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2024/05/15

古い巣穴を掘り返し古い寝床を外に捨てるニホンアナグマのペア【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年8月下旬

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が転出した後の旧営巣地(セット)をトレイルカメラでしつこく監視を続けていると、ようやく面白い新展開がありました。

シーン1:8/14・午後13:51(@0:00〜) 
たまたま明るい日中に撮れた現場の様子です。 


シーン2:8/23・午前4:51・気温24℃(@0:03〜)日の出時刻は午前4:58。 
日の出直前に2頭のアナグマが巣穴L付近に現れました。 
小柄な個体(幼獣? 成獣♀?)が巣口Lの左をうろついている間に、もう1頭(ヘルパー♂?)が巣口Lに頭を突っ込んで拡張工事を始めました。 
長い不在の間に巣穴が崩落していたようです。 
これまでの観察では、巣穴を掘る重労働はヘルパー♂の役割とされています。 
しかし穴を掘る後ろ姿の股間を見ても、外性器(睾丸や陰茎)がはっきりしません。 
未だ若い♂なのか、それとも非繁殖期は男性器が退化(萎縮)するのかな? 
前足を使って土を後方へ掻き出すところで録画終了。 


シーン3:8/23・午前4:53(@1:04〜) 
さっきまで穴掘り作業をしていたアナグマの同一個体でしょうか? 
左から来ると、巣口Lに詰まっていた枯れ葉・枯れ草などの古い巣材を前足で後方に掻き出しながら後ずさりしました。 
アナグマは雨で湿った巣材を天日干しするらしいのですが、私はまだ実際に観察できていません。 
今回外に掻き出した巣材はかなり古くて、幼獣たちの糞尿で汚れていたはずですから、良い堆肥(腐葉土)になるはずです。 
後半はそのまま巣口拡張の土木工事(穴掘り作業)に移行したので、植物質の古い巣材は土砂の下に埋もれてしまいました。 
もはや巣材(寝床)として再利用するつもりがないのでしょう。 
巣口の後方に土砂や古い巣材を掻き出す結果、アクセストレンチが形成されます。 
最後は入巣Lしたところで1分間の録画終了。


シーン4:8/23・午前4:57(@2:04〜) 
2頭のアナグマが巣口Lに並んでいました。 
明らかに体格差がありますけど、親子なのか性差♀♂(♀<♂)なのか、どちらでしょう?
あまり自信はないのですが、♀♂ペアということにして話を進めます。
体の大きなヘルパー♂は穴掘り作業が一段落すると、身震いして体の土を落としてから、一旦左へ向かいました。 
その間に体の小さな♀が巣穴Lの中に入ったきり、出てこなくなりました。 
ヘルパー♂の仕事っぷりを内検しているようです。
左から戻ってきたヘルパー♂が巣口Lで穴掘り拡張作業を再開しました。 
巣口Lから前足で土を後ろのアクセストレンチにせっせと掻き出しています。 


シーン5:8/23・午前4:58(@2:54〜) 
ヘルパー♂が独りで穴掘り(巣口Lの拡張工事)を続けています。 
遂に2頭とも巣穴Lに入ったきり、外に出てこなくなりました。 


シーン6:8/23・午前5:00(@3:11〜) 
どうやら1頭のアナグマaが出巣Lした瞬間を撮り損ねたようです。 
再び穴掘りを再開しました。 巣口Lのアクセストレンチに座り込むと体の痒い部位を後足でボリボリ掻きました。(@3:24〜) 
そのとき、巣穴Lの中から別個体bが顔を出して、2頭が互いに見つめ合いました。 
bが巣外に出てきて2頭が並ぶと、体格差(a<b)が明らかになりました。 
これまでのストーリーと辻褄を合わせるために、♀aとヘルパー♂bというように解釈することにします。 
♀も少しは穴掘り作業をやることが分かり、新しい発見でした。 
大型の個体(ヘルパー♂?)の方が激しい穴掘り作業の結果、体毛が土で黒く汚れています。 
ヘルパー♂は巣口Lで身震いして土汚れを落とします。 

最後にアナグマのペアは仲良く並んで林床を右へ立ち去りました。 
てっきりリフォームした巣穴Lにこのままペアで住み着くと予想していたのに、意外な結末でした。 
非繁殖期には、あまり特定の巣穴には執着しないのかもしれません。


【考察】
観察歴の浅い私は、アナグマの個体識別や性別判定に苦労しています。 
この営巣地で出産した♀には特徴があり、首筋に♂が噛んだ交尾痕があるのと、赤外線の暗視カメラで見たときに左右の目が不均一でした(右目<左目)。 
今回の小柄な個体が♀だとしても、交尾痕が無く、両目の大きさは同じでした。 
出産・育児から解放された♀の「慢性の疲れ目」が回復したのでしょうか? 
腹面に乳首も見えなかったのは、幼獣が離乳して乳房が退化したのかな? 
辻褄合わせのため苦し紛れで仮定に仮定を重ねるのは無理があります。
オッカムの剃刀の原則からしても、新顔の♀がパートナー(ヘルパー♂)を連れて巣穴Lを物色しにやって来たような気がしてなりません。 
まさか、今季産まれたばかりの幼獣♀が早くもつがいを形成して実家に戻ってきたのでしょうか? 
謎は深まるばかりです。


近所のタヌキは結局、アナグマの空き巣を乗っ取りませんでした。 
そもそもアナグマの家族がこの営巣地から転出した理由は何でしょう?
思いつく限り、仮説を立ててみました。
  1. 梅雨の時期で巣穴に雨水が浸水し、巣材が湿ってカビが生え、幼獣にとって居住環境が悪化したので引っ越した? 
  2. 巣穴が崩落したので引っ越した?
  3. 巣材(寝床)にダニやシラミが大発生し、幼獣に体外寄生、吸血するようになったので、新しい巣穴へ逃去した? 
  4. 私が2台も設置したトレイルカメラに四六時中監視される生活がストレスで、我慢できずに逃去した? 
寄生虫対策の仮説(3)が我ながら気に入っています。
転出してしばらく日数が経ってから古い巣材を外に捨てれば、巣内に蔓延する体外寄生虫の数を抑制することができそうです。
私がバイブルにしているアナグマの本(福田幸広『アナグマはクマではありません』)を読むと、巣穴の転出はよくあることのようです。
出産して幼獣が育つと、母親が幼獣を引き連れて新しい巣穴に引っ越すのだそうです。 
新しい巣穴がどこにあるのか、残念ながら突き止められていません。


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