジバトにとって栄養価が低下しているはずです。
ソバの芽生えを食すのであれば、わざわざ畑を歩き回る必要はなく、食べ放題のように1箇所で次々と啄むはずです。
あるいはソバ畑の虫を捕食している可能性もありそうです。
つまりキジバトはソバ畑の害鳥とは決めつけられず、害虫を食べたり発育の悪い芽生えを間引いたりしているという側面もあるのかもしれません。
私はキジバトを盲目的に擁護したい訳ではありません。
ソバの種まきは畝に沿ってばら撒き、浅く土をかぶせるだけらしいので、種まき直後のソバ畑がハト類に最も狙われやすいでしょう。
発芽して無事にある程度育てば、鳩は食欲をそそられなくなるようです。
11日後に現場を再び訪れると、ぐんぐん育ったソバ畑にキジバトは1羽も来なくなっていました。
秋にソバの実が熟すと、種子捕食者のキジバトが再び集まり、収穫前の実を食害するようになります。(映像公開予定)
食性を冷静に緻密に観察すれば、鳥害対策も立てやすくなるはずです。
採食中のキジバトは警戒心が強くてすぐに逃げてしまうので、思うように近づけませんでした。
望遠レンズを装着したかったのですが、あいにくこの日は持ってきておらず、仕方なくデジタルズームを駆使しました。
画質が粗くなるのは仕方がありません。
関連記事(3年前の撮影:現場近くの別の畑?)▶ ソバ畑の芽生えを採食するキジバトの群れ(野鳥)
よく見ると、種子から白くて細長いひげ根が出た芽生えをたまにキジバトは食べていました。
このときは7月下旬の撮影で、もしかすると秋ソバの芽生えというよりも、春ソバの収穫後だったのかもしれません。
撮影時期が違う2つの動画は、ソバの芽生えの生育状態が異なります。
【追記】
藤岡正博、中村和雄『鳥害の防ぎ方』という本は、作物の種類ごと、鳥の種類ごとに取り上げているのですが、ソバについての記述はありませんでした。
それでも読み返してみると、とても勉強になりました。
キジバトは、本来は林の鳥で、農村部に多く、(中略)採食は、群れで行うのがふつうです。(中略)被害がもっとも大きなものはダイズをはじめとするマメ類で、出芽直後に最初に出て来る子葉をついばんでいきます。子葉をついばむだけなら、ダイズは成長が遅れるものの、それほど収量には影響しませんが、子葉と一緒に生長点もついばんでしまうことが多く、その場合はダイズは枯れてしまいます。(中略)ハトは一度餌にありついた場所をよく覚えていて、また同じ畑にやって来ることがふつうです(p67〜68より引用)ダイズのほかで被害を受けるのは、イネやムギなどの播種された種子です。(p68より引用)
私もダイズ畑で採食するキジバトを後に撮影することが出来ました。(映像公開予定) 。
キジバトが子葉を食害するとは知らず、てっきり種子食性とばかり思い込んでいました。
今回ソバ畑でも子葉を食べ歩いていたのかもしれません。
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