2021年9月上旬・午後16:20頃・くもり
山道の横に咲いたツリフネソウの群落で見慣れない謎の昆虫がひとつの花に集まって何やら争っていました。
薄暗い条件で撮影していると、触角が長いのでてっきりカミキリムシの仲間かゴキブリなのかと思いました。
帰ってから調べてみると、どうやらブチヒゲクロカスミカメ(Adelphocoris triannulatus)のようです。
本種の性別を外見で見分ける方法を私は知らないので、行動の解釈に困ってしまいます。
どなたかご存知の方は是非教えて下さい。
首元が赤い個体が♀?
横から見た腹部の厚みは、首元の赤い個体(♀?)の方が太い気がします。
ネット検索しても、ブチヒゲクロカスミカメの配偶行動に関する情報は得られませんでした。
よく分かっていない(誰も調べていない)のでしょう。
カメムシの中には♂が食草上で多数の♀を囲い、このハーレムをライバル♂から防衛する種類が知られています。
しかし、今回ツリフネソウで吸蜜・吸汁している個体はいませんでした。
ブチヒゲクロカスミカメが吸汁する食草として、キク科、イネ科、マメ科などが知られています。(図鑑『札幌の昆虫』p74より)
ダイズやアズキなど農作物の害虫としても知られているそうです。(野澤雅美『おもしろ生態と上手なつきあい方:カメムシ』p65より)
なお、南九州大学の昆虫生態学研究室によって、ブチヒゲクロカスミカメは動物も植物も摂食するタイプの食性(zoophytophagy)と判明したそうです。
つまり、ツリフネソウ科ツリフネソウはブチヒゲクロカスミカメにとって餌資源でも産卵基質でもありません。
食草以外の花に♂が集まって求愛ディスプレイを繰り広げ、♀に選んでもらうレックなのかな?
繁殖期の雄が集合して集団で求愛誘示を行なったり,特定の位置を占めるために儀式的な闘争で争いあったりする場所,あるいは繁殖システム.レックにやってきた雌は,例えばウォーターバックのように特定の位置(中央部)にいる雄と交尾する場合と,エリマキシギのように好ましい形質をもつ雄を選んで交尾する場合とがある.レックには繁殖に役立つ資源は何もなく,雌は別の場所で出産・産卵する.魚類でも雄が集合的に営巣して求愛誇示を行なっている場合にレック様システム(lek-like system)とよぶことがある. (『岩波生物学辞典・第4版』より引用)しかし求愛誇示らしき行動は見られませんでした。
カメムシの場合は性フェロモンの放出が求愛誇示に相当するのでしょうか?
個体間の小競り合いもよく見ると、相手をツリフネソウの花から完全に追い払うほどの激しい闘争行動ではありませんでした。
同じ花上で互いに少し離れたり陰に隠れたりするだけで休戦状態になります。
小競り合いの後に2匹が横に並んで静止することもありました。
撮影中は気づかなかったのですが、ツリフネソウの花の右上の包葉?にもう1匹居ました。
♀が♂同士の喧嘩を見守ってるのかな?と想像したものの、性別不明です。
ブーンという低い羽音♪を立てて新たに別個体が飛来しました。
同種のカメムシが続々と集まるということは、集合フェロモンを発しているのでしょう。
しかし私の鼻では何も匂いを感じませんでした。
この程度の風では集合フェロモンに影響ないようです。
ところが新入りの個体は、すぐにまた飛び去ってしまいました。
繰り返される小競り合いを1/5倍速のスローモーションでじっくり見直すと(@3:10〜)、どうやら♂が♀をしつこく追い回して背後からマウントしようとしていると分かりました。
その度に背後から近づく相手を後脚で足蹴にして牽制・撃退しています。
♀による交尾拒否なのか、それとも♂同士の誤認求愛なのか、私には分かりません。
別れても何度も追い回して、嫌がる相手に繰り返しマウントを試みています。
足蹴りと言えば、カメムシの中には♂同士の闘争用に棘付きの太い後脚をもつ種類がいます。
しかしブチヒゲクロカスミカメの後脚は長いものの、太くもなく棘も生えていません。
私が草むらに一歩踏み込んで接写しようとしたら、ブチヒゲクロカスミカメは警戒して動きを止めてしまいました(擬死モード?)。
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