2022年8月上旬
山中で湧き水の溜まった浅い泉に夜な夜な飛来するコウモリの群れを自動センサーカメラで記録しています。
水場に訪れて水を飲んだり水浴したりする野生動物や野鳥を撮影する目的でトレイルカメラを設置してみると、最も頻繁に写るのはコウモリでした。
シーン0:8/5・午後14:35(@0:00〜)
明るい日中にたまたまフルカラーで撮れた現場の状況です。
湧き水が溜まった浅い池から画面の奥に向かって水が流れ出て、沢の源流になっています。
シーン1:8/5・午後19:19〜23:53(@0:04〜)日の入り時刻は午後18:48
日没後に暗くなると、水場にコウモリがやって来ます。
1/3倍速のスローモーションでリプレイしてみると、着水後に急旋回して飛び去るコウモリが空中から何かを捨てていました。(@6:09〜)
これは排泄行動なのか、それとも池で何かを捕獲したら獲物ではないと悟って捨てたのでしょうか?
濡れた体から水滴が落ちただけのようには見えません。
シーン2:8/6・午前0:11〜3:40(@6:27〜)日の出時刻は午前4:43
深夜に日付が変わっても夜が明けるまでコウモリは次々と池に飛来します。
少数の個体が繰り返し飛来しているのか、それとも多数の個体が1回ずつ飛来しているのか、知りたいのですが、どうやったら突き止められるでしょう?
(素人が許可なくコウモリを捕獲するのは禁じられています。)
着水後に急旋回して飛び去るコウモリが足に何かを掴んでいるように見えたときがあります。(@6:55〜)
私の気のせい(願望からの幻覚)ですかね?
動画のフレームレートが15fpsと低いので、スロー再生しても動きがカクカクしていてはっきりしません。
珍しく着水シーンを横から撮れたシーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。(@8:55〜)
シーン3:8/6・午後21:05〜22:33(@9:56〜)日の入り時刻は午後18:46
2頭(以上)のコウモリが同時に飛来することもあります。
【考察】
低空で水面スレスレに飛びながらコウモリが何をしているのか、という問題がなかなか解決しません。
まず、池で捕食している可能性はどうでしょうか?
海外にはウオクイコウモリという種類がいるのですけど、淡水のこの池は小さくて浅いので、獲物となる魚は居ません。(居るのはオタマジャクシやサンショウウオぐらいです。)
池の上を飛んでいる昆虫やアメンボなどの水生昆虫を水面で狩っている可能性も考えましたが、スロー再生すると違うようです。
狩りなら毎回違う場所に着水するはずですが、コウモリの着水地点は大体決まっているようです。
この池は三方(画面の背後および左右)が崖に囲まれているため、飛来したコウモリは崖に衝突しないように急旋回しながら飛び回る必要があります。
地形要因から飛行ルートが限られ、着水できる地点も限定されるのでしょう。
次に、水を飲んでいるか、水浴しているのか、どちらでしょう?
フレームレートの高い高画質の暗視動画が撮れる最新機種のトレイルカメラを導入するまで、謎解きはお預けです。
プロの動物写真家なら多灯ストロボと赤外線センサーを池畔に設置して、着水の決定的瞬間を写真で切り取ろうとするでしょう。
動画派の私としては、なんとか動画で記録したいのです。
大井徹『獣たちの森』という本を最近たまたま読んでいたら、コウモリの解剖生理学について興味深い事実を知りました。
汗腺は老廃物の排出とともに体温調整の機能を持つ。人は全身に汗腺を持つが、食虫類、げっ歯類、食肉類の一部では足と肛門付近にのみある。鯨類といくつかのコウモリ、げっ歯類にはない。(p58より引用)コウモリが発汗しないとすると、飛翔時に体温の急上昇を抑えるために、定期的に体毛を濡らす必要があるのかもしれません。
つまり、飛びながら水浴を繰り返し、気化熱を利用して体温を冷やしているのかもしれません。
さっそく文献検索で斜め読みしてみると、コウモリの翼は飛行時の空冷だけで体温が充分に低いらしく、胴体しか冷やす必要がないのだそうです。
・Luo, J., Greif, S., Ye, H. et al. Flight rapidly modulates body temperature in freely behaving bats. Anim Biotelemetry 9, 45 (2021). https://doi.org/10.1186/s40317-021-00268-6・RUMMEL, Andrea D.; SWARTZ, Sharon M.; MARSH, Richard L. Warm bodies, cool wings: regional heterothermy in flying bats. Biology Letters, 2019, 15.9: 20190530.
しかし、「体温調節仮説」にも問題があります。
雨の日や霧の日には体を濡らす必要がないはずなのに、コウモリは晴れの日と変わらず池に飛来するのはなぜ?という疑問が残ります。
毎回水面に波紋が広がることから、私はてっきりコウモリが飛びながら意図的に一瞬だけ着水しているのだと長らく信じていました。
しかし、必ずしもそうとは言い切れないことに最近気づきました。
側溝を流れる水面スレスレに飛ぶミツバチをハイスピード動画で撮影したところ、着水しなくても激しい羽ばたきの勢いで直下の水面が押し下げられ波紋を生じることが分かったのです。
コウモリの飛翔シーンをハイスピード動画で撮ってみたいのはやまやまなのですけど、それには強力な赤外線投光器が必要です。
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