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2025/02/25

下半身の麻痺が進むホンドタヌキがいざり歩き、死んだアナグマの骨をかじる【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2024年3月下旬 

早春の林床に横たわっていたニホンアナグマMeles anakuma)の死骸を自動撮影カメラで見張っていたのですが、夜の間にタヌキが死骸を持ち去ってしまいました。 


シーン1:3/28・午後18:59(@0:00〜)日の入り時刻は午後18:01 
翌日の晩にもホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が単独で登場しました。 
食べ残しの細長い骨を齧っています。 
アナグマの骨にこびりついた肉片や骨髄をしがんでいるだけかと思いきや、骨を少しずつ噛み砕いて食べているようです。 

もしかすると画角の右外にアナグマ死骸の本体があって、それを解体しながら食べている可能性もありますが、私の想像(願望)でしかありません。 
昼間はカラスが来て死肉を食べているはずなので、アナグマの死骸がバラバラに散逸しつつあるのかもしれません。 


シーン2:3/28・午後19:01(@1:46〜) 
やがてタヌキは林床で立ち上がって左へ移動を始めたのですが、この個体は後脚の麻痺が進行していて、跛行というよりも「いざり歩き」していました。 
特に右後脚には力が入らないので、前脚2本の力で下半身を引きずって歩きます。 

初めにアナグマの死骸が横たわっていた地点の匂いを嗅いでいます。 
連日の酷使により監視カメラの電池が消耗していて、短時間の暗視動画しか撮れなくなりました。 


シーン3:3/28・午後19:02・気温7℃(@2:00〜) 
アナグマの巣口Lを見張っていた監視カメラに続きが写っていました。 
死んだアナグマの営巣地(セット)を左から右へ、タヌキが下半身を引きずりながら痛々しく横切りました。 

健常個体が前夜に引きずって持ち去ったアナグマの死骸はこのカメラにも写っておらず、その行方は不明です。 
いざり歩きのタヌキがアナグマの死臭を辿っているとしたら、その先(休耕地にあるタヌキ営巣地方面?)に健常個体が持ち去ったのでしょうか。 

下半身に重傷を負っているのなら道中でアナグマの巣穴Lに入って安静にするかと思ったのですが、私の予想は外れ、夜の二次林で活発に活動しています。 
日々の餌を必死で探し歩かないと、餓死してしまうのでしょう。 


シーン4:3/29・午後18:27(@2:38〜)日の入り時刻は午後18:02。 
翌日も日没後に、下肢の麻痺が進行したタヌキがアナグマの死体があった現場に戻ってきました。 
左から来て、初めに死骸が横たわっていた地点の匂いを嗅ぐと、よほど飢えているのか、林床の落ち葉を激しく首を振りながら食べています。 
早春にはまだ死肉食性の昆虫は来てないはずです。 


シーン5:3/29・午後18:28(@3:38〜) 
タヌキはいざりながら、立ち木の周囲をゆっくり回り込んで右下へ移動しました。 


シーン6:3/30・午前6:15(@4:38〜)日の出時刻は午前5:25。 
翌日の早朝にアナグマ死骸を監視するカメラが起動すると、 「いざりタヌキ」が左を向いて地面に座り込んでいました。 
麻痺した下肢を引きずって左へ移動。 

明るい昼間もここに来るようになりました。 
タヌキは本来は夜行性のはずですが、脚の悪いこの個体は終日餌を探し回らないといけないようです。 


シーン7:3/30・午後18:48(@5:00〜)日の入り時刻は午後18:03。 
日没後の晩に「いざりタヌキ」が左から来ていました。 
初めにアナグマの死骸が横たわっていた地点の匂いを嗅ぐと、何かを拾い食いしたようです。 
虫かな? 

