2022年9月中旬・午後14:50頃・くもり
山中の湧水が溜まった泉に地味な蝶が落水し、水面でパタパタと羽ばたいていました。
カメラでズームインしてみると、ヒカゲチョウ♀(Lethe sicelis)でした。
関連記事(8年前の撮影)▶ クロヒカゲの水難事故後翅が破損している個体でした。
翅の破損が左右対称ではないので、鳥に襲われかけたビークマークではなさそうです。
口吻は伸びておらず、吸水行動ではありません。
落水した蝶を中心として水面に波紋が広がっているのでヒカゲチョウをよく見ると、翅を細かく震わせていました。
飛翔筋を使って準備運動をしているようです。
周囲は鬱蒼とした雑木林で、この日は特に薄暗く、気温も高くありませんでした。
変温動物のヒカゲチョウは飛翔筋の準備運動をして体温を上げないと力強く飛び立てないのでしょう。
その波紋を感知したアメンボの仲間(種名不詳)が水面を泳いで近づき、ヒカゲチョウの後翅にコツンとぶつかりました。
アメンボ自身も動くと波紋が広がります。
再びアメンボが獲物に襲いかかろうとした途端に、ヒカゲチョウが慌てたように激しく暴れ始めました。
浅瀬なのに、水面でいくら羽ばたいても空中に飛び上がれません。
このときヒカゲチョウの前翅表に白帯が見えたので、♀と判明しました。
岸まであと少しなのに、泳いで岸に辿り着こうという発想もないようです。
「泳ぐ」という行動レパートリーが 蝶には無いのでしょう。
翅の表面を覆う鱗粉に撥水性があるので、水中に沈む心配はなさそうです。
周囲から数匹のアメンボが一斉に集まってきたものの、暴れる獲物を仕留められません。
口吻を獲物に突き刺して毒液を注入すればおとなしくなるはずですが、アメンボは狩りを諦めて退散しました。
獲物が溺れて弱るまで待っているのでしょう。
襲い来るアメンボを撃退したヒカゲチョウ♀は、閉じた翅を細かく震わせています。
水面から突き出た落枝の上に乗れば、飛び立てる気がするのですけど、どうでしょうか?
水面に落ちた蝶はクモの網にかかったのと同じで、逃れようと暴れるとその振動で捕食者(アメンボ)に気づかれてしまいます。
気づかれないように死んだふり(擬死)するしかありませんが、それではいつまで経っても問題の解決にはなりません。
命のかかったジレンマです。
次に、もっと大型の捕食者が登場します。
一難去ってまた一難。
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