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2021/02/27

乾いた芝生に連結打草産卵するノシメトンボ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】

 

2020年10月下旬・午後13:50頃・晴れ 

芝生の河川敷でノシメトンボSympetrum infuscatum)のペア♀♂が尾繋がり状態で飛びながら産卵していました。
産卵は水のない池畔の草原や水田の稲穂の上などで、緩やかに飛びながら上下動を交えて卵を振り落とす連結打空産卵を行う。雌雄が連結したまま行うことが多いが、途中で連結を解いて雌の単独産卵に移行することもある。この場合は雄が上空でホバリングをしながら、または付近に静止して雌の産卵を警護をすることもあるが、長時間は持続しない。水のある場所には産卵しない。秋に産み落とされた卵はそのまま越冬し、翌春産卵場所が増水して水面が上昇し水没した環境下で孵化し幼虫となる。(wikipedia:ノシメトンボより引用)
以前、同じ河川敷の少し離れた別の場所でもノシメトンボ♀♂の産卵行動を観察しています。 
そのときは少し湿ったコケ(蘚類)の上に卵を散布していました。
▼関連記事(1年前の撮影) 
スギゴケ?の上で連結打空産卵するノシメトンボ♀♂【HD動画&ハイスピード動画】
今回は幾つかの点で産卵法が違っていました。 
まず、産卵地は辺り一面きれいに刈られた芝生で、秋晴れのためその表面は乾いていました。 

 240-fpsのハイスピード動画に切り替えて、ノシメトンボ♀♂の連結産卵を撮ってみました。(@0:46〜7:51) 
ノシメトンボ♀は「打空産卵」つまり勢い良く前方に振り出す勢いで空中から卵を射出するはずです。 
ところが今回の♀は異常に(?)低く飛び、腹端が芝生の地面に毎回コツンと接触していました。 
♀の腹端の産卵孔に1個の卵がニュルっと生み出され、用意した状態で腹端を接地していました。 
その直後の♀腹端を見ると、卵が無くなっていました。 
という訳で、「打草産卵」という造語を勝手にこしらえました。 
トンボの産卵法には「打水産卵」や「打泥産卵」という別な用語も正式にあるのですけど、今回の芝生は全く湿り気がなく周囲に水たまりもありませんから使えません。 

もしかすると♂が疲労や空腹で弱っていて、♀を高く持ち上げて飛ぶ力が無いのかもしれません。 
腹端を接地した状態の♀を少し引きずったまま飛ぶこともありました。 
連結飛翔の高度は♀♂どちらが主導権(イニシアチブ)をもって決めるのでしょうか?

それとも、ノシメトンボが乾いた芝生に産卵する時はいつも連結打草産卵するのでしょうか? 
一例だけの観察では何とも言えません。

最後に再び通常のHD動画撮影に戻しました。 (@7:52〜)
するとペアを自発的に解消する瞬間がたまたま撮れました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
うっかり連結が外れて逃げた♀を♂が少し追いかけたものの、諦めて♂は右の縄張りに戻りました。 
左に飛び去った♀は地上の枯れ草に着陸。 
連結飛翔が下手糞な弱い♂を見限って♀がペアを解消したとしたら面白いのですが、♂に首根っこを掴まれた♀が振り切って逃げることは解剖学的に可能なのかな?
私は未だノシメトンボ♀の単独産卵を見たことがありません。

【追記】
保育社『原色日本昆虫生態図鑑IIトンボ編』(1969年)という50年以上前の古い図鑑で調べると、ノシメトンボは
 一般的には開放的な水面に♂♀が連なって産卵するが、時として池畔の雑草の上などにも、水面ですると同じように尾端を打って産卵行動をすることが観察されている。(p185より引用)
と記載されていました。
ノシメトンボは「打空産卵」というのが最新のトンボ図鑑の定説になっていたので、古くて間違った記述だと私は思っていました。
ところが今回改めて読み直すと、後半の下線部は正しかったことが分かり、驚きました。


【追記2】
井上清、谷幸三『赤トンボのすべて』でノシメトンボを調べると、
♂♀連結してゆるやかに飛びながら腹端を振って卵をまき散らしますが、まったく水のない草原の上で産卵しているのも見られます。連結を解いて単独♀で産卵している場合もあります。(p58より引用)

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