その後は木陰に座り込んだまま、ぎこちなく毛繕いをしているようですが、後ろ向きでよく見えません。 
また何かを咀嚼しました。

連続撮影するとまた監視カメラの電池が消耗して、短い暗視動画しか撮れなくなりました。 
やがて「いざりタヌキ」が右へ移動しようとしても、体が言うことを聞かないようです。 
諦めて、ブラブラと力の入らない右後脚(膝?)を舐めています。 


シーン8:3/31・午前8:08・晴れ・気温7℃(@7:53〜) 
翌朝、アナグマの旧営巣地に「いざりタヌキ」が来ていました。 
林縁を右から左へ横切ります。 後脚に力が入らず足腰が立たないので、ほとんど匍匐前進のように移動するしかありません。 


シーン9:3/31・午前10:19・晴れ・気温15℃(@8:36〜) 
「いざりタヌキ」は旧セットを通り抜ける獣道で横たわったまま、2時間以上もじっと動かなかったようです。 
動きがなければ、トレイルカメラの熱源動体検知センサーは反応しません。 
幸い晴れているので、寒くはなさそうです。 
横臥で日光浴しています。 
一瞬仰向けになると、麻痺した後足が見えました。
明るい昼間に見ると、毛並みが悪くなりボサボサです。 


シーン10:3/31・午前10:57・晴れ・気温18℃(@9:01〜) 
「いざりタヌキ」は力を振り絞って、左へ少しだけ移動していました。 
その後、安全な隠れ家として死んだアナグマの巣穴Lに入るかと予想したのですが、その様子は撮れていませんでした。 
下手に地中のトンネルに潜り込むと、二度と地上に戻れないぐらい足腰が弱っているのかもしれません。 


シーン11:3/31・午後19:08・(@9:19〜)日の入り時刻は午後18:04。 
日が暮れると、アナグマの死骸があった現場に「いざりタヌキ」がまた戻ってきました。 
足が悪くて、行動半径がとても狭いようです。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


【考察】 
一素人の診断ですが、このホンドタヌキ個体はおそらく夜道で車にはねられ、その怪我(脊髄損傷?)が元で下半身の麻痺が進行しているようです。 

あるいは、薬物による神経症状が疑われるでしょうか? 
アナグマがまず毒殺され、その死骸を食べたタヌキも残留毒物による急性中毒症状で下半身の麻痺が進行したのか?…などと根拠もないのに勝手に被害妄想を逞しくしてしまいます。 
冷静に考えれば、時間的な前後関係によりアナグマの死因とは関係なさそうです。
食べる物が乏しい早春にタヌキが例えば猛毒アルカロイドのコニインを含むドクニンジンの根を誤食してしまった場合、下肢から筋肉の麻痺が進行するかもしれません。(ミステリー小説で得た知識です。
帰化植物のドクニンジンが当地で自生しているかどうか、確認していません。
在来植物ではドクゼリやハシリドコロも根茎にコニインを含有しているそうです。(Gemini2.0による誤情報)

それとも、高齢化した飼い犬(老犬)のように、野生のタヌキも老化が進むと足腰が立たなくなるのでしょうか?
症状が回復する見込みはなさそうです。
近所に住むタヌキの健常個体が、この「いざりタヌキ」を労って給餌する行動は録画されていませんでした。

こういう「可哀想そうな野生動物の映像」を撮って公開すると、「傍観してないで一刻も早く保護して獣医に治療してもらうべきだ!」と怒る人が必ず出てきます。 
ライブカメラではないので、私は現場に設置した監視カメラをリアルタイムで見ている訳ではありません。
数日後に現場入りして、監視カメラで録画した動画を確認して初めて、ここで何が起きたかを知るのです。
つまり、どうしてもタイムラグが生じます。 
現場周辺を探しても、「いざりタヌキ」はどこに隠れているのか、その姿は見つかりませんでした。 
「いざりタヌキ」がよく現れる場所にドッグフードや飲み水などを給餌するべきでしょうか? 
一方で、野生動物の暮らし(生老病死)にヒトは一切介入するべきではない、というストイックな考え方もあります。 


つづく→

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