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2013/02/06

卵塊を毛で覆うシロオビフユシャク♀?(冬尺蛾)



2012年11月下旬

前の記事はこちら→「シロオビフユシャク♀?(冬尺蛾)の産卵【15倍速映像】

産卵1日目

産卵1日目

産卵1日目


産卵3日目

産卵4日目

産卵4日目:翅は退化している。


早回し映像用に長撮りを繰り返す合間に、♀の産卵行動を接写してみました。
映像は産卵1〜2日目のもの。

腹端を左右に振って毛束を刷毛のように卵塊に擦りつけます。
♀は休憩を挟みながら昼夜を問わず断続的に植毛作業を続けます。

民話『鶴の恩返し』を連想させる行動ですね。
止まり木を徘徊してもきちんと卵塊に戻ってくるのは記憶に頼っているのか、触角などで探り当てるのでしょうか?

産卵6日目:生体(顔)
口吻は退化している

多くの冬尺蛾の成虫は口吻が退化しており、羽化後は飲まず食わずで繁殖行動に専念します。


多くの種では、雌雄ともに口器が退化して痕跡的にしか残っておらず、食物をとることができない。(『冬尺蛾:厳冬に生きる』p7より)
この♀も採集から7日後に老衰で死亡するまで止まり木を徘徊しては卵塊にひたすら植毛を続けるだけで、二度目の産卵は行いませんでした。
もし♂と再交尾すれば新たに産卵したでしょうか?
室温が冬尺蛾にとっては暑過ぎたのかもしれません。
有翅の♂をフェロモンで呼び寄せるコーリング行動も見られませんでした。
クモの♀が死ぬまで卵嚢をガードするのと少し似ているかもしれません。
しかしこの時期はもう寄生蜂もカメムシも活動していない筈で、考えられる外敵・天敵・捕食者(食卵)は何でしょう?



卵は銀色
産卵7日目(♀死後)

産卵3日目

産卵7日目(♀死後)


卵塊はフェルトのような厚い毛でしっかり被覆されました。
野外では樹皮に産卵されるので、保護色および断熱効果があると考えられます。

銀色の卵を産みつける様子をはっきり接写できなかったのが心残りです。


冬尺蛾♀が止まり木に静止するときは明るい南面を選ぶ印象を受けました。
止まり木を回転して向きを変え、走光性を調べても面白いかもしれません。
ちなみに『冬尺蛾』p163によれば、野外で産卵方位は南が圧倒的に多いらしい。

産卵3日目:生体@方眼紙

産卵3日目:生体:側面@方眼紙

産卵3日目:生体:腹端@方眼紙

産卵3日目:生体:腹端側面@方眼紙

腹端の毛束は日を追う毎に擦り切れ、産卵前後で体長も短くなりました。
採集時とは印象がまるで異なります。
野外で冬尺蛾の♀を単体で見つけた時に図鑑などと見比べても同定が難しい理由がよく分かります。

脚が長くザトウムシを連想する異形の虫です。

標本をピンセットで摘んで腹端の毛束で粘着テープを擦ってみて植毛できるかどうか、つまり脱毛しやすくなっているのかどうかを調べてみるのも面白いかもしれません。

冬尺蛾は卵で越冬し、早春に幼虫が孵化してくるらしい。
卵塊をこのまま室内で飼育してみます。


つづく→「シロオビフユシャク?(冬尺蛾)一齢幼虫の孵化【10倍速映像】

死後標本@方眼紙

死後標本:腹端@方眼紙

死後標本:腹端側面@方眼紙

死後標本:腹面@方眼紙

死後標本:腹端腹面@方眼紙

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