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2020/08/13

ドイツトウヒの松ぼっくりが水を吸って閉じる様子【200倍速映像】



2020年5月中旬・室温25℃

コロナ禍のステイホーム期間中に室内で撮影できるネタとして、松ぼっくりを使ってちょっとした実験をしてみました。
前の年に採集し保管していたドイツトウヒ(別名オウシュウトウヒ)の細長い球果(松ぼっくり)2個を使います。
プラスチックの透明円筒容器(直径10cm、深さ15cm)に松ぼっくりを入れ、そこにヤカンで水をなみなみと注ぎ込みました。
水面下に浮いた球果の果鱗が水を吸って閉じていく様子を200倍速の早回し映像でご覧ください。
(水浸実験の前後にターンテーブルを回して松ぼっくり全体を見せたところだけは2倍速映像。)

水を含んでもドイツトウヒの球果は浮いたままで、沈みませんでした。
果鱗が完全に閉じると、まるでセンザンコウという動物が丸まったときの姿を連想しました。
水面から上に出ている部分の果鱗は当然ながら開いたままです。


実験前の乾燥したドイツトウヒ球果@方眼紙
水を吸って閉じた果鱗

私はこれで満足して微速度撮影を止めてしまったのですが、念の為に着色した水を捨てもう一度新しい水を注いでから更に一晩静置してみました。
すると水が再び茶色に染まり、完全に水を吸ったドイツトウヒの球果は容器の底に沈んでいました。(映像なし)
初回は注水時に球果の表面に気泡ができてしまったせいで、浮いたのでしょう。

清水清『科学のアルバム:植物は動いている』によると、

 ひらいたマツカサ(果実)を水につけると、マツカサはとじてしまいます。反対に火であぶってかわかすと、またひらきます。これは、マツカサをつくっているりん片の内側と外側で、かわいたときのちぢみ方、湿ったときのふくらみ方に差があるためです。かわいたときは内側よりも外側が多くちぢむため、外側にそり返ります。湿ったときは内側よりも外側が多くふくらむため、もとにもどるのです。 (p48より引用)

この仕組みだと、果鱗の素材の物理的な性質ですから、たとえ植物本体が枯死しても球果(松ぼっくり)は開閉運動を続けることが可能です。
つまり、動物が筋肉と神経を使って動くのと根本的に異なります。(例:センザンコウが死ぬと鱗を逆立てる動きはできなくなります。)



時間が経つと次第に透明な水が茶色に濁ってきたのが想定外で、ちょっと面白かったです。
まるで紅茶を淹れたみたいに、赤褐色の溶出成分の濃度勾配が現れました。
これはタンニンなのかな?

湿った球果を乾かして果鱗が再び開く様子も動画で記録すればよかったですね。
(電子レンジを上手く使えば乾燥をスピードアップできそうです。)
乾燥して開いた果鱗は自然に脱落し、翼が付いた種子は風に飛ばされて広範囲に散布されます。(種子の風散布)


乾燥状態で自然に脱落したドイツトウヒ果鱗@方眼紙

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